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夢の散歩(ゆめのさんぽ)は、つげ義春が1972年に北冬書房『夜行』1号に発表した13頁からなる短編漫画作品。 == 解説 == 1966年頃から始まり1968年の『ほんやら洞のべんさん』までのいわゆる「旅もの」で完成度の高い作品群を生み出してきたつげが、その後、いきなり『ねじ式』(1968年)、『ゲンセンカン主人』(1968年)など、立て続けに人間の内面を掘り下げるようなシュールな作品を発表し物議をかもしたが、『やなぎや主人』(1970年)から2年間の休筆期間を置き1972年に発表したこの作品において、夢そのもののリアルさを描く手法を初めて示した。描線は柔らかくなり、絵柄も全体に白っぽくなっている。『ねじ式』も夢にヒントを得たものであったが、夢そのものを描いたものではなかった。 この作品の発表の5年後、夢をテーマにした作品である1977年の『アルバイト』を発表すると、突然思い出したかのように『コマツ岬の生活』(1978年)、『外のふくらみ』(1979年)、『必殺するめ固め』(1979年)、『ヨシボーの犯罪』(1979年)、『雨の中の欲情』(1981年)と夢そのものをリアルに描いた作品群を生み出すが、そのきっかけとなった作品である。 1976年8月には夫人の藤原マキが、子宮癌で手術を受けるなど精神面で大きなダメージを受け、不安神経症の治療を受けており、また、将来に不安を感じ、古本屋を始めるつもりで古本漫画を収集したり、中古カメラを収集していた時期にあたる。これら「夢もの」には、そうした時期の不安定な心理が作品に反映していたが、同じ「夢もの」でも1972年の『夢の散歩』には、それらの作品で見られることになる不安はまだ強調されず、むしろエロティックなファンタジーに満ち溢れている。が、同時にそこにはある種の空虚さも見られた。極端に簡素化された白飛びしたような絵と、そのことによって気だるいような真夏の昼下がりの雰囲気が強調されたこと、また台詞や登場人物の少なさ(主人公以外には母子と警察官のみ)に加え、顔が描かれているのは主人公の青年のみという特異さや、ストーリーの単純さは夢を題材にしているとはいえ、その後のつげ作品の行く末を暗示している趣がある。この作品ではエロティシズムや退廃、非現実への傾倒や逃避が見られるようになり、『夏の思いで』(1972年)や『懐かしい人』(1973年)、『夜が掴む』(1976年)などへと引き継がれる系譜を作る。これは『やなぎや主人』(1970年)にすでに萌芽が見られていたものであるが、作風的にはそのどれとも異なり異質である。 この作品に関して、つげ自身は『やなぎや主人』や『ねじ式』などのわけの分からない内面のことなどを考えるのが嫌になって「軽い調子でスコンと抜けたようなものを描きたいという気持ちになってきた」と語り、「事」だけのリアリティというものがあると思っており、夢と現実の微妙なところを描いたと述懐している。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「夢の散歩」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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