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ほら話(法螺話、ほらばなし)は、大げさに言い立てられた作り話のこと。「ほら」は法螺貝の意である。もともと法螺貝には、山谷の地中に棲み、精気を得て海に入り、その際に山が崩れ洪水が起こるという俗信があった。ここから近世初期には「ほら」が意外な大儲けをするという意味で用いられ、さらに法螺貝を吹くということも加わって大げさな嘘をつくという意味で「法螺を吹く」「ほら吹き」という言い方がされるようになった〔『新明解語源事典』 三省堂、2011年、841頁〕。 大きく誇張された奇想天外な内容を持つほら話、あるいはそうした話で人を楽しませるほら吹きが活躍する話、またほら吹き同士がほら合戦をする話などは世界各国の民話や世間話に類例があり、そのいくつかは現代においても人々に親しまれている。 == アメリカ合衆国 == アメリカ合衆国にはほら話(トール・テイルズ〔tall taleのほかにhoaxも「ほら話」と訳されることがあるが、前者が信じられないような奇想天外な話を指すのに対し、後者は実際にはないものをあたかも存在するかのように見せかけていっぱい食わせるといった意味合いで用いられる。〕)の民族的伝統があり、これらはこの国の民話を形作る基本的な要素であるだけでなく、アメリカ人の性格やユーモアを規定するうえで重要な要素となっている。アメリカの伝統的なほら話は19世紀、南西部の開拓民や猟師、また当時唯一の交通機関であった河川の船乗りたちの間で生まれた。辺境で孤独な生活を送っていた彼らは、部落の酒場や森のキャンプの焚火などに集まると、自分たちの強さや勇敢さ、頭の切れのよさをめぐって壮大なほら話を始めたのである。その際に大げさな雄たけびや叫び声をあげたので、彼らはしばしば「ロアラー」(ほえ声)や「スクリーマー」(叫び屋)などとも呼ばれた〔『アメリカほら話』 山屋三郎解説、278-280頁〕。 「トール・トーク」と言われるこうした習俗の中で、いくつかの決まった英雄的人物の話が生まれ語り継がれるようになった。その一部は彼ら自身「ほら吹き」として知られた実在の人物であり、たとえばミシシッピ川の荒くれもの、テネシー州議員でアラモの戦いで玉砕したデイヴィッド・クロケット、インディアンとの武勇伝の中で自分を殺してしまったジム・ブリッジャーなどが有名である。アメリカ中に林檎の木を植えて回ったジョニー・アップルシードも実在の人物が元になっている。また一部は労働者の間の作り話や労働歌などから生まれ親しまれるようになった伝説上の人物であり、巨人の樵や蒸気ハンマーと渡りあったジョン・ヘンリーなどがいる。これら多くのほら話の英雄は当時の新聞や雑誌、単行本などに記載されることで広まっていった。ペイコス・ビルのように、刊行物に掲載された物語から生まれた英雄もいる〔『ほら話の中のアメリカ』 訳者解説、370-371頁〕。 東北部のヤンキーの風刺的なユーモアと対照的なほら話のユーモアは、またアメリカの近代文学の源流の一つでもある。マーク・トゥエインの「」やの「アーカンソーの大熊」、ワシントン・アーヴィングの「リップ・ヴァン・ウィンクル」などはほら話の古典であり、またエドガー・アラン・ポーの疑似科学を題材にした作品もほら話の流れを汲むものと見ることもできる〔エドガー・アラン・ポオ『ポオ小説全集Ⅰ』 創元推理文庫、1974年(佐伯彰一解説)、413-416頁〕。こうした伝統は20世紀以降も、大げさな表現を頻発する少年が語り手のサリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』や、歴史を誇張たっぷりに捏造するピンチョン、バースといった作家の作品のなかに連綿と受け継がれている〔山嵜文男「「ほら話」(Tall Tale)」『はじめて学ぶアメリカ文学史』 ミネルヴァ書房、1991年、149頁〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ほら話」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Tall tale 」があります。 スポンサード リンク
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