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『トロイラスとクレシダ』(Troilus and Cressida)とは、ウィリアム・シェイクスピア作の悲劇。1602年に書かれたと信じられている。 『トロイラスとクレシダ』は主人公(トロイラス)が死なないことで従来の悲劇とは異なり、シェイクスピアの「問題劇」の1つに数えられている。その代わりに劇は、トロイの英雄ヘクターの死と、トロイラスとクレシダの愛の破局で重々しく幕を閉じる。またトーンも劇全体を通して、猥雑な喜劇から陰鬱な悲劇の間を揺れ動く。そのため、読者/観客はどのように受け止めればいいのか困惑してしまう。しかし、劇のいくつかの特徴的な要素は明らかに「現代的」という見方をされることが多い(最も顕著なものは、ヒエラルキー、名誉、愛などの本源的価値への繰り返し続けられる疑問)。 ジョイス・キャロル・オーツは次のように述べている。「シェイクスピアの戯曲の中で最も頭悩まされ、意味のつかみにくい『トロイラスとクレシダ』は現代の読者に現代劇の印象を与える——たくさんの不義についての吟味、悲劇ぶることへの批判、人間の命の中にある本質的なものとただ存在するだけものとの間の暗黙の議論、それらは20世紀のテーマである(中略)これは特殊なタイプの悲劇——因習的な悲劇では不可能であったものに基づいた"悲劇"」〔 Oates, Joyce Carol (1966/1967). ''The Tragedy of Existence: Shakespeare's Troilus and Cressida''. Originally published as two separate essays, in Philological Quarterly, Spring 1967, and Shakespeare Quarterly, Spring 1966.〕。 ところで『トロイラスとクレシダ』の「四折版」のタイトルは『The Famous Historie of Troylus and Cresseid』で「歴史劇」と謳っているが、「ファースト・フォリオ」では悲劇に分類され、タイトルも『The Tragedie of Troylus and Cressida』になっている。さらに「ファースト・フォリオ」の原版でこの劇のページに番号がつけられておらず、目次のタイトルも明らかに後から押し込まれたものであることが、謎に輪をかけている。研究者たちはこの劇がかなり遅い段階で「ファースト・フォリオ」に加えられ、空いたところに加えられたのだろうと見ている。 == 材源 == トロイラスとクレシダの物語はギリシア神話ではなく、中世の物語である。シェイクスピアはいろいろな材源を使った。たとえば、ジェフリー・チョーサーの『トロイルスとクリセイデ(Troilus and Criseyde)』、ジョン・リドゲイト(John Lydgate)の『トロイの書(Troy Book)』、ウィリアム・キャクストン(William Caxton)翻訳の『トロイ史集成(Recuyell of the Historyes of Troye)』がそうである〔Palmer, Kenneth (ed.) (1982). ''Troilus and Cressida'' (Arden Shakespeare: Second Series). Methuen: London. 〕。 アキリーズ(アキレウス)を戦場へ向かうよう説得するくだりはホメーロスの『イーリアス』(おそらくジョージ・チャップマンによる翻訳)と、中世・ルネサンス期のさまざまな改作から引いている。 この物語は1600年代初頭の劇作家に人気のあるものの1つで、シェイクスピアは同時代の演劇から着想した。トマス・ヘイウッド(Thomas Heywood)にもトロイ戦争およびトロイラスとクレシダの話を描いた2部作『The Iron Age』があるが、シェイクスピアとヘイウッドとどちらが先に書いたかはわからない。さらに、トマス・デッカー(Thomas Dekker)とヘンリー・チェトル(Henry Chettle)もシェイクスピアと同じ頃に『トロイラスとクレシダ』という劇を書いたが、こちらはあらすじの断片が残っているのみである。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「トロイラスとクレシダ」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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