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ポアンカレの回帰定理(ぽあんかれのかいき、)、または単に回帰定理とは、アンリ・ポアンカレ(H.Poincaré,1854-1912)により証明された力学系の定理である〔『岩波理化学辞典-第5版』(1998)〕。ポアンカレの再帰定理〔山本、中村 (1998)〕〔『物理学辞典-改訂版』培風館(1992/05)〕〔『現代物理数学ハンドブック』(2005)〕とも呼ばれる。力学系のある状態を出発点としたときに、その時間発展は出発点といくらでも近い状態に無限回戻ってくることを主張する。ポアンカレは天体力学の三体問題の研究の中でこの定理に至り、1890年に発表した〔H. Poincaré, "Sur le probléme des trois corps et les équations de la dynamique," ''Acta Mathematica'', 13, 1890, 1-270. 〕〔藤原、兵頭 (1995) 11章 〕。 ==概要== 解析力学では力学系のひとつの状態は相空間(例えば質点の位置と運動量を座標とする空間)上の点で表され、その点の近傍はその状態に近い状態の集まりを表し、回帰定理はこの相空間上の力学系に関する定理である。簡単には、「力学系は、ある種の条件が満たされれば、その任意の初期状態に有限時間内にほぼ回帰する」、「ほとんどすべての軌道が出発点の任意の近傍に無限回もどってくる」、「与えられた初期条件に、いくらでも近づき、かつそれを何回でも繰返すことができる」と表現される。 ここである条件、つまり回帰定理の成り立つ条件とは、広く一般的にいえば力学系が保測的(相空間内の点集合の体積が保存されること)で、その軌道が有限領域に限られていることである。例えばニュートン力学の成り立つ系で等エネルギー面を動く軌道(エネルギーが保存される状態の軌道)では回帰定理が成り立つ。つまり通常現実的に考え得るエネルギーの出入りのない系では回帰定理が成り立つと考えられる。 回帰定理が孤立系の現象の厳密な繰り返しを示したと解釈する人もいる〔ピーター・コヴニー;ロジャー・ハイフィールド『時間の矢、生命の矢』草思社(1995/03) p19,70〕。だがこの解釈には2つの意味での誤解がある。第一に、力学系は初期状態の近傍に戻るだけであり、初期状態そのものに戻るとは限らない。第二に、近傍に戻る時刻(時点)の分布は特別な場合を除けば不規則であり、一定の周期は持たない。ポアンカレが示したように多体問題の解の軌道はカオスになることが多く、その場合は運動が周期的繰り返しにはならないのである。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ポアンカレの回帰定理」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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