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解離性同一性障害(かいりせいどういつせいしょうがい、)は、解離性障害のひとつである。かつては多重人格障害()と呼ばれていた〔 この疾患名はアメリカ精神医学会・精神疾患の分類と診断の手引によるものである。かつては「多重人格障害」(MPD)と称したが、1994年、DSM-IVの出版と共に「解離性同一性障害」(DID)に改称した。その後の版、DSM-IV-TRにおいてもDIDである。本稿では年代にかかわらずDIDに統一する。〕。 解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害であるが、解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものである。 DSM‒5では、解離性同一症の診断名が併記される。 == 本論概要 == 「解離」には誰にでもある正常な範囲から、治療が必要な障害とみなされる段階までがある。 不幸に見舞われた人が目眩を起こし気を失ったりするが〔ジェフリー・スミス2005 p.310〕これは正常な範囲での「解離」である。 更に大きな精神的苦痛で、かつ子供のように心の耐性が低いとき、限界を超える苦痛や感情を体外離脱体験とか記憶喪失という形で切り離し、自分の心を守ろうとするが、それも人間の防衛本能であり日常的ではないが障害ではない。 解離は防衛的適応ともいわれるが〔一過性のものであれば、急性ストレス障害 (ASD) のように時間の経過とともに治まっていくこともある。この段階では急性ストレス障害と診断されない限り、「障害」とされることは少ない。 しかし防衛的適応も慢性的な場合は反作用や後遺症を伴い、複雑な症状を呈することがある。 障害となるのは次のような段階である。 状況が慢性的であるが故にその状態が恒常化し〔、子供の内か、思春期か、あるいは成人してから、何かのきっかけでバーストしてコントロール(自己統制権)を失い、別の形の苦痛を生じたり、社会生活上の支障まできたす。これが解離性障害である。 解離性同一性障害(以下DIDと略)はその中でもっとも重いものであり、切り離した自分の感情や記憶が裏で成長し、あたかもそれ自身がひとつの人格のようになって、一時的、あるいは長期間にわたって表に現れる状態である。しかしDIDの人の中には、長期にわたって「別人格」の存在「人格の交代」に気づかずいるものも多い。 深刻度はさまざまであり、中には治療を受けることも、特別に問題をおこすこともなく、無事に大学を卒業し、就職していくものもいる〔一丸藤太郎 「解離性同一性障害(多重人格)」 『精神科臨床リュミエール』 2009 pp.117-118〕。 しかし深刻な場合には、例えば「感情の調整」が破壊されることから更に二次的、三次的な派生効果が生まれ、衝動の統制、メタ認知的機能、自己感覚などへの打撃となり、そうした精神面の動きや行動が生物学的なものを変え〔パトナム1997 pp.370-371〕、それがまた精神面にも行動面にも跳ね返ってくるという負のスパイラルに陥る。 うつ症状、摂食障害、薬物乱用(アルコール依存症もこれに含まれる)〔松本俊彦 「解離性障害と鑑別すべき疾患」 『精神科臨床リュミエール』 2009 p.106〕、転換性障害を併発することがあり〔白波瀬丈一郎 「解離性障害と身体表現性障害および転換性障害」 『精神科臨床リュミエール』 2009 pp.148-150〕、そして不安障害(パニック障害)、アスペルガー障害、境界性パーソナリティ障害、統合失調症、てんかんによく似た症状をみせ〔柴山雅俊2007 p.140 他〕、リストカットのような自傷行為に止まらず、本当に自殺しようとすることが多い。 スピーゲル (Spiegel,D.) は、その深刻なケースを念頭においてだが、次のように述べている。 : 「この解離性障害に不可欠な精神機能障害は広く誤解されている。これはアイデンティティ、記憶、意識の統合に関するさまざまな見地の統合の失敗である。問題は複数の人格をもつということではなく、ひとつの人格すら持てないということなのだ。」〔 一般に多重人格といわれるが、ひとつの肉体に複数の人間(人格)が宿った訳ではない。 あたかも独立した人間(人格)のように見えても、それらはその人の「部分」である。 これを一般に交代人格と呼ぶが、そのそれぞれがみなその人(人格)の一部なのだという理解が重要といわれる。 それぞれの交代人格は、その人が生き延びる為に必要があって生まれてきたのであり、すべての交代人格は何らかの役割を引き受けている〔岡野憲一郎編2010 p.260〕〔。 治療はそれぞれの交代人格が受け持つ、不安、不信、憎悪その他の負の感情を和らげ、逆に安心感や信頼感そしてなによりも自信、つまり健康な人格を育て、交代人格間の記憶と感情を切り離している障壁〔を下げていくこととされる。 しかし交代人格は記憶と感情の水密区画化〔、切り離しであるため、表の人格にとっては健忘となり、先述の通り当人に自覚が無い場合も多い。自覚があっても治療者を警戒しているうちは交代人格は姿を現さない〔岡野憲一郎2011 p.151〕。また治療者が懐疑的であったりするとやはり出てこない〔「座談会-解離性障害によりよく対応するために」 『こころのりんしょう』 2009 p.266〕。逆の表現をすると「DID患者に一度出会うと、すぐ次のDID患者に出会う」〔一丸藤太郎 「解離性同一性障害(多重人格)」 『精神科臨床リュミエール』 2009 p.119〕。 DIDはそれを熟知した精神科医や臨床心理士が少ないこともあり、他の疾患に誤診されやすい。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「解離性同一性障害」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Dissociative identity disorder 」があります。 スポンサード リンク
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