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『アポロンの嘲笑』(アポロンのちょうしょう)は、中山七里の推理小説。『小説すばる』にて2013年5月号から2014年3月号まで連載された。 作品の舞台は東日本大震災直後の福島県である。著者の中山は、震災から約2年が経っていた時期にこの作品の構想を練り始めたが、その時すでに、震災時のリアルな雰囲気は世の中から失われているように感じていた。そのため、編集者からもらった“クローズド・サークル”というキーワードを聞いて、3.11直後の日本を“密閉された空間”だと捉え、そこに目的を持った男の逃走劇を組み入れるという構図で書くことを決めた。また、あまりにも影響の大きい出来事だったため、写真や映像では記録できない“感情”というものを作家として形にしなければならないという使命感もあり、自分自身の主張というよりも日本人それぞれが当時、混乱や怒り、危機感などをどのように感じていたかということを意識して書き上げたという。 物語は事件を追う刑事・仁科忠臣と逃げる被疑者・加瀬邦彦の2つの視点で交互に展開していく。 == あらすじ == 未曾有の大災害・東日本大震災からわずか5日後の2011年3月16日、福島県石川郡平田村の金城和明宅で長男の金城純一が刺されたという一報が入る。近隣住民からの通報を受けて平田駐在所の巡査・友井が駆け付けた時、被害者の純一は脇腹を刺された状態ですでに絶命しており、被疑者・加瀬邦彦が純一に覆いかぶさっている状態であった。震災や津波、および福島第一原子力発電所事故の影響によって大混乱に陥り、通常業務はおろか人員確保すら難しくなっていた福島県警石川警察署であったが、刑事課所属の仁科忠臣と城田が被疑者移送のために金城家に向かう。邦彦は事実確認にも素直に頷き、抵抗する様子もなくパトカーに乗り込むが、仁科は残された純一の家族の反応を訝しく思う。いくら家族同然の付き合いをしていたとはいえ、普通であれば息子を殺した憎き邦彦に対して激しく罵ってもおかしくないこの状況で、父親の金城和明は「邦彦……すまない。」と謝り、妹の金城裕未は邦彦にすがり、「行かないで!」と取り乱していたのだ。そしてどういう意味かと聞く仁科の質問にも答えないまま、邦彦は移送中に起きた余震の隙をついて逃亡する。 福島県警に帳場が立ち、第1回捜査会議で仁科は邦彦を取り逃がしたことをねちねちと責められる。しかし仁科はそれよりも、会議になぜか警察庁警備局の公安の人間が参加していることが気にかかっていた。捜査報告により、被害者の純一には過去に傷害致死で服役した前科があったことや、事件当日は酩酊状態であったこと、最初に刃物を持ち出したのは純一であったことなどが明らかになったため仁科は再び金城家を訪れるが、そこにはまたしても公安が先に訪れており、盗聴器すら仕掛けていた。公安がマークしているのは邦彦ではなく純一や金城一家なのか? 真意を測りかねた仁科は公安の溝口に直球で目的を聞くが、もちろん答えは返って来ず、仁科の上司である小室が調べても福島県警の公安には情報が下りていないなど、違和感だらけの印象が残る。 さらなる捜査により、邦彦が阪神・淡路大震災で両親を亡くしていることや、その後は大阪にある叔父・加瀬亮一の加瀬鉄工所に引き取られて生活していたことがわかったため、仁科は大阪へ向かう。亮一の邦彦に対する物言いはまるで他人事だったが、隣人の証言により実は邦彦は亮一に暴力を受けながらも必死に働いていたことや、亮一の鉄工所を出た後のどの職場でも真面目さや手先の器用さが評価されていたことなどが判明し、仁科の邦彦に対する心証は良い方向へと変わっていく。一方、純一の周辺からは前科についてはもちろん「目付きが悪い」「不気味」など辛辣な答えばかりで、借金取りのような不審な男が自宅周辺をうろついていたという目撃証言すら出てきた。 当初とは逆転してきた印象、そして県警のヘリコプターや自衛隊のカメラ、民家からの通報によって足跡を辿るとどうやら福島第一原子力発電所がある大熊町に向かっていると思われる現在の邦彦。目的は一体何で、この事件の真相はどこにあるのか。答えが掴めず焦燥感にかられる仁科に対し、一歩先を行く公安の溝口は「たまには経済紙で3.11以降の債券市場を眺めるんだな」という謎の言葉を残す。 一方、福島第一原発では3号機建屋で水素爆発が起こる中、東京消防庁ハイパーレスキュー隊や陸上自衛隊が温度が上昇してきている使用済み燃料プールへの放水を始めていた。しかし4号機建屋の中に探査型ロボットを入れて確認したところ、燃料プールの真下の支柱近くにプラスチック爆弾が仕掛けられているのが発見される。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「アポロンの嘲笑」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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