|
===================================== 〔語彙分解〕的な部分一致の検索結果は以下の通りです。
有機リン化合物(ゆうきリンかごうぶつ、 organophosphorus compound)は炭素−リン結合を含む有機化合物の総称である。リンは窒素と同じく第15族元素であり、それらを含む化合物は共通の性質を持つことが多い〔Dillon, K. B.; Mathey, F.; Nixon, J. F. ''Phosphorus. The Carbon Copy''; John Wiley & Sons, 1997. ISBN 0-471-97360-2〕〔Quin, L. D. ''A Guide to Organophosphorus Chemistry''; John Wiley & Sons, 2000. ISBN 0-471-31824-8〕。 リンは−3、−1、+1、+3、+5価の原子価をとりうる。一般に符号にかかわらず+3価と−3価の酸化状態を (III) と表すことが多い。IUPAC命名法には配位数 δ と結合数 λ を用いたものがある。この命名法に従えば、ホスフィンは δ3λ3 の化合物となる。 神経系・呼吸器系に対する毒性がある化合物が多いことから第二次世界大戦ごろから殺虫剤として農薬に使われている。「ホス(phos)」が付く農薬はたいてい有機リン剤である(ただしホスゲンは無関係)。また人への神経毒性が高い化合物も多いため、神経ガスとしてサリンなどが開発された。人の中毒症状としては縮瞳が特徴的である。公衆衛生学、労働安全衛生、労働災害では、毒性のある化合物について特に疾病原因や汚染物質として扱う。 また、化学兵器原料となるものも多く、これらの製造・使用・取引にあたり各種の法規制を受ける。 ==ホスフィン== ホスフィン類 PR3の親化合物はホスフィン PH3 である。ホスフィン類の原子価は−3価であり(δ3λ3)、単純なアミンのリン類縁体である。トリフェニルホスフィンは有機化学でよく用いられる。 アミンと同様、ホスフィンは三角錐型の構造をとるが、結合角はアミンより大きい。トリメチルホスフィンの C−P−C 結合角は 98.6° であるが、メチル基を ''tert''-ブチル基で置き換えると 109.7° まで増加する。 反転障壁はアミンよりもずっと大きい。そのため異なる3つの置換基を持つホスフィンは光学活性を持つ。一方アミンは容易に立体反転を起こすためラセミ体しか存在しない。 塩基性はアミンより低く、たとえばホスホニウムイオン PH4+ の p''K''a は −14 であるのに対してアンモニウムイオン NH4+ では 9.21、トリメチルホスホニウムの p''K''a 8.65 に対しトリメチルアンモニウムは 9.76 であり、トリフェニルホスホニウムの p''K''a 11.2) に対しトリフェニルアンモニウムは p''K''a 19 である。 アミンと同じく孤立電子対を持つが性質は異なる。ピリジンなどの孤立電子対は非局在化によって C=C 結合を含む共役系を形成するが、同様の構造を持つホスフィン (ホスホリン) ではそのようなことが起こらない。同じ理由でピロールのリン類縁体であるホスホールは芳香族性を持たない。 反応性は求核性があるという点でアミンに類似し、一般式 R4P+ X− で表されるホスホニウム塩をつくる。この性質はアルコールをハロゲン化アルキルに変換するアッペル反応などで利用される。 アミンと異なり、ホスフィンは容易に酸化されてホスフィンオキシドになる。 以下にホスフィンの合成法を示す。 *有機金属試薬(グリニャール試薬など)によるハロゲン化リンの求核置換反応。 *R''n''PCl''m'' + ''m'' R'M → R''n''R'''m''P + ''m'' MCl (''n'' + ''m'' = 3) *金属カリウムなどとホスフィンから合成した金属ホスフィドによる求核置換反応。ハロゲン化アルキルとナトリウムアミドの反応に対応する。 *R2PM + R'Cl → R2R'P + MCl (M = Li, Na, K) *強塩基存在下(ジメチルスルホキシド中水酸化カリウムなど)でのホスフィンのアルケン、アルキンへの求核付加反応。反応はマルコフニコフ則に従う〔Arbuzova, S. N.; Gusarova, N. K.; Trofimov, B. A. "Nucleophilic and free-radical additions of phosphines and phosphine chalcogenides to alkenes and alkynes". ''Arkivoc'' 2006, part v, 12–36 (EL-1761AR). リンク(英語) 〕。反応に用いるホスフィンは赤リンと水酸化カリウムから系中で発生させることもできる。一級ホスフィン (RPH2) および二級ホスフィン (R2PH) をアクリロニトリルなど電子不足のアルケンと反応させる場合には、塩基を必要としない。 *R2PH + R'2C=CR'2 → R2P−CR'2−CHR'2 *R2PH + R'C≡CR' → R2P−CR=CHR' *アゾビスイソブチロニトリルや有機過酸化物を用いた、ホスフィンのアルキンへのラジカル付加反応。この反応ではアンチマルコフニコフ型の生成物が得られる。 *クロロシランを用いたホシフィンオキシドの還元。 ホスフィンを用いた反応には以下のようなものがある。。 *ハロゲン化アルキルとの反応によるホスホニウム塩の生成。 *還元剤としての利用。 *シュタウディンガー反応においてアジドをアミンに、光延反応においてアルコールをエステルに変換するのに使われる。これらの反応の過程で、ホスフィンは酸化されてホスフィンオキシドになる。 *活性化されたカルボニル基を還元するのにも用いられ、例えば α-ケトエステルの α-ヒドロキシエステルへの還元が知られる〔Zhang, W.; Shi, M. "Reduction of activated carbonyl groups by alkyl phosphines: formation of α-hydroxy esters and ketones". ''Chem. Commun.'' 2006 1218–1220. 〕。トリメチルホスフィン上の水素原子の移動を含む反応機構が提唱されている(トリフェニルホスフィンは反応しない)。 *ジアザホスホレンのように、適切な置換基で修飾すると P−H 結合の極性が反転し(極性変換)、このようなホスフィンヒドリドはカルボニル基を還元する。ベンゾフェノンの例を以下に示す〔Burck, S.; Gudat, D.; Nieger, M.; Du Mont, W.-W. "''P''-Hydrogen-Substituted 1,3,2-Diazaphospholenes: Molecular Hydrides" ''J. Am. Chem. Soc.'' 2006, ''128'', 3946–3955. 〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「有機リン化合物」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Organophosphorus compound 」があります。 スポンサード リンク
|