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カスピ ( リダイレクト:カスピ海 ) : ウィキペディア日本語版
カスピ海[かすぴかい]

カスピ海(カスピかい、、)は、中央アジア東ヨーロッパの境界にある塩湖。世界最大のである。カスピの名は古代に南西岸にいたカス族あるいはカスピ族に由来する。カスピ海に近い現在のイラン・ガズヴィーン州ガズヴィーンは同じ語源であると言われる。現代のペルシア語では一般に「ハザール海」と呼ばれるが、これは7世紀から10世紀にカスピ海からコーカサス黒海にかけて栄えたハザール王国に由来する(現代ペルシア語では、カスピ海南岸のイランの地名から「マーザンダラーン海」とも呼ばれる)。また、トルコ語でも同様の名でと呼ばれる〔دايرة المعارف فارسى، جلد اول، ص٨٩٣-٨٩٥〕〔『岩波 イスラーム辞典』、pp.263-264.〕。中国語では現在に至るまで裏海(りかい)と呼ばれる。
== 概要 ==
この湖に接している国は、ロシア連邦ダゲスタン共和国カルムィク共和国チェチェン共和国アストラハン州)、アゼルバイジャン共和国イランマーザンダラーン州など)、トルクメニスタンカザフスタンである。
主な流入河川にはロシア平原を縦断し北西岸から流れ込むヴォルガ川、その名の通りウラル山脈に端を発し北岸へと流れ込むウラル川、西岸のアゼルバイジャンより流れ込むクラ川、西岸のダゲスタン共和国から流れ込むテレク川などがあり、流入河川は130本にも上るが、流れ出す河川は存在しない。これらの流入河川から流れ込む水量は年間300km²に及び、そのうち240km²はヴォルガ川から流入する水である。この流入分のほとんどはカスピ海上での大気中への蒸発によって失われる。カスピ海への降雨の5倍の水量が、蒸発によって空気中へと放出される〔「ロシア ソ連解体後の地誌」p40 A・V・ダリンスキー編 小俣利男訳 大明堂 1997年5月11日発行〕。しかし、流出河川が存在しないこともあって、流入河川水域の降雨量の変動や集水域における灌漑面積の増大などによる流入水量の変動によって海面は上下しやすく、過去何度も水面は上下を繰り返している(後述)。
アゾフ海とはヴォルガ川を介し、クマ=マヌィチ運河ヴォルガ・ドン運河によってつながっている。また、ヴォルガ川と流域の運河群によって、白海バルト海とも水運はつながっている。
面積374,000 km²ある。なお日本の国土面積は377,835km²なので、カスピ海のほうがわずかに狭い。水の量は78200km³に上り〔Lake Profile: Caspian Sea . ''LakeNet.''〕、世界のすべての湖水の40%から44%を占める〔 〕。塩分濃度は北部と南部では異なり、北部ではヴォルガ川などの流入で塩分が薄く、南部ではイランからの流入河川が少ないため塩分が濃いとされる。湖全体の平均塩分濃度は1.2%であり、海水のほぼである。
カスピ海は北カスピ海と中カスピ海、南カスピ海とに分かれ、性質が大きく異なる。北カスピ海は大陸棚が発達しており〔Kostianoy, Andrey and Aleksey N. Kosarev. ''The Caspian Sea Environment (Hardcover).'' Springer. Retrieved 28-01-2008.〕、非常に浅い。平均水深は5mから6mであり、最深部ですら10mは超えない〔「ロシア ソ連解体後の地誌」p39 A・V・ダリンスキー編 小俣利男訳 大明堂 1997年5月11日発行〕。水量はカスピ海全体の水量の1%にしかならない。浅い上に多くの河川の流入によって塩分濃度が低く、さらに気候も最も寒いため、北カスピ海は冬季には70㎝ほどの厚さまで結氷する。中カスピ海に入ると水深は急速に深くなり、平均水深は190m、最深部は790mとなる。中カスピ海は全水量のうち33%を占める。南カスピ海は最も深く、−980mに達する地点もある。南カスピ海の水量は、全水量の66%を占める。
カスピ海の北西部には、最大の流入河川であるヴォルガ川が流れ込んでおり、ヴォルガ川から流れ込む膨大な土砂は周辺の浅い水域を埋め立て、広大な湿地帯であるヴォルガ川三角州を形成している。デルタ内には無数の支流が流れており、人の手が入りづらいこの地域は1919年にアストラハン自然保護区域に指定され、野鳥の楽園となっている〔「ロシア ソ連解体後の地誌」p41-42 A・V・ダリンスキー編 小俣利男訳 大明堂 1997年5月11日発行〕。湖の北から東にかけては中央アジア大草原ステップ)が広がる。とくに北部には、海面下に位置する広大なカスピ海沿岸低地が広がっている。カスピ海沿岸低地は乾燥が激しく、とくに北部のヴォルガ川とウラル川に挟まれた地域は、かなりの部分がルィン砂漠となっている。一方、西部にはコーカサス山脈が延び、南岸にはアルボルズ山脈が走る。東岸ではが大きくカスピ海に張り出しており、その南には非常に細い海峡でカスピ海と繋がれたカスピ最大の湾、カラ・ボガス・ゴル湾がある。この湾は平均水深10mと非常に浅く、また乾燥地域にあるために蒸発が激しく、カスピ海の水位を押し下げる役目を果たしてきた。1980年にカスピ海の水位低下を防ぐために海峡にダムが建設された(後述)際は湾は干上がり、周辺に塩害をまき散らした。また東岸はほぼ全域が乾燥地帯であり、カラクム砂漠などの砂漠が広がる。北東岸は冷たい大陸性の気候である一方、南岸や南西岸は山地の影響を受けるものの基本的に暖かな気候である。特にイラン領である南岸は、アルボルズ山脈でカスピ海からの風が降雨をもたらすため、年間平均降水量が1000㎜を越える湿潤な気候であり、「緑のリボンの谷」とも呼ばれる。この地域では、小麦を中心とするイランのほかの地域とはちがって、、それにを中心とする農業が盛んに行われている〔「週刊朝日百科91 アフガニスタン・イラン」p10-10 昭和60年7月14日発行 朝日新聞社〕。西岸にはアブシェロン半島が張り出しており、その南にはクラ川の流れるムガン低地がある。
カスピ海には多くの島々がある。島はどれも沿岸近くに位置し、湖の中心部近くにはまったく存在しない。最も大きな島は()で、他にアラーウッディーン・ムハンマドで知られる()などがある。
カスピ海湖上には多種多様な湖風が吹くが、中でも南風であるマリャーナは北部カスピ海に強く吹き、カスピ海沿岸低地に洪水を引き起こす〔「ロシア ソ連解体後の地誌」p40 A・V・ダリンスキー編 小俣利男訳 大明堂 1997年5月11日発行〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Caspian Sea 」があります。




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