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アーベル圏 ''A'' の導来圏(どうらいけん、derived category) ''D''(''A'') はホモロジー代数から構成されるもので、''A'' 上に定義された導来函手の理論を精密化するとともに、ある意味で単純化するべく導入された。その構成は基本的には次の様に進む:まず圏 ''D''(''A'') の対象は ''A'' の鎖複体であり、次に2つのその様な鎖複体の間にチェーン写像が存在してホモロジーを取った段階で同型を誘導する場合に同型であると考えるのである。このとき、導来函手は鎖複体に対して定義され、(hypercohomology)の考えを精密化したものとなる。これらの定義により、煩雑な(spectral sequence)を用いて(完全に忠実ではなく)記述されるよりほか無かった式系に対する、劇的な簡素化が導かれる。 導来圏は、アレクサンドル・グロタンディーク(Alexander Grothendieck)と彼の学生の(Jean-Louis Verdier)により1960年代初頭に整備されると、ホモロジー代数が長足の進歩を遂げた十年である1950年代に於ける爆発的な展開の一つの到達点となった。ヴェルディエによる理論の基本的部分は博士論文に纏められ、ようやく1996年になってAstérisque(要約はずっと早くにSGA 4½に収録されていた)に出版された。その定式化には革新的な発想である(triangulated category)の概念が必要であり、その構成は環の局所化を一般化した(localization of a category)に基づく。"導来"形式の展開への原動力となった欲求は、グロタンディークの(coherent duality)の理論のなんらかの意味での定式化を行うことであった。導来圏は以後、代数幾何学以外の領域に於いてさえ、たとえば、D-加群や超局所解析(microlocal analysis)でも不可欠な概念となっている。さらに、近年は、ミラー対称性やD-ブレーンの定式化という物理学に近い領域でも、導来圏が重要な役割を果たすようになっている。 ==動機== 非特異スキームであるという前提のない連接層の理論で、セール双対の結果を通して出現する極限をとると、単純に双対化する層の部分に沿っての複体をとる必要が出てくる。事実、非特異性を弱めることとなるコーエン・マコーレー環の条件は、単純に双対化された層が存在することに対応する。しかし、これは、一般的議論であるとはとてもいえない。いつもそうであるが、高い位置からトップダウンでグロタンディークが想定していることを、再定式化することが非常に重要となる。(たとえば、)このことは、実テンソル積やHom函手が導来圏のレベルで存在するはずであるというアイデアもそうであり、Tor函手と Ext函手もこれを通してより計算し易い道具立てとなった。 抽象度が高いにもかかわらず、特に層コホモロジーの設定での利便性により、導来圏は続く10年で受け入れられるようになった。おそらく、1980年頃、導来圏のことばで 1 よりも大きな次元での(Riemann-Hilbert correspondence)の定式化が、最も大きな前進であっただろう。佐藤スクールでは、導来圏の言葉を使い、D-加群をこの言葉で表現した。 平行して発展した理論は、ホモトピー論での(spectra)の圏の理論である。スペクトルのホモトピーの圏と環の導来圏は、双方とも(triangulated categories)の例である。
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