翻訳と辞書
Words near each other
・ 勝ち星
・ 勝ち栗
・ 勝ち残り
・ 勝ち残り式トーナメント
・ 勝ち残り戦
・ 勝ち残る
・ 勝ち残るのは誰だ?!DJバトルロイヤル
・ 勝ち気
・ 勝ち点
・ 勝ち目
勝ち組
・ 勝ち誇る
・ 勝ち負け
・ 勝ち越し
・ 勝ち越す
・ 勝ち逃げ
・ 勝ち通す
・ 勝ち進む
・ 勝ち馬
・ 勝ち馬投票券


Dictionary Lists
翻訳と辞書 辞書検索 [ 開発暫定版 ]
スポンサード リンク

勝ち組 : ミニ英和和英辞書
勝ち組[かちぐみ]
=====================================
〔語彙分解〕的な部分一致の検索結果は以下の通りです。

勝ち : [かち]
 【名詞】 1. win 2. victory 
: [くみ]
 【名詞】 1. class 2. group 3. team 4. set 

勝ち組 : ウィキペディア日本語版
勝ち組[かちぐみ]

勝ち組(かちぐみ)とは、第二次世界大戦後、日系移民社会で「日本は戦争に勝った」と信じていた人々のこと。
ブラジルを主とした南米、およびハワイなどの日系人社会で、太平洋戦争終結後、「日本がブラジルやアメリカ合衆国などの連合国軍に勝った」と信じていた人々がいた〔国立国会図書館 ブラジル移民の100年 第6章 日系社会の分裂対立(1) (2009)〕。こうした信念を持ち、1945年のポツダム宣言受諾後にブラジルで流れた敗戦の知らせをデマとみなした人は「勝ち組」「戦勝派」「信念派」と呼ばれた。逆に「日本は負けた」と考えた人たちは「負け組」「敗希派」と呼ばれた〔。両者は対立し臣道連盟などの抗争に発展した〔諏訪三男 勝ち組,負け組抗争を通じたブラジル日本人移民の心性の変遷について--新しい精神の形成を求めて 早稲田大学大学院社会科学研究科社学研論集 (16), 63-73, 2010〕。この軋轢はおさまった〔岡安彦三郎 南米の視察より歸りて 金属表面技術Vol. 3 (1952) No. 3 P 87-91 〕が「日系人社会の負の記憶」となった〔仁平尊明丸山浩明編著:ブラジル日本移民――百年の軌跡―― 」 地理学評論 Series AVol. 83 (2010) No. 6 P 654-655 〕。
「戦勝」の思い込みの原因については、ブラジルでは1941年に日本語新聞が廃刊された後、連合国のプロパガンダを恐れてポルトガル語紙を信用せず、(日本のプロパガンダが含まれるにもかかわらず)日本の短波放送だけを情報源として頼ってしまっていたことがあげられる〔。
== ブラジル ==

終戦直後のブラジル日系移民社会では、日本が戦争に勝ったのか負けたのかを話題にすることは憚られている場合があったと伝えられており、勝ち組と負け組の対立は根強かった。1946年のサンパウロ新聞の正月号の社説には「日本戦勝の春」と題する社説が掲載された。他方、パウリスタ新聞は敗戦を伝えた。
ブラジルで「勝ち組」と呼ばれる人々が大量に生まれた原因はいくつか挙げられる。ブラジルでの日系1世らは現地のポルトガル語の読み書きができない人がほとんどで、日本語の読み書きすら十分にできない人も多く、日系人社会が現地で流通していているポルトガル語の新聞から全く情報を得ることができないような情報から隔絶した集団だったことや、戦時中「敵国人」として扱われていたための情報不足などが挙げられている。
移民たちは日本から事実上の国策として移民したが、過酷な状況と貧困状態の中で帰国を望むものは多く、「日本から捨てられた」と感じる移民もいた。もしも日本が負けたとなれば「日本は消失し、そもそも帰る祖国が無くなってしまう」と考える人も多かった。日本に帰国する運動を推進していた人の中には、日本の敗戦を知り自殺した人もいた。敗戦を認めることは自らの人生を否定することを意味していた〔NHK、BS1スペシャル「遠い祖国~ブラジル日系人構想の真実~」前編・後編 2014年8月15日および16日放送〕。
日本から遥か離れたブラジルで、移民のほとんど唯一の情報源は日本が短波で日本国外向けに放送していたラジオ・トウキョウだった。これらの放送が受信できたは短波ラジオは当時、大変高価であり普及していなかった。また、報じられた戦争報道というのが大本営発表による「日本有利」の戦況で、それをそのまま信じていた。そして戦後になって連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が放送を中止させたためにブラジル移民社会への情報の遮断が起こり、日系人の間で日本についての情報が不足した。また当時ブラジルではヴァルガス大統領の下に国粋主義政策がとられ、街頭でポルトガル語以外の外国語(日本語以外の言語も含め)会話が憚られた〔。
終戦から2ヵ月後の1945年10月3日、日本からはじめて敗戦を伝える公式文書が届いた。この終戦の伝達書は『詔勅』と題された縦書きの文書で、天皇による終戦の詔勅が書かれていた。それには「朕は帝国政府ヲシテ北米合衆国・大ブリテン国・支那...右諸国共同宣言ノ条項を受諾ス...」と書かれてあり、いわゆるポツダム宣言を受諾する旨が書かれてあった。その文書とは別に、文書に添えるかたちで「在伯同胞諸君」に始まり、10月4日の日付と、秘密結社興道社の指導者でバストス産業組合理事長だった退役陸軍大佐の脇山甚作ほか計7名の署名でしめくくる文書も作られた〔。
この文書は次第にサンパウロ州に散在する日系移民社会に配布されていった。当時日系移民の9割はサンパウロ市内ではなく、海岸からはるかに離れた西方の奥地の日本人集団地に暮らしていた。このサンパウロ州奥地に暮らしていた日系移民のほとんどが日本の勝利を絶対に信じており「勝ち組」と呼ばれる人々だった。彼らの多くが日本が負けるとは夢にも思っておらず、ただひたすらに「日本は勝つ」と考えていた。当時の「勝ち組」のひとりである中野文雄はNHKの取材に応じて「今から考えれば、一種の迷信を信じた、ということになるのだが、神国日本が戦いに負けるはずはない、と思った」と言い、絶対的な信仰状態だったと語った。サンパウロ州奥地の移民の多くが、この終戦伝達書を偽書だと見なした。移民の中でも成功して裕福でラジオを持っていたり新聞を読んでいたりする人が日本の負けを認め「負け組」になる傾向があり、移民の中の貧乏でラジオも買えず、教育程度が低く新聞も読めない多数派の人々が「勝ち組」になる傾向があった〔。
日本が敗れた事実を認める「負け組」の人々の中に、コチア産業組合の人々もあり、彼らは、日本は負けたという事実を移民に早く認識させるための「認識運動」を起こした〔。
「勝ち組」の人々と「負け組」の人々は激しく対立した。かたくなに「日本は勝っている」と信じる人々の中には臣道連盟に参加する人々もいた。その数2万人におよび、サンパウロ州の奥地まで支部が次々と設立され、63支部に及んだ。「勝ち組」の人々は、「認識運動」を行う人々の家の門や玄関に「国賊」と落書きする、商売の邪魔をする、脅迫状を投げ込む、などということまで始めた。脅迫状は例えば、次のような内容だった。
:「(相手の名前)... に忠告する。日本必勝の信念に帰れ。しからずんば天誅下らん〔。」
1946年には、ブラジルの勝ち組と負け組の間で大規模な抗争事件が起こり、死者も出た(参照:日系ブラジル人臣道連盟)。1946年3月7日にサンパウロ州北西部のバストス産業組合の理事、溝部幾太が暗殺されるという最初の暗殺事件が起き、犯人はバストゥスに住む「勝ち組」の青年だった。この溝部幾太の暗殺をきっかけとしてサンパウロ州全域で襲撃事件が多発し、「負け組」による報復も起きた〔。
敗戦伝達書に筆頭者として署名した脇山甚作も「勝ち組」に襲われた。脇山甚作は日本を勝利させ"大東亜共栄圏"に日本人を再移住させることを移民たちに説いてきた人物だった。脇山の家にはほとんどの移民が持っていなかったラジオがあったため、8月15日直後の玉音放送を聞いた。心情的には日本の負けを認めたくなかったものの、放送を聞いた以上事実として認めざるを得ず、ひどく落胆したものの、自身は移民のリーダーとして事実を移民たちに伝える責任があると考えた。サンパウロ州奥地の移民たちは、元軍人であり日本は絶対に勝つと移民たちを鼓舞してきたのにもかかわらず突然に「日本は敗れた」と言いだした脇山甚作のことを、敵国の側についた裏切り者だと見なした〔。
奥地から出てきた青年数人組が脇山の自宅をおとずれ「自決勧告書」なる「敵側が発するニセの文書に騙されそれに署名することは万死に値するから自殺しろ」という内容を主張する文書を渡し、ピストルで射殺した。犯人は自首し、殺人犯として逮捕され、投獄された〔。
「勝ち組」によって殺された人々は少なくとも15人にも及んだ。戦後数年を経て社会的に問題になる事件は次第に下火になっていったが、一部では騒ぎが十年近く続いた〔。
この対立を利用して、偽ニュース売り、偽土地売り、偽円売りなど、日本人が日本人をだます詐欺犯罪が続発し、DOPS(ブラジルの特高)の手入れを受ける事態にまで発展した。ブラジルでは1970年代初期まで、勝ち組と負け組の対立による後遺症が存在していた。
なお、高度経済成長期末の1973年にブラジルから日本に帰国した「勝ち組」の家族3組が「ほら見ろ、日本はこんなに豊かになっている、やっぱり日本は勝ったんだ。」といった趣旨の発言をしたという〔
〕。ただし、この当時にはすでに日本の敗戦とその後の復興が一般に知られており、このような発言は当時の日系移民社会でも時代錯誤と受け取られ、かえって話題になった。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「勝ち組」の詳細全文を読む




スポンサード リンク
翻訳と辞書 : 翻訳のためのインターネットリソース

Copyright(C) kotoba.ne.jp 1997-2016. All Rights Reserved.