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『りはめより100倍恐ろしい』(りはめよりひゃくばいおそろしい)は、木堂椎が2006年に発表した日本の小説。『りはめ』と略されることもある〔斎藤環「解説」『りはめより100倍恐ろしい』文庫版、212頁。〕。 ==解説== 第1回野性時代青春文学大賞の受賞作で、単行本化されると「現役の高校生によって、そして全編が携帯電話を用いて執筆された小説」として話題を集めた〔。著者の木堂椎によれば、時間のあるときに携帯電話を用いて一気に書き進め、それをPCに転送して推敲するという形で執筆したという〔「解説」『りはめより100倍恐ろしい』文庫版、214頁。〕。これが饒舌な口語体の作風のもととなったと考えられる〔。 本作のタイトルは“「いじり」(「素人弄り」などの“弄り”)は「いじめ」よりも恐ろしい”という意味である。ここでいういじりとは、場の空気の圧力によって個人に損な役回りを半強制的に押し付けるようなコミュニケーション関与のことである〔荻上チキ 『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』 PHP研究所、2008年、165-167頁。ISBN 978-4569701141。〕。作中の記述によれば、被害者自身に原因が存在し発見されれば教師から救済されうる「いじめ」と違い、「いじり」はこれといって原因もないまま突如標的とされ、一見すればじゃれあいにすぎないために教師からの救済も期待できないぶんいじめより悲惨であるという〔『りはめより100倍恐ろしい』文庫版、39-40頁。〕。もっとも、ここでいう「いじり」は狭義のいじめ(暴力系いじめ)には該当しなくとも広義のいじめ(具体的にはコミュニケーション操作系いじめ)には含まれると考えられる〔「解説」『りはめより100倍恐ろしい』文庫版、216頁。〕〔海老原豊 「空気の戦場――あるいはハイ・コンテクストな表象=現実空間としての教室」『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』 南雲堂、2010年、341頁。ISBN 978-4523264972。〕〔いじめ#いじめの分類も参照。〕。 本作は、学校空間でのシビアなコミュニケーションの駆け引きを描いたスクールカースト小説といわれる一連の作品群に属する〔宇野常寛 『ゼロ年代の想像力』 早川書房、2008年、113-114頁。ISBN 978-4152089410。〕。スクールカーストとは日本の現代の学校における生徒間に発生する地位のことで、それが「キャラの分化」やいじめの発生と密接に関係していることが盛んに論じられている〔スクールカースト#いじめとの関係やスクールカースト#キャラ的コミュニケーションを参照。〕。スクールカーストやキャラという面に注目すると本作は、中学ではカースト低位であった主人公の羽柴典孝が高校進学にあたってキャラを変更してカーストの上昇を試みる物語であり、また主人公が「いじり」という名の下に周囲から道化の役回り(いじられキャラ)を押し付けられスクールカーストの最下位へ固定化されないように奮闘するさまが描かれているといえる〔〔。 同じくスクールカーストものといわれる小説に白岩玄作の『野ブタ。をプロデュース』(以下『野ブタ。』)があり、本作と比較される。評論家の大森望は、本作を『野ブタ。』の「ダークサイド版」として緊張感・恐怖感では『野ブタ。』をしのぐものだと評している〔大森望・豊崎由美『文学賞メッタ斬り!リターンズ』パルコ、2006年、339頁。ISBN 978-4891947415。〕。本作の文庫版の解説を執筆した精神科医の斎藤環によると、『野ブタ。』では主人公がいじめられキャラのクラスメイトをまず(みんなから愛されるような)いじられキャラとしてプロデュースし直すという展開になっているため「いじり」についての捉え方は本作と逆になっているとしている〔斎藤環 『キャラクター精神分析 マンガ・文学・日本人』 筑摩書房、2011年、26-27頁。ISBN 978-4480842954。〕。また斎藤環は、本作をセカイ系のひとつに位置づけ、題名の秀逸さとともに「いじめ」でなく「いじり」を取り扱った初めての小説であり今後も広く読まれることになるだろうと高く評価している〔。 本作の単行本版における冒頭文は、一文の中に「ので」が3回使用されており、著者の木堂椎はこの悪文が意図的なものであると述べている。それによると、賞に応募する際に少しでも目立つからという理由であえて冒頭文を「ので」が2つ存在する文章にし、単行本化する際にはさらに1つ増やして3つにしたという。なお、文庫版では修正され無難な文章になっている〔文庫版「あとがき」より。〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「りはめより100倍恐ろしい」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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