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ファインマン–カッツの公式(ファインマン–カッツのこうしき、)とは、放物型偏微分方程式のコーシー問題の解を、ウィーナー過程を用いて表現した公式のことである。 ==概要== ファインマンが経路積分による量子化を発見したのが、この公式の研究の発端である 〔R.P.Feynman, Rev.Mod.Phys. 20(1948)367.〕。カッツは、シュレディンガー方程式ではなく拡散方程式〔物理学では、フォッカー・プランク方程式()と呼ぶこともある。〕を考察することで、確率過程として数学的に厳密な定式化を行った〔M.Kac, Transactions of the American Mathematical Society 65(1949)1-13.〕。ファインマン-カッツの公式は拡散方程式に対する公式であることに注意すべきである。実時間でのシュレディンガー方程式に対する解までこみでファインマン-カッツの公式と呼ぶこともあるが、拡散方程式に対してのみこう呼ぶのが厳密には正しい。実時間のシュレディンガー方程式に対しては、測度論を基礎にして解の公式を構成することはできない〔実時間での経路積分の場合、いかなる測度も定義できないことが証明されている。〕〔中村徹著「超準解析と物理学」、日本評論社、1998、ISBN 4-535-78248-2。同書での引用文献を参照。〕。実時間での経路積分を、虚時間の理論でファインマン・カッツの公式を適用したあとで時間パラメータに関しての解析接続によって導こうという方法論は、一般的に適用可能な数学的厳密性を持ったアプローチなのか否かはおそらくわかっていない。現在のところ、時間を無限に分割し、分点ごとに積分し、その後で極限値をとることで経路積分は定義されていると考えるのが一般的に適用可能なアプローチである。事実、経路積分を数学的に明確に定義しようとしている書物〔例えば、藤原大輔著「ファインマン経路積分の数学的方法」シュプリンガー・ジャパン、1999年、ISBN 978-4-431-70748-6 .〕ではこのように極限で定義されたものとして扱っている。 状態空間が無限の場合()は基本的なブラウン運動〔普通のウィーナー測度で考えるということ。〕を用いるだけなので形式的表現は簡単である。ただし、遷移確率()を用いて解の具体的な関数形を導出する際、計算が簡単に済むか否かはポテンシャルの関数形に依存する〔ポテンシャルがある場合は、純粋に確率過程の理論のみで計算することは難しい。現実的には経路積分と同じテクニックで計算することになる。〕〔調和振動子であれば簡単に計算できる。型のポテンシャルが加わっていても計算は近似なしにできるが、計算はややテクニックを要する。〕〔D.Peaks and A.Inomata, J.Math.Phys.10(1969)1422.〕〔具体的な計算テクニックについては、H.Kleinert, Path Integrals in Quantum Mechanics, Statistics, Polymer Physics and Financial Markets(fifth edition), World Scienctific, ISBN 978-981-4273-56-5や C.Grosche and F.Steiner, Handbook of Feynman Path Integrals, Springer Verlag, 1998,ISBN 3-540-57135-3などを参照。〕。 定義域が半無限や有限の場合は境界条件が現れるためブラウン運動ではなく反射ブラウン運動、弾性ブラウン運動などを用いる必要がある〔例えば、1次元の半数直線の場合で、原点において 第2種の境界条件(ノイマンの境界条件)が与えられている時は単純で、の代わりにを用いればよい。有限区間の場合は、有限区間での反射ブラウン運動を定義する必要がある。解は無限和の表現になる。〕。特に第3種の境界条件の場合は、弾性ブラウン運動で表現する必要があり、局所時間()〔滞在時間(sojourn time)と呼ばれることもあるが、 最近の文献ではこの表現はあまり見かけない。〕が公式に現れるので、形式的な表現は別として具体的に計算するのは面倒である。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ファインマン–カッツの公式」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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