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『地名字音転用例』(ちめいじおんてんようれい)は本居宣長晩年の著作。寛政12年(1800年)、名古屋本町通七丁目永楽家東四郎刊。古代の日本の地名は特に漢字音と読みの不一致が著しいが、『古事記』『万葉集』『六国史』『和名類聚抄』国郡部『延喜式神名帳』から諸例を抜き出し、法則を見出して分類例示したものである。 これらは主に和銅6年(713年)好字二字令周辺の政策によって諸国の地名が半ば強引に漢字2字で書き表された結果に由来する。 == 分類 == ()内に現代的理解を付した。 ; ウ韻のカ行への転用(/-ŋ/韻尾への母音付加) * ウ韻→ガ - 相模(さがむ)、相楽(さがらか)、香美(かゞみ)、伊香(いかゞ) * ウ韻→ギ - 愛宕(おたぎ)、宕野(たぎの)、余綾(よろぎ)、久良(くらぎ)、美嚢(みなぎ)、当麻(たぎま)、布当(ぬたぎ) * ウ韻→グ - 望多(うまぐた)、勇礼(いくれ)、香山(かぐやま) * ウ韻→ゴ - 伊香(いかご)、愛宕(あたご) ; ン韻のマ行への転用(/-m/韻への母音付加) * ン韻→マ - 伊参(いさま)、男信(なましな) * ン韻→ミ - 夷灊(いじみ)、安曇(あづみ)、美含(みぐみ)、玖潭(くたみ)、美談(みたみ)、志深(しゞみ)、印南(いなみ)、和蹔(わざみ)、旻楽(みみらく) * ン韻→メ - 南佐(なめさ) ; ン韻のナ行への通用(/-n/韻尾への母音付加) * ン韻→ナ - 信濃(しなの)、因幡(いなば)、員弁(ゐなべ)、引佐(いなさ)、雲梯(うなで)、男信(なましな) * ン韻→ニ - 丹波(たには)、乙訓(おとくに)、遠敷(をにふ)、養訓(やまくに)、難波(なには) * ン韻→ヌ - 讃岐(さぬき)、散吉(さぬき)、敏馬(みぬめ)、汶売(みぬめ)、珍(ちぬ) * ン韻→ネ - 雲飛(うねび) * ン韻→ノ - 信夫(しのぶ)、信太(しのだ)、民太(みのだ) ; ン韻のラ行への転用(/-n/韻尾を/r/として母音付加) * ン韻→ラ - 讃良(さらゝ) * ン韻→リ - 播磨(はりま)、平群(へぐり)、八信井(はしりゐ) * ン韻→ル - 駿河(するが)、群馬(くるま)、敦賀(つるが)、訓覇(くるへ)、訓覓(くるべき) ; 入声フ韻の同行への転用(/-p/韻尾への母音付加) * フ韻→ハ - 愛甲(あゆかは)、邑楽(おはらき)、雑太(さはだ)、伊雑(いざは)、蘇甲(そかは)、合志(かはし) * フ韻→ヒ - 揖保(いひほ)、姶羅(あひら)、給黎(きひれ)、邑代(いひしろ)、雑賀(さひか) * フ韻→ホ - 邑知(おほち)、邑久(おほく)、法吉(ほゝき) ; 入声ツ韻の同行への通用(/-t/韻尾への母音付加) * ツ韻→タ - 設楽(しだら)、達良(たゝら)、忽美(くたみ) * ツ韻→チ - 秩父(ちゝぶ) * ツ韻→テ - 伊達(いだて) * ツ韻→ト - 乙訓(おとくに)、葛餝(かとしか)、物理(もとろゐ)、佳質(かしと)、益必(やけひと) ; 入声キ韻の同行への通用(/-k/韻尾への母音付加) * キ韻→カ - 葛餝(かとしか)、色麻(しかま)、餝磨(しかま) ; 入声ク韻の同行への通用(同上) * ク韻→カ - 美作(みまさか)、相楽(さがらか)、安宿(あすかべ)、各務(かゞみ)、筑摩(つかま)、安積(あさか)、尺度(さかど)、覚志(かゞし)、託羅(たから)、博多(はかた)、伯太(はかた)、阿理莫(ありまか) * ク韻→キ - 益頭(やきづ)、邑楽(おはらき)、佐伯(さへき)、揖宿(いふすき)、筑湯(つきや)、信楽(しがらき) * ク韻→ケ - 益必(やけひと) ; イ韻のヤ行への通用(/-i/韻尾を半母音/j/としての母音付加) * イ韻→ヤ - 拝師(はやし)、拝慈(はやし)、拝志(はやし) * イ韻→ユ - 愛智(あゆち)、愛甲(あゆかは) ; ア行の同行への通用 * 英虞(あご)、英多(あいた)、英賀(あが)、愛智(えち)、愛宕(おたぎ)、邑楽(おはらき)、邑美(おふみ)、邑知(おほち)、邑久(おほく) ; カ行の同行への通用 * 菊池(くゝち)、菊麻(くゝま)、美含(みぐみ)、忽美(くたみ)、感口(こむく) ; サ行の同行への通用 * 設楽(しだら)、安宿(あすかべ)、宿久(すくゝ) ; タ行の同行への通用 * 筑紫(つくし)、綴喜(つゝき)、筑波(つくは)、安曇(あづみ)、筑摩(つかま)、敦賀(つるが)、筑摩(つくま)、託馬(つくま)、筑夫島(つくぶすま) ; ナ行の同行への通用 * 寧楽(なら) ; ハ行の同行への通用 * 阿拝(あへ)、安倍(あへ)、佐伯(さへき)、訓覇(くるべ)、覇多(?)、多配(たへ) ; マ行の同行への通用 * 相模(さがむ)、各務(かゞみ)、巻向(まきむく)、高向(こむく) ; ヤ行の同行への通用 * 塩冶(やむや)、勇礼(いくれ) ; ラ行の同行への通用 * 等力(とゞろき) ; 雑(くさ/\゛)の転用 * 伯耆(はゝき)、対馬(つしま)、鳳至(ふゝし)〔「希」を「布」に誤った当時の刊本の誤植で、正しくは「ふげし」。ウ韻→ゲに当たる。〕、大伯(おほく)、早良(さはら)、等力(とゞろき)、宇納(うなみ)、漆沼(しゝぬ)、物理(もとろゐ)、賀集(かしを)、志筑(しつな)、甲知(かくち)、考羅(かわら)、新益(にひき)、各羅(かわら)、任那(みまな) ; 韻(ひゞき)の音の字を添へたる例(前音節と同じ母音の付加) * 紀伊(き)、基肄(き)、渭伊(ゐ)、斐伊(ひ)、毘伊(ひ)、都宇(つ)、由宇(ゆ)、頴娃(え)、弟翳(せ)、宝飫(ほ)、囎唹(そ)、呼唹(を)、斗意(と)、覩唹(と)、都唹(と) ; 字を省ける例 * 武蔵□(むざし)、但□馬(たぢま)、美□作(みまさか)、安宿□(あすかべ)、丹□比(たぢひ)、安八□(あはちま)、登□米(とよめ)、知夫□(ちぶり)、英□太(あがた)〔英の韻尾/-ŋ/への母音付加であり、「ウ→ガ行」と同様の用法である。〕、挙□母(ころも)、都賀□(つがは)、養□訓(やまくに)、信□楽(しがらき) 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「地名字音転用例」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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