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典座(てんぞ)は禅宗寺院の役職の一つ。禅宗寺院で修行僧の食事、仏や祖師への供膳を司る。六知事(ろくちじ)の第五位。 一般に炊事係は「飯炊き」「権助」などと呼ばれ、新米の役回りとされたり、低く見られがちである。しかし食事の調理、喫飯も重要な修行とする禅宗では、曹洞宗の開祖道元が求法のため宋で修行した際、二人の老典座との出会いから禅修行の本質に覚醒した故事から特に尊重され、重要な役職とされる。 == 故事 == 道元が『典座教訓』に記した体験は、以下のようなものである。 「宋の天童寺に留学中だった私(道元)はある夏の日、中庭で寺の老典座が海草を干しているのを見た。老人は眉は白く腰は曲がっていたが、炎天下に竹の杖をつき、汗だくになり苦しそうに働いていた。私は気の毒に思って近づき、年齢を聞くと老人は『68歳だ』と答えた。 『なぜ、下働きの者にやらせないのですか』 老人は答えた。『他の者とやらは、私自身ではない』 『なぜ、今のような炎天の日中にされるのです』 老人は答えた。『一体、いつを待てと言うのか』 私はその場を離れた。そして廊下を歩きながら、典座職の重要さを考えたのであった」〔 *道元『典座教訓・赴粥飯法』 講談社学術文庫 P69〕 「また私が上陸許可を待って港の船の中にいた時、ある老僧が食材の買入れに港にやってきた。船室に招いて茶を勧め、話を聞くと『私は、阿育王寺の典座である。故郷を出て四十年、歳も六十を越えたが、これからまた20キロほど歩いて、食事の用意に寺まで帰らねばならぬ』 『飯の用意など誰かがやるでしょう。何か差し上げますので、ゆっくりしていかれては』 『それは駄目だ。外泊許可を貰っていないし、典座は老人にもできる修行、他人には譲れぬ』 私は聞いた。『あなたほどのお年なのに、なぜ忙しく働いてばかりいて、坐禅したり先人の教えを学ばないのですか。それでいったい何のいいことがありましょう』 老僧は笑って言った。『外国からきた貴僧は、どうやら何もわかっていないようだ』私はこれを聞き、大いに驚き、また恥じた。 そして老人は「もう日も暮れた。行かねばならぬ」と立ち上がり、寺へと帰っていった。 私が多少とも修行のことを知るようになったのは、実にこの老典座の恩によるのである」〔 *同上 P76〕 道元は日本に帰国してより建仁寺に留まったが、建仁寺の典座が食事の用意を軽く考え、職務を適当に行っていることを見、宋との落差を非常に遺憾とした。そして『典座教訓』を執筆し、典座職の重要性と、その職務要領を詳細に書き残した。 現在の道場の典座職には、修行経験が深く篤実温厚な人物が任命される場合が多く、修行僧たちの相談役として敬慕される者が多いという。 == 出典 == 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「典座」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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