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『ウィトルウィウス的人体図』(ウィトルウィウスてきじんたいず、、)は、古代ローマ時代の建築家ウィトルウィウスの『建築論』の記述をもとに、レオナルド・ダ・ヴィンチが1485~1490年頃〔フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニの影響で描かれたとする説がある。1490年、レオナルドはミラノを訪れたフランチェスコに会っている。長尾重武「建築家レオナルド・ダ・ヴィンチ」P82、P189〕に描いたドローイングである〔The Secret Language of the Renaissance - Richard Stemp〕。紙にペンとインクで描かれており、両手脚が異なる位置で男性の裸体が重ねられ、外周に描かれた真円と正方形とに男性の手脚が内接しているという構図となっている。このドローイングは、「プロポーションの法則 (''Canon of Proportions'')」あるいは「人体の調和 (''Proportions of Man'')」と呼ばれることがある。ヴェネツィアのアカデミア美術館所蔵だが常設展示はされておらず、同美術館所蔵の他の紙に描かれた作品同様に時折展示されるのみである〔The Vitruvian man 〕〔Da Vinci's Code 〕。 == 歴史 == ウィトルウィウスの著作『建築論』は、アルベルティをはじめルネサンス期の建築家に大きな影響を与えた。『建築論』第3巻には、神殿建築は人体と同様に調和したものであるべきという記述があり、レオナルドと交流のあったフランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニの建築書(手稿)の中にもウィトルウィウス的人体図が描かれている〔フィレンツェの国立図書館にあるフランチェスコの手稿本は、レオナルドが所蔵していた。長尾前掲書P83、P190〕。 レオナルド以外にもウィトルウィウスの記述をもとにした作品を残した画家はいるが、今日、レオナルドの作品が最もよく知られている。 ルネサンス期のウィトルウィウス的人体図としては以下のものが知られている。 *チェーザレ・チェザリアーノの「建築論」- 建築理論家、1521年にウィトルウィウスの「建築論」を出版 *アルブレヒト・デューラー の「人体均衡論四書 (''Vier Bücher von menschlicher Proportion'')」(1528年)- 画家、版画家 *ピエトロ・ディ・ジャコモ・カッタネオ (:en:Pietro di Giacomo Cataneo) (1554年)- 建築家 レオナルドによるドローイングはルネサンス期の芸術と科学との融和を、またレオナルドが人体比率に強い関心を持っていたことを端的に示すものである。さらにこの作品は人と自然との融合というレオナルドの試みの基礎となる象徴的な作品といえる。オンライン版『ブリタニカ百科事典』によると「ダ・ヴィンチは自身の解剖学の知識をもとに人体図を構想し、『ウィトルウィウス的人体図』を古代ギリシアの世界観における雛形のコスモグラフィアとして描いた」としている。レオナルドは人体の機能は宇宙の動きと関連していると信じていた。また、このドローイングに描かれている正方形は物質的な存在を象徴し、真円は精神的な存在を象徴しているという見解もある。レオナルドはこれら二つの図形と人体との融合を表現しようとしたのである〔About.com — Vitruvian Man 〕。このドローイングが描かれている手稿には鏡文字で「ウィトルウィウスの著作に従って描いた男性人体図の習作である。ウィトルウィウスが提唱した理論を表現した」と書かれている。 *掌は指4本の幅と等しい *足の長さは掌の幅の4倍と等しい *肘から指先の長さは掌の幅の6倍と等しい *2歩は肘から指先の長さの4倍と等しい *身長は肘から指先の長さの4倍と等しい(掌の幅の24倍) *腕を横に広げるた長さは身長と等しい *髪の生え際から顎の先までの長さは身長の1/10と等しい *頭頂から顎の先までの長さは身長の1/8と等しい *首の付け根から髪の生え際までの長さは身長の1/6と等しい *肩幅は身長の1/4と等しい *胸の中心から頭頂までの長さは身長の1/4と等しい *肘から指先までの長さは身長の1/4と等しい *肘から脇までの長さは身長の1/8と等しい *手の長さは身長の1/8と等しい *顎から鼻までの長さは頭部の1/3と等しい *髪の生え際から眉までの長さは頭部の1/3と等しい *耳の長さは顔の1/3と等しい *足の長さは身長の1/6と等しい レオナルドはウィトルウィウスの著作『建築論』の第3巻1章2節から3節の内容を視覚化している。 古典主義の対概念であるロマン主義とともに始まった多角的な考察は、人体の比率に普遍的なものなどは存在しないことを明確にしている。人体測定学 (:en:Anthropometry) は、人体がそれぞれ異なったものであることの説明を目的として発展した学術分野である。ウィトルウィウスの人体に対する考察は、あくまでも「平均的」なものであるとすれば、理解することは可能であろう。ウィトルウィウスはへそを中心とすることによって人体の比率に正確な数学的定義付けを試みたが、この定義には問題がある。人体の中心(重心)は四肢の位置によって変化し、起立した状態では通常へそよりも10センチほど下にあり、腰骨のあたりとなる。 レオナルドのドローイングは、古代に書かれたウィトルウィウスの著作を、彼独自の人体に対する観察で昇華したものであることに留意する必要がある。描かれている真円ではへそを中心としているが、正方形はへそを中心としておらず、解剖学的に見て正しい。この相違はレオナルドが芸術にもたらした数多い革新的な要素の一つであり、それまでの絵画とこの作品との違いを決定的にしている。描かれている指先は、ウィトルウィウスの著作のそれよりも高く頭頂部と同じ位置にあり、へそを通る腕が形作るラインはより低い角度となっている。 このドローイングは(後に)18世紀のイタリア人画家・美術著述者のジョゼッペ・ボッシ (:en:Giuseppe Bossi) の所有となった。ボッシは1810年に『最後の晩餐』などを主題とする論文''The Last Supper, Del Cenacolo di Leonardo Da Vinci libri quattro''を執筆した。1811年、この論文から『ウィトルウィウス的人体図』に関する部分を抜粋し、友人のイタリア人彫刻家アントニオ・カノーヴァへの献辞を添えた''Delle opinioni di Leonardo da Vinci intorno alla simmetria de'Corpi Umani''を出版した〔Bibliographical notice, no. 319. 〕。ボッシが死去した1815年、アカデミア美術館が、ボッシの描いたイラストとともに『ウィトルウィウス的人体図』の手稿を入手した。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ウィトルウィウス的人体図」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Vitruvian Man 」があります。 スポンサード リンク
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