|
スッド(、 ()「山の海」)は南スーダンのマラカル市の南から市の北にかけての白ナイル川流域に広がる世界最大級の湿地。 東西の幅は約300km、南北の長さは約400km〔栗本「スッド」『世界地名大事典』3、528頁〕。乾季の総面積約3万km²、雨季の総面積約13万km²。2006年にスッドに含まれる57,000km²の領域がラムサール条約に登録された〔Sudd (2015年12月閲覧)〕。ニジェール内陸デルタ(総面積約7.8万km²) と並ぶアフリカ大陸最大級の湿地である。 という名称はアラビア語 ()「障壁、障害物」(< ()「塞ぐ」)〔〔Hans Wehr,J. Milton Cowan, ''A Dictionary of Modern Written Arabic'', Otto Harrassowitz Verlag, 1979, p.469〕から。その名のとおり、この湿地は多数の浮島や込み入った天然水路によって船舶の航行を妨げており、白ナイル上流と下流との天然の壁となってきた。「スッド」は湿地だけでなく、そこで航路を妨害する浮島の呼び名にもなっている〔野町『ナイル河紀行』、39頁〕。 == 環境 == スッドの総面積は乾季で約3万km²、雨季には約13万km²にも及ぶ。雨季になるとナイル川の増水と激しい降雨によって低地の大部分が冠水し、一年のおよそ半分の間、陸路の通行は遮断される〔。スッドは恒常的に冠水した本流沿いの地域と季節的に冠水する周辺のサバンナ地帯に大別され、さらにサバンナは樹木が少ない草原と高木や潅木が散在する草原に分かれている〔。 スッドの土壌は水のフィルターと水量を安定させるスポンジの役割を備えている〔。スッド全土には肥沃で粘度が高い黒綿土が分布しており、冠水した黒綿土は自動車や歩行者の移動を妨げ、乾燥して石のように硬くなった土は交通の障害になる〔。また、スッドはスーダン最大級の石油の埋蔵地帯であり、石油の採掘による環境汚染が懸念されている〔。 水文学的にスッドは洪水を緩和し、バハル・アル=ジャバル川からの堆積物を留める重要な役割を持っている。蒸発によって、およそ55%の河水がスッドで失われる。水位は季節的な増水の程度によって変動し、最大で1.5mに達する。同じ緯度に位置する近隣の地域と比較すると、スッドの年間降水量は55-65cmと少ない。この気候の一因として、スッドの東端と西端に存在するがある〔Zahran, A.B. 1986. Sudan Rainfall Variability – Towards a Drought Assessment Model. Interna. Confer. on water Resources Needs & Planning in Drought Prone Areas, 85-106〕。 スッドに入った白ナイルの流れは網目のように広がり、白ナイル川の支流である、、ソバト川が北の境界線となっている。スッドで停滞した白ナイルの河水は、蒸発によって約半分に減少する〔。水面では上流から流れ着いた水草やパピルスなどが絡み合い、場合によっては直径数百メートルもの浮島となって漂っている水面を覆うホテイソウやパピルスの浮き草や浮島は船舶の航行の障害となり、南スーダンを北スーダン、エジプト、19世紀にアフリカ大陸への進出を図ったヨーロッパ諸国の影響から分断していた〔。ナイル川の探検時代には多くの探検隊がスッドで進路と退路を絶たれ、飢えと風土病によって落命した〔。 スッドは多種多様な生物相を抱え、湿地帯に棲む動物は季節によって変動する水位に合わせて移動する。乾季に入るとアンテロープ、ガゼル、ゾウなどの内陸部の草食動物が水と食料を求めてスッドに現れ、魚類は増水時に冠水した平原地帯に拡散して繁殖する〔。スッド周辺にはヌエル族、ディンカ族、シルック族などのナイロート系部族が居住し、スッドの環境に依存した農耕・牧畜・漁労・狩猟採取を行っている〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「スッド」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Sudd 」があります。 スポンサード リンク
|