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バナッハ環 : ウィキペディア日本語版
バナッハ環[ばなっはかん]
数学の、特に関数解析学の分野におけるバナッハ環(バナッハかん、)とは、あるいは複素数上の結合多元環 ''A'' で、バナッハ空間でもあるもの、すなわち、ノルムが存在し完備であるもののことを言う。ステファン・バナッハの名にちなむ。その乗算と、バナッハ空間のノルムは、次のような不等式で関連付けられる:
: \forall x, y \in A : \|x \, y\| \ \leq \|x \| \, \| y\|
(すなわち、積のノルムはノルムの積より小さいか等しい)。このことから、積の演算は連続であることが分かる。この性質は、実数あるいは複素数に対しても見られる。例えば、|-6×5| ≤ |-6|×|5| など。
上述の定義において、バナッハ空間ノルム空間に緩める場合、同様の構造はノルム環(normed algebra)と呼ばれる。
バナッハ環は、ノルムが 1 であるような積に対する単位元を持つとき、単位的(unital)であると言う。またその積が可換であるとき、可換と呼ばれる。単位元を持つ持たないにかかわらず、任意のバナッハ環 A はある単位的バナッハ環 A_e にこの閉イデアルとなるように等長的に埋め込める。しばしば、扱っている環は単位的であるということがアプリオリに仮定される。すなわち、A_e を考えることで多くの理論を展開でき、その結果を元の環に応用するという方法が取られることがある。しかしこの方法は常に有効という訳ではない。例えば、単位元を持たないバナッハ環においては、すべての三角関数を定義することが出来ない。
実バナッハ環の理論は、複素バナッハ環の理論とは非常に異なるものである。例えば、非自明な複素バナッハ環の元のスペクトルは決して空とはならないが、実バナッハ環においてはいくつかの元のスペクトルは空となり得る。
バナッハ環は、''p''-進数の体についても同様に定義できる。これは ''p''-進解析の一部である。
== 例 ==
バナッハ環の原型となる例は、局所コンパクト(ハウスドルフ)空間上の(複素数値)連続関数で、無限大において消失するようなものからなる空間 C_0(X) である。C_0(X) が単位的であるための必要十分条件は、''X'' がコンパクトであることである。複素共役を対合として、C_0(X) は実際にはC
*-環
である。より一般に、すべての C
*-環はバナッハ環である。
* 実数(あるいは複素数)の集合は、絶対値をノルムとすることで、バナッハ環となる。
* すべての実あるいは複素 ''n''×''n'' 行列は、劣乗法的行列ノルムを備えることで、単位的バナッハ環となる。
* バナッハ空間 R''n''(あるいは C''n'')に対し、ノルム ||''x''|| = max |''x''''i''| を定める。また成分ごとの乗算を次のように定める:(''x''1,...,''x''''n'')(''y''1,...,''y''''n'') = (''x''1''y''1,...,''x''''n''''y''''n'').
* 四元数は、その絶対値で与えられるノルムによって、4-次元実バナッハ環を構成する。
* ある(点ごとの乗算と上限ノルムを備える)集合上で定義されるすべての有界な実あるいは複素数値関数からなる環は、単位的バナッハ環である。
* ある(再び、点ごとの乗算と上限ノルムを備える)局所コンパクト空間上で定義されるすべての有界な実あるいは複素数値連続関数からなる環は、バナッハ環である。
* ある(関数の合成で乗算を定め、作用素ノルムをノルムとする)バナッハ空間 E 上のすべての連続線型作用素からなる環は、単位的バナッハ環である。E 上のすべてのコンパクト作用素の集合は、この環における閉イデアルである。
* ''G'' が局所コンパクトハウスドルフ位相群で、μ がそのハール測度であるなら、''G'' 上のすべての μ-可積分関数からなるバナッハ空間 L1(''G'') は、その元 ''x'', ''y'' に対する畳み込み ''xy''(''g'') = ∫ ''x''(''h'') ''y''(''h''−1''g'') dμ(''h'') の下で、バナッハ環となる。
* 一様環: C(X) の部分環で上限ノルムを備え、定数を含み、X の点を区分する(したがってコンパクトハウスドルフ空間でなければならない)ようなバナッハ環。
* 自然バナッハ関数環:すべての指標(character)が X の点での評価(evaluation)であるような一様環。
* C
*-環
:あるヒルベルト空間上の有界作用素の環の閉
*-部分環。
* :ある上のラドン測度からなるバナッハ環で、二つの測度の積は畳み込みで与えられる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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