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『ライトジーンの遺産』(ライトジーンのいさん)は、神林長平によるSF小説。 1997年に朝日ソノラマから単行本で刊行。1999年にソノラマ文庫NEXTから上下巻で文庫化され、2003年、高河ゆんによる装丁イラストでソノラマ文庫から再刊行された。そして2008年、ハヤカワ文庫JAから遠藤浩輝による装丁イラストで刊行された。ハヤカワ文庫版には、1999年のソノラマ文庫版における著者の「あとがき」と、「ハヤカワ文庫版へのあとがき」が併録されている。 日本の『S-Fマガジン』誌が1998年3月号で発表した「ベストSF1997」国内部門の第1位に選ばれた。 == あらすじ == 菊月虹(コウ)は人造人間である。人類が臓器崩壊現象に脅かされたために巨大な支配力を持った人工臓器メーカー・ライトジーン社が、現象の原因究明のために作り出した。人類の命運を一企業に任せるのは危険だという判断のもとにライトジーン社は解体されたものの、その社名は街の名前として残り、各部門は別会社に分裂して今なお社会に影響力を持っている。ライトジーン社の遺児であるコウは、社会保障番号も持たない自由人として読書と飲酒を楽しむ日々を送っていたが、ライトジーン市警中央署第四課の課長である申大為からスイーパーとしても扱われていた。コウは超能力者"サイファ"だったからだ。サイファとしての力を持つ者は少なくないが、ライトジーン社の人造人間、コウとその兄であるMJの二人は最強のサイファだった。 コウは第四課の新米刑事タイス・ヴィーと共に、人工臓器の関わる怪事件を解決していく。 ;アルカの腕 ALCA's arm :アルカ社で作られていた生体部品が、自我に目覚めて逃げ出した。七人の犠牲者を出したその怪物が、元はアルカ社の製造物であることを証明するため、コウとタイス・ヴィー刑事はその細胞サンプルを求め、怪物を追って下水道へ。一方アルカ社は、協力関係にあるバトルウッド社のトラブルシューター・MJを差し向け、秘密裏に怪物を始末することを目論む。 ;バトルウッドの心臓 BATTOLEWOOD's heart :路上で開かれる賭け試合のファイター、デル・シャンティ。人工臓器を一切使っておらず、コウが思わず見とれるほどに鍛えられた肉体の持ち主。彼の心臓に何かを感じたコウだったが、気のせいかもしれないと深く考えずにいた。その後、メジャーデビューを果たして人気ファイターになったデルが、人工心臓メーカー・バトルウッド社と共に何らかの違法行為を行ったという情報が入り、申大為はコウとタイスに捜査を命じる。 ;セシルの眼 CECIL's eyes :かねてより読みたいと思っていた稀覯本を古書店で見つけたコウは、その本を注文主に配達するという条件で立ち読みを許される。約束通り注文主の家を訪れると、中からは死臭が漂っており、サイファ能力が老婆の死体イメージを感じ取った。しかしその家に暮らす女性、ヴィクトリアはそのような心当たりがないと言い、その言葉もまたサイファ能力により真実であることがわかった。家に立ち入ったコウはある部屋で老婆の腐乱死体を見つけるが、ヴィクトリアにはその部屋の入り口がただの壁にしか見えていなかった。彼女の人工眼に原因があると考えたコウは第四課に連絡を取る。 ;ダーマキスの皮膚 DERMAKISS's skin :博物館で人工臓器の歴史展が開かれることになった。今の人工臓器があるのはライトジーン社が遺した技術力のおかげであり、展示内容には人工臓器技術の研究材料であった人造人間についての情報も含まれる可能性がある。コウは自分のプライバシーを守るため、改装工事に携わる日雇い労働者として博物館へ潜り込む。 :悪夢にうなされたコウは首に引っかき傷を作ってしまい、同じく博物館に出入りしていたMJも悪夢を見て首に引っかき傷を作った。その夢に脅威を感じた二人は、サイファによる攻撃ではないかと推測し、協力して相手の正体と真意を探ろうとする。翌日、第四課へ連行されたコウは、扼殺事件の被害者の爪に残っていた皮膚片が、自分のデータと一致したことを知らされる。人工皮膚メーカーに勤務していた被害者が、ライトジーン社の遺産データを研究する立場にあったこともあり、申大為とタイスは、ライトジーン社の技術で造り出されて同じ皮膚を持っているコウとMJのどちらか、あるいは両方の関与を疑っていたのだ。しかし悪夢の件を聞いた申大為は、遺産データから合成された人工皮膚を移植された者こそ殺人犯であり、その皮膚によりサイファ能力が発現したのではないか、という推測を立てる。 ;エグザントスの骨 XANTHOS's bones :コウの元を訪れたエグザントス社のコーディネーター・セタニは、「最強のサイファ」へ殺人を依頼する。相手は殺人罪で臓器ボランティア永久刑の判決を受け、その身を人工骨の実験材料として提供した男、ウンドウ。彼はその実験過程で死亡したが、すぐさま蘇ってしまい、以来、死亡しては蘇ることを繰り返しており、骨格だけの状態からさえ復活するのだという。ウンドウは生きることに苦痛を感じ、もはや死に安息を求めているが、本人の意思に反して不死が続いているのだった。興味を抱いたコウはウンドウ自身との対話を試みる。 ;ヤーンの声 YARN's voice :音楽を聴きたくなりライブ演奏の情報を調べてはみたものの、ジャンルが多すぎて目処のつけようがない。タイスに相談を持ちかけたコウは、彼の知り合いであるミュージシャン・エフィのライブに誘われる。彼の歌声をすっかり気に入り、打ち上げにも参加したところ、エフィの声帯がかつて臓器崩壊を起こして、いまはヤーン社の人工声帯に取り替えていることを知らされるが、人工声帯とは思えないその歌声にコウは驚く。 ;ザインの卵 ZINE's eggs :体調を崩したコウとMJ。人造人間である自分たちが同時に同じ状態に陥ったことで、二人は何者かが自分たちへ攻撃してきたのだと考えるが、正体を探り当てる前に意識を失ってしまう。研究所の一室に閉じ込められた状態で目覚めたコウは、自分がサイファ能力を失ってしまったことに気づく。現れた女性サイファ・ケィティはコウを実験動物として扱い、やがて二十四時間後にコウを殺害すると予告し、カウントダウンをスタートさせた。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ライトジーンの遺産」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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