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『オリンピックの身代金』(オリンピックのみのしろきん)は、奥田英朗による日本の小説。『野性時代』(角川書店)にて2006年7月号から2008年10月号まで連載された。2005年に刊行された『ララピポ』以来、3年ぶりとなる長編作品。第43回吉川英治文学賞受賞作。2013年にテレビ朝日開局55周年記念番組「55時間テレビ」の一環としてとしてテレビドラマ化された。 主人公の東京大学院生・島崎国男は、深刻な地域格差や貧富の差に疑問と憤りを抱き、オリンピック妨害という大それた犯行を計画するが、島崎の中に強い信念があるわけではなく、成り行きと運とヒロポンによりテロリストへとなっていく様子は、何とも言えない空疎な恐ろしさを感じさせ、他のサスペンスにはない奇妙な味わいを持っている〔宇田川拓也「新刊めったくたガイド」『本の雑誌』2009年2月号 p.41〕。 == あらすじ == 昭和39年(1964年)8月22日、東京オリンピックの警備本部幕僚長・須賀修二郎の自宅敷地内から火の手が上がる。それから1週間後の8月29日、中野の警察学校で爆発音と共に火の手が上がる。いずれも新聞報道はなく、現場に駆けつけた警察官だけでなく警察内部全体に厳しい箝口令が敷かれる。第二子の出産を控え、松戸市の常盤平団地に引っ越した捜査一課の刑事・落合昌夫が属する五係の面々に召集がかかり、一切を保秘とする旨をきつく申し渡された上で、前年に相次いで発生した連続爆破事件の犯人が差出人の名に使用した「草加次郎」から“オリンピックのカイサイをボウガイする”“もう一度ハナビをあげます。東京オリンピックはいらない”と爆破の予告状が届いていたことが明かされる。 時は遡り昭和39年7月中旬、東京大学大学院生の島崎国男の元に、出稼ぎで東京オリンピックの工事に携わっていた異父兄・初男の訃報がもたらされる。故郷の秋田から母や義姉らが上京する余裕はなく、国男が荼毘に立ち会い、遺骨を故郷へ持ち帰ることになる。15歳年上の兄は一家の稼ぎ手として、国男が幼い頃から出稼ぎで1年の半分は家を空け、また国男自身が母親の浮気でできた“種ちがい”の子であるという感情の隔たりもあり、遺体と対面しても家族という実感は希薄だった。 久しぶりに帰った故郷は昔と変わらず貧しく、東京の生活に慣れていた国男はその格差に衝撃を受ける。葬儀を終え東京へ戻った国男は、兄が生前働いていた飯場でひと夏働くことを決意する。大学院でマルクス経済学を学ぶ国男は、日本で近くプロレタリア革命が起こると確信しており、その時にはプロレタリアートの側でいたいと思っていることが大きな理由だった。慣れない土方作業に励む国男だったが、別の飯場を仕切る半分ヤクザ者の男に目を付けられ、花札のイカサマ賭博で負け借金を負ってしまう。工期の遅れを責められ、連日朝の8時から夜の10時まで働き、時には午前2時まで通しで16時間も働きづめで時を過ごすうちに、現場には暗黙のヒエラルキーが存在すること、出稼ぎ人夫たちが疲労感を忘れ仕事を続けるためにヒロポンに手を出していることを知り、プロレタリアートの生活の実態をより正確に実体験しようと自身もヒロポンに手を出してしまう。ある日、1人の出稼ぎ人夫が粗悪なヒロポンの過剰摂取で亡くなり、兄・初男の直接の死因もヒロポンの過剰摂取によるものだったことが分かる。オリンピック開催に沸く東京と搾取され貧困にあえぐ地方との格差を身を持って実感した国男は、今の日本にオリンピックを開催する資格はない、東京だけが富と繁栄を享受するのは断じて許されない、戦う術を知らない彼らの代わりに誰かが阻止しなければならないという思いを一層強くしていく。工事で知り合った発破業者の火薬庫からダイナマイトを盗むことに成功した国男は、爆弾のタイマーの作り方を調べ、爆破を実行していく。報道されないという確信を抱いてからはより冷静さを保ち、ヒロポンの影響もありますます気を大きくしていく。 秋田へ帰郷した際に出会った同郷の村田留吉というスリと再会した国男は、自身の考えと既に2度爆破事件を起こしたことについて話し、オリンピックを人質に一緒に国から金を取らないかと持ちかける。村田はオリンピック妨害については拒んだが、金を取ることには賛同した。行動を共にするうち、村田は国男を実の息子のように感じ始めていく。 一方、警察は「草加次郎」からの爆破予告状に戦々恐々としながらも、捜査一課の刑事たちが一歩一歩確実に島崎国男へと迫っていくが、島崎を国体を揺るがす思想犯だと考える公安部と捜査方針で対立する。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「オリンピックの身代金 (奥田英朗)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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