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アングルドデッキ ( リダイレクト:アングルド・デッキ ) : ウィキペディア日本語版
アングルド・デッキ
アングルド・デッキ (''Angled deck'') は、航空母艦の最上段甲板の船首方向に対して斜めに配置された艦上機の着艦用飛行甲板で、アングルド・フライト・デッキ (''Angled flight deck'') とも表記する。艦の進行方向から斜めにずれた新たな着艦専用甲板を設けることで、艦の進行方向に沿う旧来の飛行甲板を発艦専用にでき、着艦に際して飛行甲板の中央部から前部で行われる発艦作業を妨害しなくなり、着艦のやり直しも容易になる利点が生まれ、安全性・運用効率が飛躍的に向上した。
== 開発の経緯 ==

従来の直線式飛行甲板では、甲板上に駐留機が多いと、それだけ発着艦時の滑走距離が十分に確保できず、運用上の大きな制約となった。それだけでなく、着艦機が甲板上の駐留機と衝突する危険が多く、着艦作業時には可能な限り既に着艦した機体を甲板から格納庫へと移動する必要があり、運用上での制限が大きかった。また、艦載機が着艦時に比較的低速であったレシプロエンジン機から高速大型のジェット機に移り変わるにあたってアレスティング・フックを引っかけ損なう確率が増大するなど更に事故の可能性が高くなり、着艦を安全に行う方法が求められていた。第二次世界大戦前のフランスが計画し、世界初のアングルドデッキの採用が予定されていたジョッフル級航空母艦の場合はそれ等の理由とは大きく異なり、飛行甲板後端部の水上機運用のための大型クレーンを回避する為にアングルドデッキが考案された
こうした状況の中で1952年2月イギリス海軍は空母『トライアンフ』の直線式飛行甲板に斜め10度のラインを引いて、駐留機の待機スペースを避けて斜めに着艦する実験を行い、成功した。
これを受けてアメリカ海軍ミッドウェイ級航空母艦の1番艦『ミッドウェイ』で同様の試験を行い、タイコンデロガ級航空母艦の8番艦『アンティータム』を改装し、1952年9月に米海軍初のアングルド・デッキを装備した空母が生まれた。
その後遅れてイギリス海軍も『アーク・ロイヤル』を改装し、以後の正規空母では標準的な装備となった。アメリカ海軍ではフォレスタル級航空母艦以降の空母で新造時より装備されているほか、エセックス級航空母艦1950年代のSCB-125改修などでアングルド・デッキを装備するようになった。

角度については、試行錯誤されている。イギリス空母イーグルでは5.5度のアングルド・デッキ付与の改装が行なわれた後、1959年からの改装では8.5度に再改修された。ニミッツ級航空母艦などでは9度となっている。
なお、発艦スペースと着艦スペースが分離される事から、発着艦を同時に行う事がアングルド・デッキの利点と説明される事があるが、これは正確ではない。実際の空母の運用では、発艦と着艦を同時に行うのは、一般的では無い。発艦作業時には次に発艦する機体が、着艦作業時には既に着艦を終えた機体が、甲板上で待機するスペースが必要だからである。発着艦を同時に行うためには次に発艦する機体は格納庫で待機し、また着艦を終えた機体はその都度格納庫に収納する事となり、かえって効率が悪くなる(そもそも、その都度、着艦した機体を格納せずとも済むのがアングルド・デッキ採用の利点であり、いちいち格納を行うのは本末転倒になる)。
よって現実のアングルド・デッキの運用では、甲板上の駐留機が着艦の妨害にならないようにする事、着艦失敗時の再アプローチを容易にする事が最大の目的となる。ただ、少数の機体だけ、あるいは小型機に限れば、発着艦作業を同時に行う事は不可能ではないが、アングルド・デッキ採用以前も行われていた事である。もちろん、着艦作業時に次の発艦作業の準備を行う事は、ある程度は可能であり、これはアングルド・デッキの運用上の利点として間違ってはいない。
また斜めに配置された着艦用の滑走路はより長大であるため、米海軍の現用空母はこれに大型カタパルトを設置し、大型機の発艦の際に用いる事が可能になっており、現実には発艦と着艦のスペースの完全分離はなされていない。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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