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人身攻撃(ラテン語: ad hominem、argumentum ad hominem)とは、ある論証や事実の主張に対する応答として、その主張自体に具体的に反論するのではなく、それを主張した人の個性や信念を攻撃すること、またそのような論法。論点をすりかえる作用をもたらす。人格攻撃論法ともいわれる〔塩谷英一郎「言語学とクリティカル・シンキング-誤謬論を中心に」帝京大学総合教育センター論集,Vol.3(2011年度)〕。 「対人論証; ''ad hominem abusive''」と呼ばれるものは、提案者の信用を失わせる目的で個人攻撃を行う場合を指す。また、「状況対人論証; ''ad hominem circumstantial''」と呼ばれるものは、提案者の置かれている状況について攻撃するもの、「お前だって論法; ''ad hominem tu quoque''」と呼ばれるものは、論証の提案者自身がその論証で非難されているような行動や振る舞いをしていると攻撃するものである。 人身攻撃は、論理的には論証の前提の真偽はそれを述べている人とは独立しているので、演繹的には妥当ではない。しかし、人身攻撃は三段論法的に述べられることは滅多に無く、その評価は非形式論理の領域と証拠の理論で行われるべきものである。証拠の信頼性は、目撃証言や専門家の証言などにおける証人の信頼性の評価に大きく依存する。例えば、目撃者が嘘をつく動機を持っているから信頼できないとか、専門家が実際にはその分野について深い知識を有さないといった反論は、法廷では大きな役割を果たすことがある。 人身攻撃は、権威に訴える論証の逆である。権威に訴える論証では、論証者の権威、知識、地位などがその論証の真偽の基礎となる。人身攻撃は逆に、論証者が主張する権威/知識/地位を持っていないことを攻撃したり、論証者が過去に同様な誤りを犯したことに注目させる。しかし、それが無謬の反論とはならない。 == 形式的誤謬としての人身攻撃 == 人身攻撃が誤謬である場合、次のような基本的形式を持つ。 : A という人が X と主張する : A について何らかの疑惑/問題/いかがわしい点がある : 従って、X という主張は偽である 例えば、次のような例がある。 : ナチス・ドイツは優生学を利用していた : ナチスは悪い集団である : したがって、優生学は悪い考え方である 人身攻撃は、論理学や批判的思考でよく取り上げられる誤謬である(ナチスと優生学の例は正しいように思えるかもしれないが、「ジョージ・ワシントンは奴隷を所有していた」「ワシントンは偉大な人物だ」「よって奴隷制度は正しい」という主張と論理的に同一のものである)。この誤謬やそれに基づいた告発は、実際の会話でよく見られる。人間の脳がパターンを認識する性質のため、修辞学の技法としては強力である。逆に主張を行う人のポジティブな面に基づいた論証を権威に訴える論証と呼ぶ。 議論において、最初の前提は「事実の主張」と呼ばれ、議論の軸となることが多い。論点は「推論上の主張」と呼ばれ、何らかの推論過程で表される。推論上の主張には、明示的なものと暗黙的なものがある。前提を全て真と見なしたとしても、それによって結論が真であることを保証できないため、この誤謬の推論形式は妥当ではない。これには、具体的に述べられていない前提に基づいた論証でも同じである。 例えば、次のような形式である。 : A という人が X と主張する : A について何らかの疑惑/問題/いかがわしい点がある : (A が主張することはいつも間違っている) : 従って、X という主張は偽である ここで明示的に述べられていない前提「A が主張することはいつも間違っている」が追加されている。この一文が真であるなら、この論証は妥当となる。しかし、人身攻撃では具体的に述べられない前提は偽であることが多く、単に誤謬を補強しているに過ぎない。たとえば、 : ジョージ・ワシントンは奴隷を所有していた : ワシントンは偉大な人物だ : したがって、奴隷制は正しい という例における「偉大なワシントンが行ったことはすべて正しい」という明示的に述べられていない前提は、明らかに偽である。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「人身攻撃」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Ad hominem 」があります。 スポンサード リンク
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