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パリアカカ(パリカカ〔『中南米の神話伝説』にみられる表記。〕、パリア・カカ〔『新世界の悪魔』にみられる表記。〕とも)(''Pariacaca'', ''Paryaqaqa'', ''Pariya Qaqa'', ''Pariakaka''など)は、インカ神話のうちペルー中部高地のワロチリ地方に伝わる神話に登場する神(ワカあるいはアプ)である。 16世紀末から17世紀初頭にかけてフランシスコ・デ・アビラ神父がケチュア語のままで神話を記録したとされている〔『マヤ・インカ神話伝説集』225頁。〕。 彼は4人いるとされる創造神の1人でもある。創造神は戦いによって次々に入れ替わったが、パリアカカも水の力をもって先代のワリャリョ・カルウィンチョの火の力を破っている。しかし彼の次の代であるコニラヤとの戦いは語られないまま、コニラヤの代となった〔『マヤ・インカ神話伝説集』228-229頁。〕。 == 神話 == ワロチリとチョルリリョの間に、コンドルコト〔『世界の民話 アメリカ大陸〔II〕』279頁、など。〕(またはクントゥル・クトゥル〔『新世界の悪魔』46頁。〕)という山があった。 大洪水が去り、王も政府もない時代「プルンパチャ」が始まったある日、コンドルコト山の頂上に5つの大きな卵が出現した。 その1つに神のパリアカカが入っていた。 彼にはワティアクリ(ワチアクリとも)というインディオの息子がいたが、卵の中から息子に助言をするなどして、息子が望んだ女性を妻として得るのを助けた〔『世界の民話 アメリカ大陸〔II〕』279-287頁、『ペルー・インカの神話』204-206頁。〕。 やがて卵から、5羽の鷹〔『世界の民話』287頁。〕〔(または隼〔『インカの神話』104頁。〕〔『ペルー・インカの神話』206頁。〕)が生まれ出た。 4羽は立派な姿の男性となったが、最後の1羽は汚い衣をまとった男性となった。 それがパリアカカであった〔。 パリアカカと兄弟達は、金持ちで傲慢なインディオ〔『ペルー・インカの神話』206頁の記述では、このインディオはタムタナムカといい、パリアカカの息子ワティアクリは彼の娘と結婚している。〕をその家族もろとも、洪水を起こして滅ぼしたという〔。 インディオの住居は、パチャカマク川も流れる、チョリリョ教区近くの高山ビコチャとサン・ダミアン教区にある高山リャンタパの間にあったという〔。 パリアカカは自分の力を試すべく、ワリャリョ・カルウィンチョを探しに、兄弟から離れて旅立った〔。 別の物語では、雪の高山パリアカカに現れたパリアカカが、ワリャリョ・カルウィンチョへ人間の生贄を捧げるインディオに対し、自分は人間ではなくリャマと子リャマの血で満足するから人間をワリャリョへ捧げないよう命じている。インディオがワリャリョの報復を恐れていると知ったパリアカカは、ワリャリョ・カルウィンチョと対決することとした〔『世界の民話』291-292頁。〕。 彼の冒険は20レグワ(1レグワは約5.6km)の範囲であった〔。 ワガイウサ〔『世界の民話』288頁では、この村が後に「サンタ・マリア・デ・ヘスース・デ・ワロチリ」と呼ばれるとしている。〕という村にパリアカカがさしかかると、ちょうど祭のさなかであった。 村人は祭にふさわしくないパリアカカの身なりを非難したが、彼は怒りをこらえて黙っていた。1人の少女だけがパリアカカにチチャというトウモロコシの酒を勧めた。パリアカカは喜び、少女に、5日後〔『中南米の神話伝説』55頁では「6日後」。〕に洪水が起こって村が滅びるから逃げるように勧め、他の村人へは話さないよう口止めした。 (物語によっては、少女はその家族にだけ事実を打ち明けることを許されている〔『ペルー・インカの神話』206頁、『世界の民話』288頁など。〕。) 5日後、パリアカカはワガイウサに近いマトロコト山〔『世界の民話』289頁。〕に登ると、天に命じて嵐を起こさせた。 村は豪雨と暴風、そして洪水に襲われ、村人は山へ避難しようとしたが力尽きて全員が溺死した。あの少女だけが山に逃れていた。 パリアカカはそのまま村を立ち去った〔『世界の民話 アメリカ大陸〔II〕』288-289頁、『ペルー・インカの神話』206頁、『マヤ・インカ神話伝説集』167-168頁。〕。 次にパリアカカが通りかかったのは、後にサン・ロレンソと呼ばれる、コパラのアイリュであった。 ちょうどチョゲ・スソ〔『マヤ・インカ神話伝説集』にみられる表記。ほかに、チョーゲ・スソ(『中南米の神話伝説』58頁)、チョク・スソ(『中南米の神話伝説』88頁)、チョケスソ(『世界の民話』)、チュキ・スソ(『新世界の悪魔』)の表記もみられる。〕という女性が泣いていたので、理由を聞いたところ、旱魃のために畑のトウモロコシが枯れていることを嘆いていたのだった。彼女の美しさを気に入ったパリアカカは、妻になるなら助力すると言ったところ、彼女は自分の畑だけでなく村中の畑の救済も条件とした。その優しさにパリアカカはさらに心惹かれた。 村では近くのシエナカカ山の泉から水を引いていた〔が、コカチャリャの谷〔『世界の民話』290頁。〕からならここまで十分な水量が引けるようだった。 パリアカカは神の力で熊やピューマなどの動物、鳥、蛇やトカゲなどを呼び集めると、狐に指揮をさせて畑の間に堰を掘らせ、水道を作り始めた。 現在サン・ロレンソ教会のある場所の近くまで用水溝ができたとき、シャコ(鷓鴣)が飛んできて、その鳴き声に気を取られた狐が水を丘の下に流してしまった。 他の動物たちが怒ったため、狐に代わって蛇が作業を指揮したが、そのせいで水路はあまりうまく完成させられなかった。 しかしできあがった水門から川の水を引き入れて畑に供給すると、トウモロコシがみるみる元気になっていった。 村人は皆、この成果に感心した。 パリアカカとチョゲ・スソは結婚し、彼女の希望でココチャリョ〔『マヤ・インカ神話伝説集』にみられる表記。〕(ココチャジョ〔『中南米の神話伝説』にみられる表記。〕とも)の水道の源であるヤナカカの岩で暮らし始めた。村人はパリアカカを有り難がり、親切にしてくれた。チョゲ・スソが「死後もここにいたい」と願うのを聞いたパリアカカは、彼女を石に変え、岩に置いた〔『世界の民話 アメリカ大陸〔II〕』289-291頁、『マヤ・インカ神話伝説集』168-172頁。〕。 そしてパリアカカはワリャリョ・カルウィンチョのいる山へ向かった。 水や嵐などを武器とするパリアカカと炎を武器とするワリャリョ・カルウィンチョの激しい戦いはパリアカカの勝利に終わった。 一説によると、パリアカカは雪山パリアカカとなり、ワリャリョ・カルウィンチョを火山に変えたという〔『世界の民話』292頁。〕。 (詳細はワリャリョ・カルウィンチョの項目を参照。) また、以後それまでワリャリョ・カルウィンチョに子供を生贄に出していたインディオたちは、以後、パリアカカを崇めるようになり、雪山パリアカカ(ヤロとも呼ばれる)の頂に登って、山となった彼に犠牲を捧げたという〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「パリアカカ」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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