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ゲーリュオーン()は、ギリシア神話に登場する怪物である。クリューサーオールとカリロエーの子である〔ヘーシオドス『神統記』287、982。〕。 ゲーリュオーン(ゲリュオン)はアイスキュロスおよびラテン語による表記で、叙事詩中ではゲーリュオネウス()、イオニア・アッティカ散文作品やアリストパネース、ピンダロスなどではゲーリュオネース()、ステシコロスの抒情詩では 、カルキディアの壺絵の表記では となっている。エトルリア語ではケルン(Cerun)。 ゲーリュオーンの最大の特徴はその形態で、三頭〔ヘーシオドス287。〕、または三頭三体〔アイスキュロス『アガメムノーン』870、ルクレーティウス『物の本質について』第5巻28節、ウェルギリウス『アエネーイス』第6巻289など。〕の怪物であるとされた。古注によると、ステシコロスはゲーリュオーンには6つの腕、6つの脚があり、そして翼が生えていた、と歌っていたらしい。アポロドーロスはさらに詳細に、「三人の男の身体が腹で一つになっていて、脇腹と太腿からは三つに分かれた身体を持っていた」と叙述している〔『ビブリオテーケー』2, 5, 10。高津春繁訳、98ページ。〕。 ステシコロスによるとゲーリュオーンは鎧兜をつけ、盾と槍でもって武装する古代ギリシア市民の重装歩兵の格好をしていた。対照的にヘーラクレースはライオンの皮一枚を身にまとい、武器は棍棒か弓矢、剣といういでたちだった。この対比は多くのギリシア美術に表現されている(ゲーリュオーンの牛獲りは古代ギリシアで非常に好まれたモチーフで、130ほどの事例が知られている)。 == ヘーラクレースとの戦い == ゲーリュオーンは、大洋のかなたにあり、まわりに海しかないエリュテイアの島(正確な場所は不明だが、スペイン南部のタルテッソス〔ステシコロス、断片184。〕あるいはガデイラ〔アポロドーロス、前掲。ペレキューデース断片18bによる。ガデイラはヘーロドトス『歴史』第4巻8によれば黒海の外、ジブラルタルを出たところにある。パウサニアース『ギリシア案内記』第1巻35章8もそれに従う。〕などの説がある)で牛の群れを飼っていた〔ヘーシオドス、290。〕。牛飼いはエウリュティオーンといい、牧犬は頭が2つあるオルトロスだった。ヘーラクレースは12の功業の十番目のものとしてエウリュステウス王にこの牛の群れを奪ってくるように命じられ、途中でさまざまないさかいを起こしながらも、エリュテイアに到着した。彼の姿を認めたオルトロスが襲撃したが棍棒で殺され、さらに犬を助けに来たエウリュティオーンまでも殺害された。これを知った別の牛飼いメノイテース(ハーデースの牛を飼っていた)がゲーリュオーンにこのことを告げ、ゲーリュオーンは牛を追っていたヘーラクレースに追いつき、戦いを挑んだ。しかし矢で射られて殺された〔アポロドーロス、前掲。〕。 ヘーラクレースは牛の群れを追っていたが、ローマの伝説によると途中でカークスという怪物盗賊がこれを盗み出した。ヘーラクレースはカークスを殺して再び牛を我が物とした〔リーウィウス『ローマ建国史』第1巻第7章4-7、『アエネーイス』第8巻190-275など。〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ゲーリュオーン」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Geryon 」があります。 スポンサード リンク
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