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形天(けいてん)は古代中国の神乃至英雄。 「形」字を変えた刑天や邢天の他、「天」字を「夭」とする形夭、刑夭、邢夭といった表記(この場合は「けいよう」)もある。 __NOTOC__ 『山海経』に拠れば、帝(恐らくは黄帝〔袁珂「山海經海經新釋」巻2形天条(『山海經校注』上海古籍出版社、1980年)、同『中国の神話伝説 上』(鈴木博訳)黄炎篇第7章、青土社、1993年。〕)と中原から遠く離れた西南方に位置する常羊(じょうよう)の山〔大荒西経。〕近くで神の座(恐らくは天帝の座〔袁前掲両書。〕)を掛けて争い、敗れて首級を常羊山に埋められるが、なおも両乳を目に臍を口に変え、干(かん。盾)と戚(せき。斧)とを手にして闘志剥き出しの舞を舞い続けたという〔海外西経。〕。なお、後漢は『淮南子』墬形訓に注して、天神が手を断った後に天帝が首を断ったとするが〔『淮南鴻烈解』巻4。〕、手を断たれたなら干戚を手にする事も出来ないのでこれは誤伝であろう〔袁珂『中国神話・伝説大事典』「形残の尸」項。〕。 形天の首が埋められた常羊山は神農(炎帝)の生地との説があり〔清馬国翰『玉函山房輯佚書』巻57所引『春秋緯元命苞』。〕、また炎帝神農氏の命で「扶犂(ふり)の楽」という曲と「豊年(ほうねん)の詠」という詩から成る「下謀(かぼう)」を作ったと伝えられる〔宋羅泌『路史』巻12後紀3炎帝紀。ここでは「邢夭」に作っている。なお、扶犂の楽は伏羲が作ったという扶徠歌(鳳来歌)に由来するという(同書巻10後紀1太昊紀上)。〕事から形天は神農の臣下であって、一方で常羊山の北方には数箇国を隔てるものの黄帝の末裔の住む軒轅(けんえん)の国があったというので〔前掲海外西経。〕、形天の闘争は炎帝と黄帝との闘争の一齣乃至余波であり常羊山から軒轅国に至る一帯で行われたものであったと考えられる〔袁前掲「山海經海經新釋」及び『中国の神話伝説』。〕。 劉宋の陶淵明は「読山海経」と題する連作五言詩の第10首でこの故事を題材に「刑天干戚を舞はし、猛志固(もと)より常に在り(刑天舞干戚、猛志固常在)」と詠み讃えたように〔但し「刑天舞干戚」の句は、「形夭無千歳」とあったものを宋曾紘が意が通らないと校訂したもので(清陶澍『靖節先生集』巻之四)、その校訂には宋周必大に依る批判もある(『二老堂詩話』)。〕、後世には敗北してもなお屈しない精神の象徴とされている〔袁前掲「山海經海經新釋」及び『中国の神話伝説』。〕。 なお、先秦時代の『楚辞』「九歌 国殤」に形天の故事に通じる精神が詠われ〔松岡正子「形天 - 『山海經』における「尸」と「舞」について」『中國詩文論叢』2、中國詩文硏究會、1983年。 形天を連想させる句は「国殤」の末に以下のように詠われる。 〕、また、夏殷革命の際に湯王に誅せられて刎頸に処された夏の耕(こう)が首の無いまま立ち続けたという似た説話も伝えられている〔『山海経』大荒西経。なお、夏耕は桀王の事と見る説がある(『抱朴子 列仙伝・神仙伝 山海経』(中国古典文学大系第8巻)平凡社、昭和44年、の高馬三良解説。)。〕。 == 形天の舞 == 形天が干戚を手にして舞ったという舞は同じ『山海経』の中山経に見える「干儛(かんぶ)」(盾の舞)〔中山経次五経及び九経。〕に類するものと考えられるが、干儛が同経で「兵(武器)を用ひ以て禳(はら)ふ」ものと定義され〔前掲中山経次九経。〕晋郭璞注のように盾を執って行う祓除の祭儀であった〔矢島明希子「五蔵山経における舞」(伊藤清司著、慶應義塾大学古代中国研究会編『中国の神獣・悪鬼たち』(増補改訂版)補論2)、東方書店、2013年。〕のに対し、形天の舞は干儛の前身と思われる戦争に際して戦意高揚の為に戦闘集団が敵を屈服すべくその奉じる神に捧げた予祝儀礼としての武舞に起源するものと思われる〔松岡前掲論考。〕。一方で、先秦時代の中国には征服した俘虜の首を刎ね又は殺戮してその血を祭器に注ぐ「伐礼(ばつれい)」という祭儀があったので、これらの説話(或いは神話)はかつて中原の漢民族が西域異民族を征圧した際に行ったその伐礼が投影されたものである可能性もあり、或いは被征服側が戦前の予祝として行った武舞を敗戦後に却って征服者に服属儀礼として献る事が行われた、乃至は征服者が祝勝儀礼の場で被征服者の予祝武舞を演じた事があって、そうした儀礼の投影されたものであるとも考えられる〔松岡前掲論考。〕 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「形天」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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