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イコノロジー : ミニ英和和英辞書
イコノロジー[ちょうおん]
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〔語彙分解〕的な部分一致の検索結果は以下の通りです。

: [ちょうおん]
 (n) long vowel mark (usually only used in katakana)

イコノロジー : ウィキペディア日本語版
イコノロジー[ちょうおん]
イコノロジー(図像解釈学)は図像を記述・解釈する技術だが、とくに20世紀の美術史学において、図像を生み出した社会や文化全体と関連づけて解釈するために発展した研究手法を指す。
== 概要 ==
ギリシア語の eikon (εικών 肖像) とlogos (λόγος 言葉・理法) を語源とする言葉で、古代には著名人の肖像画を同定・叙述する技術を意味していた。西欧中世では、寓意・象徴といった抽象的な観念を図像によって表現するための技術として体系化された(C.リーパ『イコノロギア』1593年)。
現在の図像解釈学の端緒は、美術史家ヴァールブルク1912年に発表した15世紀イタリア美術についての研究報告とされるが、本格的に体系化されたのは、パノフスキーの研究においてである。彼はカッシーラーの象徴形式の哲学に大きな影響を受け、より精密で普遍的に応用しうるイコノロジーを提案した〔Silvia Ferretti, ''Cassirer, Panofsky and Warburg: Symbol, Art and History,'' Yale UP, 1989.〕。
パノフスキーのイコノロジーの基礎となった論文は、ドイツ語で書かれた「造形芸術作品の記述と内容解釈の問題」(1932年)である。パノフスキーがナチズムから逃れてアメリカに移住してのち修正が加えられ、『イコノロジー研究』(1939年)に「序論」として英語で収められた。
パノフスキーのイコノロジーは、美術作品の外形ではなく、作品の主題・意味を取り扱う。パノフスキーによると、一つの作品は、ある意味を担う一種の言語とみなされるが、その意味には三つの層 (Three Strata)がある〔エルヴィン・パノフスキー「序論」(『イコノロジー研究 ルネサンス美術における人文主義の諸テーマ』浅野徹ほか訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2002, pp. 27-81)〕。
I. 第一段階的・自然的主題 Primary or natural subject matter
: 母親らしき女性と子供を描いた絵であるとか、穏やかな表現であるといった、画面に描かれた対象や色彩・形状など。
: 例)右のデューラーメランコリア I》では、「翼を持った人物がしゃがみこんでいる」「道具類が周囲に散らばっている」といった、そこに描かれている事柄や状況(事実的主題)。また「この人物は物思いにふけっている」といった、特段の知識がなくとも見て取れる感情や心理的意味(表出的主題)〔この《メランコリアI》の解釈例は、以下を参照:アーウィン・パノフスキー『アルブレヒト・デューラー』中森義宗・清水忠訳, 日貿出版社, 1984, pp. 157-172.;若桑みどり『イメージを読む 美術史入門』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2005, pp. 155-197;井面信行「イコノロジー」(神林恒道ほか編『芸術学ハンドブック』勁草書房、1989, pp. 33-38)〕。
II. 第二段階的・伝習的主題 Secondary or conventional subject matter
: 聖母子を描いた西洋絵画においては青色のガウンが貞淑さを表すとか、「剣」が正義や勇気を表現するといった、制作当時に常識とされていた慣習や取り決めなど。
: 例)《メランコリアI》では、膝の上に肘をついたこの人物のポーズが「四体液理論」でいう「憂鬱質」を示すこと、この人物が手に持っているコンパスや床に置かれている玉などが古くから「幾何学」の象徴であることなど。
: これは作品そのものから読み取れず、この知識を得るためには過去にさかのぼる広範な史料調査を行う必要がある。パノフスキーはこの段階をイコノグラフィ(図像学)と呼んで、イコノロジーとは区別する。
III. 内的意味・内容 Intrinsic meaning or content
: 作品のさらに奥底にある歴史意識や精神文化。たとえば聖母子像に意識的・無意識的に宗教観・世界観の変遷が表現されているといった、作品が差し出している総合的な意味。パノフスキーは、これを探るための手法をイコノロジーと呼んだ。
: 例)《メランコリアI》では、第一段階の観察、第二段階の史料踏査を踏まえたうえで、なぜ「憂鬱質」の人物が「幾何学」と結びつけられているのか、床に雑多に並べられた「幾何学」とは無縁に見える道具類が何を意味すのるかといった、作品の最終的な意味に対する総合解釈をもとめる作業が、この三段階目にあたる。
: パノフスキー自身は、この人物の空を凝視する視線・力なく開かれた手のひらといった描写と、周囲にちらばる創造的な道具類との取り合わせが、高度な技術と知性を持ちながらも自らの限界に悩む人間の絶望感、とりわけルネサンスの美術家の挫折感の表現だとする解釈を提示している。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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