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アポロ月着陸船(アポロつきちゃくりくせん、Apollo Lunar Module、以降LMと記述、Lunar Excursion Module“LEM”とも)はアメリカ合衆国のアポロ計画において、二名の宇宙飛行士を月面に着陸させ、かつ帰還させるために開発された宇宙船である。グラマン社開発。下降段と上昇段によって構成され、着陸する際は下降段のロケット噴射をブレーキに用い月面に降り、帰還する際は下降段を発射台として、上昇段のロケットを噴射して軌道上の司令船とドッキングする。総重量は14,696kgで、そのうち下降段の重量は10,149kgを占める。開発が遅れたためにアポロ計画全体の進行にも支障を来したが、計画に影響を与えるような大きな故障を起こしたことは一度もない、信頼性の高い宇宙船であった。 == 背景 == LMは、NASAが月面着陸の方法を直接降下方式、地球軌道ランデブー方式ではなく、月軌道ランデブー方式を採択したことによって開発が必要になった。直接降下方式では宇宙船のすべての部分が月面に着陸するが、ランデブー方式では着陸部分だけが月面に降りるのである。地球軌道ランデブー方式の場合、複数のロケットを打ち上げなければならず、コストが莫大になるという点では、直接降下方式と差して変りはない。しかし月軌道ランデブー方式の場合は先のふたつの方式よりも対コスト、効率性に優れている事から、この方式が採用された。 LM開発の契約は、グラマン社とその傘下にある多数の下請け会社が獲得した。グラマン社はかつて1950年代にランデブー方式の研究をしていたことがあり、1962年にも同じ研究をしていたのである。1962年7月に11の企業に対してLM開発についての打診があり、9月に9社が申し出た。最終的に、同じ月にグラマン社が契約を獲得した。開発費は3億5000万ドル以上になると予想された。 開発は困難を極めた。まず問題となったのは重量だった。当初ロケットの打ち上げ能力から要求された重量は9トン以内だったが、開発初期でさえ予定重量は10トンを超えていたため、徹底した軽量化が図られた。当初曲面形だった本体は平面構成となり、0.025ミリ厚のアルミ板のみで外の真空と隔てられている部分も存在した。脚も5本から4本に減らされ、一回きりの使用となる緩衝機構はアルミ製ハニカムが潰れる事で着陸時の衝撃を吸収する方式が採用された。こうした努力にも関わらず最終的に重量は15トン近くに達し、見かねたフォン・ブラウンがサターンVの推力を増やす事でようやく解決を見た。次に問題となったのは着陸用エンジンで、従来のロケットエンジンに比べ繊細な出力制御が要求されたが、燃料と酸化剤の量を一定に保ちつつ流量制御する特殊な供給機構の開発により解決された。 初飛行は1968年1月22日で、サターン1Bロケットによって打ち上げられ、無人でテスト飛行が行われた。二度目の飛行は1969年3月3日のアポロ9号のフライトで、サターンV 型ロケットによって打ち上げられた。司令船・機械船・月着陸船をフル装備してサターンVロケットが打ち上げられたのは、このフライトが初めてであった(当初はアポロ8号で行われる予定だったが、開発の遅れなどにより月周回飛行に変更された)。マクディビット、スコット、スワイカートの三人の宇宙飛行士により、地球周回軌道上で飛行士の乗り移りやLMの分離・再ドッキングなど、様々なテストが行われた。続く1969年5月18日のアポロ10号の飛行はいわば月面着陸の予行演習で、LMは月の表面10kmまで接近した。 1969年7月20日、ニール・アームストロング、バズ・オルドリン両飛行士の乗り込んだアポロ11号によって、人類は初めて月面に到達した。 1970年4月、LMに劇的な役割を果たす機会が訪れた。アポロ13号の機械船の酸素タンクが、月に向かう途中で爆発したのである。飛行士はLMを救命ボートとして用い、使用不能になった機械船のエンジンの代わりにLMの降下用エンジンを使って地球に帰還するための加速を行った。LMは、本来は二人の飛行士を45時間生存させるよう設計されていたが、あらゆる部分を切り詰めて使用した結果、三人の飛行士を90時間生存させることに成功した。 最後の三回のミッション(アポロ15号、アポロ16号、アポロ17号)では、下降用エンジンの直径を10インチ(254mm)拡大し、燃料タンクを増量するなど大幅な改造が行われ、月面に最大三日間滞在できるようになった。またこの三回のミッションでは月面車(Lunar rover)が使用され、飛行士はLMから最大で7.6km離れた地点まで行動できた。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「アポロ月着陸船」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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