|
ferrocene ===========================
フェロセン () は、化学式が Fe(C5H5)2 で表される鉄のシクロペンタジエニル錯体である。水には不溶である。可燃性であり、人体への刺激性が強いので取り扱いには注意を要する。鉄(II)イオンにシクロペンタジエニルアニオンが上下2個配位結合している。このように上下から中央の原子を挟んだ形状の化合物は、サンドイッチ化合物と呼ばれている〔R. Dagani (3 December 2001). "Fifty Years of Ferrocene Chemistry" (要登録). ''Chemical and Engineering News'', 79 (49): 37-38. 記事 〕。 フェロセンは極めて安定な酸化還元特性を示すため、Fe(III)/Fe(II) の酸化還元電位はサイクリック・ボルタンメトリー測定の際に基準として用いられる。 == 歴史 == フェロセンは偶然の中から発見された化合物である。1951年に、デュケイン大学の Pauson と Kealy が酸化的カップリングによるフルバレンの合成を目的として臭化シクロペンタジエニルマグネシウムと酸化鉄(III)を反応させたところ、「非常に安定な薄オレンジ色の粉末」が得られることを報告した。この安定性はシクロペンタジエニルの負電荷が主な原因であったが、発見当時は η5 のサンドイッチ構造を取っているとの認識はなされていなかった〔T. J. Kealy, P. L. Pauson (1951). "A New Type of Organo-Iron Compound". ''Nature'' 168: 1039. DOI:10.1038/1681039b0 〕。 1952年、ロバート・バーンズ・ウッドワードとジェフリー・ウィルキンソンはフェロセンの反応性を検証することで、構造を推定した〔G. Wilkinson, M. Rosenblum, M. C. Whiting, R. B. Woodward (1952). "The Structure of Iron Bis-Cyclopentadienyl". ''Journal of the American Chemical Society'' 74: 2125 - 2126. DOI:10.1021/ja01128a527 〕。同じく1952年にはエルンスト・フィッシャーがこの2者とは独立に、フェロセンがサンドイッチ構造であると推定すると共に他のメタロセンの合成に着手した〔E. O. Fischer, W. Pfab (1952). "Zur Kristallstruktur der Di-Cyclopentadienyl-Verbindungen des zweiwertigen Eisens, Kobalts und Nickels". ''Z. Naturforsch. B'' 7: 377 - 379. 〕。最終的にはNMRスペクトル解析とX線結晶構造解析によりフェロセンの構造が決定された〔J. Dunitz, L. Orgel, A. Rich (1956). "The crystal structure of ferrocene". ''Acta Crystallographica'' 9: 373–5. DOI:10.1107/S0365110X56001091 〕〔Pierre Laszlo, Roald Hoffmann, (2000). "Ferrocene: Ironclad History or Rashomon Tale?". ''Angewandte Chemie International Edition'' 39: 123 - 124. 記事 〕。この独特なサンドイッチ構造はdブロック元素と炭化水素とが形成する錯体として非常に面白い研究対象であり、フェロセンの発見は有機金属化学のさきがけとなった。 ミュンヘン大学のエルンスト・フィッシャーと、インペリアル・カレッジ・ロンドンのジェフリー・ウィルキンソンは有機金属化学に対する貢献が認められ、ノーベル化学賞を共同受賞した。 シクロペンタジエニルナトリウムと無水塩化鉄(II)をエーテル系の溶媒中で反応させることで、より効率的にフェロセンが得られることが判明している。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「フェロセン」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|