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ラッカー (Lacquer) は、一般的には無色または着色された塗料の一種であり、溶剤を揮発させることによって乾燥すると硬くて耐久性の高い塗面を与え、磨き上げることによって非常に強い光沢と深みが得られる。狭義にはナフサ、キシレン、トルエン、ケトン(アセトン)など揮発性の高い溶媒に樹脂を溶かしたものを指す。名称は、昔その分泌物がラッカーやシェラックの製造に用いられた昆虫ラックカイガラムシ(Lac, 学名 ''Laccifer lacca''、旧名 ''Coccus lacca'')に由来する。ラッカーの一種として日本では漆が広く知られている。 ==ウルシオールラッカー== これまでに知られている歴史上最も古いラッカーの使用例は日本列島におけるもので、時期的には紀元前7,000年頃のことである〔NEW PERSPECTIVES ON JOMON SOCIETY (2007年12月10日時点のアーカイブ)〕。ウルシの木の樹脂から作られ、非常に硬く、丈夫で美しい仕上がりが得られた。水、酸、アルカリ、摩擦には強いが、紫外線には弱かった。主な成分は様々なフェノール類の混合物からなるウルシオールといくらかのタンパク質である。 ウルシオールを主成分とするラッカーは揮発性の低い水を溶剤とし、蒸発のみによって工程を完了する他の大部分のラッカーと異なり、酸化と重合を伴う工程を経て製造される。良好な状態での乾燥・硬化には高温と高い湿度が必要とされる。含まれるフェノール類は酵素ラッカーゼによって酸化・重合され、適切な方法で水分を蒸発させることによって硬く機械強度の高い物質となる。ラッカーの技術はインドとアジアで大きく発展し、高度に装飾された品々が作られた。新鮮な樹脂は皮膚に触れるとひどいアレルギー反応を起こすため、取り扱いに注意が必要とされる。 中国におけるラッカーの利用例として棺、皿、楽器、家具などが知られている。粉末状の辰砂と混合したラッカーは中国の伝統的な朱色の漆器の製造に用いられる。中国製の品は様々な交易路を経て中東にももたらされ、ラッカー製造の技術は中国から朝鮮半島にも伝わった。 ウルシの木は樹脂がとれるようになるまで10年以上かかる。集められた樹液は「水中重合 (aqua-polymerization)」と呼ばれる工程で酸素を吸収させたあと、風呂(ふろ)あるいは室(むろ)と呼ばれる湿気の多い環境におかれ、水分を蒸発させながらさらに酸素を吸収させる。 タイ、ベトナム、ビルマ、台湾でラッカーを採取する木はチチ (Thitsi) と呼ばれ、少し異なる。ウルシオールではなく類似の物質、ラッコール (laccol) またはチチオール (thitsiol) を含む。出来上がりはほとんど同じだが中国や日本のラッカーよりも柔らかい。日本や中国のウルシの木とは違い、ビルマのものはアレルギー反応を起こさせず、よりゆっくりと硬化する。職人は刷毛を使わず素手で塗布を行う。 生の漆に少量の酸化鉄を加えると、赤または黒に着色することができる。この色は鉄の酸化状態によって異なる。中国での発掘調査によって8,000年以上前にも使われていたという証拠が見つかっている。その後、色付けのために他の顔料が用いられるようになった。上塗りのみではなく、すり砕いて焼いた、または焼いていない粘土と混ぜ合わせ、麻の繊維で作られた布を貼り合わせて作った型の上に塗る技法も使われた。木製の芯などを使わずに像などを作ることができ、日本では乾漆と呼ばれた。中国から導入されたのち、日本では金や銀の粉や細粒などを用いる、より発展した装飾法(蒔絵)が作り出された。中国の楽器、古琴に塗る際には、より高い強度を与えて演奏に堪えられるようにするため、漆は鹿の角(または陶器)の粉末と混ぜ合わされた。 天然の漆は毒性を持つため一般的に輸入するのは難しいが、刀を修理する日本の店からならばオンラインで少量入手できる。 ウルシオールは左に示すような構造を持つ化合物である。2価のフェノールであり、置換基 R の異なる誘導体の混合物である。図で R は (CH2)14CH3, (CH2)7CH=CH(CH2)5CH3, (CH2)7CH=CHCH2CH=CH(CH2)2CH3, (CH2)7CH=CHCH2CH=CHCH=CHCH3, (CH2)7CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH2 などを表す。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ラッカー」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Lacquer 」があります。 スポンサード リンク
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