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ルネ・ゲノン : ウィキペディア日本語版
ルネ・ゲノン

ルネ・ジャン・マリー・ジョゼフ・ゲノン(René Jean Marie Joseph Guénon, 1886年11月15日 - 1951年1月7日)
(あるいはシェイク・アブダル・ワヒド・ヤハヤ)は、フランスの著作家、また形而上学の分野で現在も依然としてその影響力を発揮し続けている知識人である。形而上学から「聖なる科学」や伝統的な学問、さらには象徴やイニシエーション(秘儀伝授)まで様々な対象に関する文章を残している。
その著作の中でゲノンが提案しているのは、「東洋の形而上学の教義の諸様相を直接的に説明すること」(この教義を彼は「普遍的性格」のものだとしている)、あるいは「この教義の本質に厳格に忠実であり続けながら、教義そのものを西洋の読者のために適用すること」であった。ゲノンは、この東洋の教義の持つ「非個人的性質」について繰り返し述べつつ、これらの教義を「伝達する」行為を支持したのみである。ゲノンの著作はフランス語で書かれ出版された。その著作は20以上の言語にすでに翻訳されている。
== 生涯 ==
1886年にブロワに生まれる。若い頃に「グノーシス教会」などの数々のオカルティズムのグループと交流を持っていたが、後にオカルティズムを断罪した〔ノエル・モーリス・ドニ・ブレの証言によれば、ゲノンは「単にそれらを破壊する目的で」グノーシス教会に加わった、と彼女に語ったという。La pensée catholique : cahiers de synthèse n°77, 1962〕。1916年、ソルボンヌで哲学修士号を得た後、教職に就いていたが、職を離れて、1921年に最初の著作『ヒンドゥー教義研究のための一般的序説』を発表した。その後、ブラヴァツキーらの神智学心霊術について批判的な著作を発表した(『神智主義:ある疑似宗教の歴史』『心霊術の誤り』)。ゲノンはこれらの運動を物質主義的な観点から出てきた擬似的な精神主義であるとみなしていた。
1924年に近代西洋文明を正常な伝統的精神からの逸脱として批判する著作『東洋と西洋』を出版した。1925年にはシャンカラ学派の不二一元論を諸伝統教義との一致を示しつつ解説した『ヴェーダーンタによる人間とその生成』、キリスト教的秘教に関する研究『ダンテのエゾテリスム』を出版。また同年からゲノンは、ポール・シャコルナック〔シャコルナックはゲノンの伝記を書いている。Paul Chacornac,La Vie simple de René Guénon, Éditions traditionnelles, Paris,1957.〕編集の雑誌『イシスのヴェール』の共同編集者になった。(1935年以後この雑誌は『伝統研究』と改題された。)ゲノンは数多くの論考・書評を『伝統研究』で発表した。
1920年代にゲノンはジャック・マリタンなどの数多くのフランス知識人に知られるようになり〔David Bisson,René Guénon : Une politique de l'esprit, Pierre-Guillaume de Roux Editions,2013〕、1926年にはソルボンヌにおいて講演を行っている。(1939年に『東洋の形而上学』として出版。)
1927年には象徴論『世界の王』、物質主義的な近代文明を批判するとともに伝統的文明の骨子を明示した『現代世界の危機』を出版。地球環境の危機を警告し、精神的諸伝統の一致と大同団結を訴えた。1929年の著作『精神的権威と世俗権力』では近代の逸脱の起源を1314年のテンプル騎士団の崩壊に求めた。同年、『聖ベルナール』を出版。
1930年、スーフィズムの文書を収集し翻訳を出版する目的でゲノンはカイロを訪れる。この計画は出版社側の事情により頓挫したが、ゲノンはフランスへは戻らなかった。日々窮乏する経済状態にもかかわらず、世界中の多くの国々の友人達と熱心に文通し、著作活動も続けた。シャージリー教団に参入してスーフィーとして修行し、質素な生活を送った。1931年の著作『十字架の象徴学』『存在者の多様な状態』では諸伝統教義の核である純粋形而上学を解明した。1934年にはシャイフ・モハンマド・イブラヒムの娘ファトマと結婚した。
1945年に『現代世界の危機』の続編である『量の支配と時の徴』を発表。同書は、プラトンアリストテレストマス・アクィナス、デカルト、ライプニッツ、カント、ベルクソンに至る西洋哲学、スーフィズム、道教カバラーヘルメス主義に論及する黙示録的著作であり、ゲノンの最高傑作と評価されている。1946年に微積分を利用して純粋形而上学を解説した『微積分学の原理』、主として道教とヘルメス主義を解説した『大いなる三幅対』、『イニシエーションに関する考察』を出版。
1951年1月7日、カイロの自宅で死亡。臨終の言葉は「アッラー」であったと伝えられる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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