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レナード=ジョーンズ・ポテンシャル()〔Gordon M. Barrow (著), 大門 寛 (翻訳), 堂免 一成 (翻訳),”バーロー物理化学〈上〉”東京化学同人; 第6版版 (1999/03)〕〔キッテル(著)、宇野 良清 、他(翻訳),“固体物理学入門 第8版”, 丸善,2005.12(ISBN 4621076531)〕とは、2つの原子間の相互作用ポテンシャルエネルギーを表す経験的なモデルの一つである。ポテンシャル曲線を表す式が簡単で扱いやすいので、分子動力学計算など、様々な分野において使われる。その名はレナード=ジョーンズにちなむ。 レナード=ジョーンズ・ポテンシャルは、実際のポテンシャル曲線を表現するための簡便な手法であり、少数のパラメータを用いたフィッティングに相当するため厳密ではない。しかし、問題の種類によっては、この方法で十分な場合がかなり多い。レナード=ジョーンズ・ポテンシャルに用いるパラメータは、実験的に求められた第二ビリアル係数、粘性係数、熱伝導率などから、推定することができる。他の原子間の相互作用のモデルポテンシャルとしては、(Morse potential)等が挙げられる。 ==レナード=ジョーンズ・ポテンシャルの数式による表記== レナード=ジョーンズ・ポテンシャル の一般形は、次の式であらわされる。 : (1) ここで、は原子間距離(核間距離)である。,は、フィッティングパラメータ(物理学的な意味は後述)で、これと、次数p,qを定めることによってレナード=ジョーンズ・ポテンシャルが一意に決まる。 特に引力項の次数''q'' = 6、斥力項の次数''p'' = 12とした : (2) を、(6,12)ポテンシャルという。(6,12)ポテンシャルは、レナード=ジョーンズ・ポテンシャルの代表例である。以降、(6,12)ポテンシャルのことを、レナード=ジョーンズ・ポテンシャルとして説明する。のように簡単な形で書かれることもある。 ここで、−6乗の引力項は、二つの原子の間の分散力、すなわち双極子-双極子間の相互作用によるものである。原子の永久双極子がゼロであっても、短時間をとった場合は電荷分布の揺らぎによる双極子が現れる。この双極子の電場により、もう一方の原子が分極し、誘起双極子が生じる。この相互作用ポテンシャルは原子間距離の-6乗に比例したものとなる。 一方、−12乗の斥力項は、電子雲の重なりによって反発力が働くためである。指数の−12は、−6乗のちょうど2乗で扱いやすいために選ばれることが多い。反発力の主な機構は、パウリの排他律によって、低いエネルギーの分子軌道に電子が入れないためである。 (1),(2)式より、は距離の次元を持ち、のときポテンシャルエネルギーがゼロになることがわかる。これより粒子間距離が小さい領域は−12乗の強い斥力に支配され、これ以上接近することが稀であることから、を衝突直径と呼ぶことがある。また(1)式から、はエネルギーの次元を持ち、ポテンシャルの深さを表している。この2つのフィッティングパラメータ,によって、レナード-ジョーンズ・ポテンシャルが一意に決まる。 これらのパラメータは粒子-粒子間の相互作用であるため、厳密には特定の物質が持つ物性ではない。理想的には全ての粒子種の組み合わせ(100を越える原子についてはおよそ5000組、ユナイテッドアトム・モデルまで拡張するとさらに増える)について、その全てが実験的事実から検討されることが望ましいが、現実的ではない。そのため、同種の粒子間力に関するパラメータを実験的に得て、ローレンツ-ベルテロ則を用いるなどして異種粒子間のパラメータを推算することが一般となっている。 ここで、原子の相対運動において角運動量がない(回転による遠心力がない)とした場合の、平衡原子間距離について考察する。(2)式を原子間距離で微分すると、原子間に働く力が得られる(斥力を正とした)。 : (3) (4)式で与えられる平衡原子間距離においては、となるため、(3)式を用いると以下の関係が成立する。 : (4) また、(2)式をで二階微分して、を代入すれば正値になるため、ポテンシャルエネルギーはにおいて極小値をとり、安定点であることが確認できる。物質の格子定数は、このとよく一致する。 次に、が、ポテンシャルエネルギーの深さであることを示す。(2)式のに(4)式を代入すると、次のようになる。 : (5) したがって、2原子間の距離がのとき、(5)式はとなる。つまり、の解離極限では、であることを用い、零点振動を無視すれば、は2つの原子間の結合エネルギー(解離エネルギー)に相当することがわかる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「レナード-ジョーンズ・ポテンシャル」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Lennard-Jones potential 」があります。 スポンサード リンク
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