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ストレス脆弱性モデル (ストレスぜいじゃくせいモデル、英:Diathesis-stress model) は、精神疾患の発症を説明する標準的な理論である。 日本語では、脆弱性ストレスモデル、素因ストレスモデルとも呼ばれる。ストレス脆弱性モデルによれば、発症しやすい素質と、その人の限界値 (しきい値〔 通常、反応を起こすのに必要最小限の刺激の強さをいう。しきい値以下の強さの刺激では反応は起こらない。出典: 『世界大百科事典』 第2版 平凡社 「いき【閾 threshold】」の頁〕) を超えるストレスが組み合わさった場合、人間は精神疾患を発症する〔ここのみ. Lazarus, R. S. (1993). "From psychological stress to the emotions: A history of changing outlooks." '' Annual Review of Psychology'', 44: 1-21. doi: 10.1146/annurev.ps.44.020193.000245〕。 == 概要 == 素因 (diathesis) という用語は、ギリシア語の「気質」が語源である。素因または脆弱性 (vulnerability) は、遺伝的、生物学的、心理的または個人の状況による要因という形をとり得る〔so far. Ingram, R. E. & Luxton, D. D. (2005). "Vulnerability-Stress Models." In B.L. Hankin & J. R. Z. Abela (Eds.), ''Development of Psychopathology: A vulnerability stress perspective '' (pp. 32-46). Thousand Oaks, CA: Sage Publications Inc.〕。各人の脆弱性が疾患 (disorder) に進展するには、それぞれ個人によって幅広い違いが存在する〔。 素因または体質 (predisposition) は、後から生じたストレス反応と相互作用する。ストレスは、一つか複数のライフイベントと関連している。そうしたイベントは、人間の心理的な安定を失わせ、また、場合によっては疾患の進展するきっかけになる〔so far. Oatley, K., Keltner, D. & Jenkins, J. M. (2006b). "Emotions and mental health in childhood."''Understanding emotions '' (2nd ed.) (pp. 321-351). Oxford, UK: Blackwell Publishing.〕。このように、ストレス脆弱性モデルは、素因 (遺伝的または非生物学的な特性) が環境の影響 (ストレッサー) とどのように相互作用して精神疾患を引き起こすのか、探求することに役立つ〔Prevention Action. ''Diathesis-stress models'' Retrieved from http://www.preventionaction.org/reference/diathesis-stress-models〕。 精神医学など医学の分野で用いられる「素因」(diathesis) という用語の使用は、19世紀にさかのぼる。一方で、ストレス脆弱性モデルは、1960年代に統合失調症の解明に用いられるまで、精神病理の発症を説明するためには導入も使用もされなかった〔。ストレス脆弱性モデルは心理学の多くの分野で、とくに精神病理の発症の研究に用いられている〔Sigelman, C. K. & Rider, E. A. (2009). Developmental psychopathology. ''Life-span human development'' (6th ed.) (pp. 468-495). Belmont, CA: Wadsworth Cengage Learning.〕。生まれつきの特徴と養育環境が相互作用して、生涯にわたる精神疾患の発症しやすさ (susceptibility, 感受性) となることを理解するために、このモデルは有用である〔。 ストレス脆弱性モデルは、誰が発症し、また誰が発症しないかを判別する補助にもなる〔Oatley, K., Keltner, D., & Jenkins, J. M. (2006a). "Emotions and mental health in adulthood." ''Understanding Emotions '' (2nd ed.) (pp. 353-383). Oxford, UK: Blackwell Publishing.〕。例えば、うつ病においては、同じストレッサー (ストレス源) にさらされた場合でも、Aという人が鬱(うつ)になる一方で、Bという人がそうならないことを説明する助けになる〔。 したがって、近年、ストレス脆弱性モデルは、なぜ一部の人々が他より発症するリスクが高いのかを説明するために使われている〔so far. Gazelle, H., & Ladd, G. W. (2003). "Anxious solitude and peer exclusion: A diathesis stress model of internalizing trajectories in childhood." ''Child Development'', 74: 257-278. doi: 10.1111/1467-8625.00634〕。例えば、うつ病の家族歴のある子どもたちは、一般にうつ病をより発症しやすいが、発症は他の条件にも影響される。ここに、うつ病の家族歴を持ち、かつ、著しいストレッサー (例えば仲間から排除または拒絶されるなど) にさらされた子どもがいるとする。一方で、同様の家族歴を持ちながら、他の仲間とのポジティブな人間関係を保っている子どもがいる。そして、前者の子どもは後者より、うつ病を発症する可能性が高い〔。ストレス脆弱性モデルは、他には不良な (非臨床的な事例を除く) 発達転帰を説明することにも有用な役割を果たしている。 保護要因 (protective factors, 保護因子)、例えば、ポジティブな人間関係、または高い自己評価などは、ストレッサーからの影響を弱め、また、精神疾患の影響を予防するか強く抑制することが出来る〔。 一方で、多くの精神疾患には、「脆弱性の窓」(window of vulnerability) と呼ばれる期間がある。ある人はその期間を通して、精神疾患を発症する可能性が他の人々より上がる〔so far. Barlow, D. H. & Durand, V. M. (2009). ''Abnormal psychology: An integrative approach. '' Belmont, CA: Wadsworth Publishing Company.〕。 ストレス脆弱性モデルは多くの場合、複数の原因による発症モデルとして捉えられる。このモデルは次のように提唱する。すなわち、発症の過程では、複数のリスク要因 (risk factors, リスク因子) がストレッサーおよび保護要因と相互作用して、精神疾患の発症をもたらす〔so far. Masten, A. S. (2001). Ordinary magic: Resilience processes in development. ''American Psychology'', 56(3): 227-238. doi:10.1037/0003-066X.56.3.227〕。 なお、最新の学説である "differential susceptibility hypothesis" (差次感受性仮説) は、ストレス脆弱性モデルに基づいている〔Belsky, J. & Pluess, M. (2009). "Beyond diathesis stress: Differential susceptibility to environmental influences." ''Psychological Bulletin'', 135: 885-908. doi: 10.1037/a0017376〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ストレス脆弱性モデル」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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