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カロリック説(カロリックせつ、英:caloric theory)とは、物体の温度変化をカロリック(熱素、ねつそ)という物質の移動により説明する学説。日本では熱素説とも呼ばれる。 物体の温度が変わるのは熱の出入りによるのであろうとする考えは古くからあったが、熱の正体はわからなかった。18世紀初頭になって、カロリック(熱素)という目に見えず重さのない熱の流体があり、これが流れ込んだ物体は温度が上がり、流れ出して減れば冷える、とするカロリック説が唱えられた。カロリックはあらゆる物質の隙間にしみわたり、温度の高い方から低い方に流れ、摩擦や打撃などの力が加わることによって押し出されるものとされた。この考えは多くの科学者によって支持され、19世紀初めまで信じられていた。 ==歴史== ===前史=== 古代において、熱は光や火と同一視されていた。そして、その火の正体については、その当時から科学者や哲学者によって言及されてきた。エンペドクレスやアリストテレスは「火」「空気」「水」「土」を四大元素とし、デモクリトスは火の原子を考えた〔高林(1999) p.26〕。このように、古代では火は物質であるとする捉え方が多かった〔高林(1999) p.27〕。 17世紀に入ると、熱の本質についての議論が盛んになっていった〔。当時の熱理論は、大きく分けて、熱は何らかの物質であるという熱物質説と、現代と同じように、熱の原因を運動によるものと捉える熱運動説に分けられる。フランシス・ベーコンは1620年の著書で熱運動説を唱えたため、この説の先駆け的な人物とされる。科学者としては、ロバート・ボイルとその弟子ロバート・フックが熱運動説を唱えた。また、ガリレオ・ガリレイは「火の粒子」を仮定し、この粒子が運動することによって熱が発生すると考えた〔山本(2008) 1巻pp.45-49〕。ピエール・ガッサンディやクリスティアーン・ホイヘンスも、熱は「熱の粒子」がはげしく運動することによって発生すると考えた〔高林(1999) p.28〕。 熱運動説は、後にアイザック・ニュートンの万有引力、およびそれとは逆のはたらきをもつ「斥力」の考えを取り込みながら進展してゆくのだが、やがて徐々に下火になっていった。熱に関する現象のすべてを運動として扱うと、関数があまりに複雑になってしまい、その式を実際に検証する方法は当時では存在しなかったのである〔山本(2008) 1巻p.156〕。 これに対して、熱物質説は有力な説になっていった。ゲオルク・エルンスト・シュタールは1697年、燃焼をフロギストン(燃素)という物質で説明するフロギストン説をとなえた。この説はシュタールの死後、支持者を増やしていった〔大野(1992) p.660〕。燃焼の結果として、熱も生じる。そのため、フロギストン説が広がることは、熱物質説を後押しする結果となった〔高林(1999) p.40〕。 そのため、18世紀には熱物質説が主流になってきた。ヘルマン・ブールハーフェも著書で"火の物質"を論じた。そして、熱は「火の物質」が通常の物質にぶつかり、その結果通常の物質が動くことによって起きると考えた〔山本(2008) 1巻p.216〕。ブールハーフェの理論は、当時の彼の名声もあいまって、科学者に強い影響を与えた〔山本(2008) 1巻pp.209-212〕。さらにジョセフ・ブラックは熱物質説をもとに実験を行い、熱容量や潜熱の概念を生み出すことで、それまであいまいだった「熱」と「温度」を区別した。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「カロリック説」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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