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『少将滋幹の母』(しょうしょう しげもとの はは)は、谷崎潤一郎が昭和24年(1949年)11月から翌年3月まで『毎日新聞』に連載した王朝物の時代小説。昭和25年(1950年)毎日新聞社より単行本として出版された〔挿絵は小倉遊亀が担当している。〕。以後これまでに幾度となく舞台化やドラマ化がなされている。 == 解説 == 昌泰の頃、高齢の大納言藤原国経は、その美しい妻・北の方〔在原棟梁の娘、在原業平の孫にあたる。初め藤原国経の室となって藤原滋幹を生み、その後藤原時平の妻となって権中納言藤原敦忠を生んでいる。〕を、若輩の左大臣藤原時平に奪われる。本書は『今昔物語』が伝えるこの史実をもとにしている。 「少将滋幹の母」とはこの北の方のことで、「少将滋幹」とはその北の方が国経との間にもうけた一子・左近衛少将藤原滋幹のことである。物語は成長した滋幹が幼い頃に別れたきりになっていた母と再会するところで終わる。 しかし谷崎が描くのはこの滋幹ではない。焦点はむしろ北の方におかれ、その周囲で彼女に関わる地位や出自などが異なるさまざまな男たちを描いているのである。そして谷崎はこの北の方についても、彼女が類い稀なる美女であるということ以外に、その性格や様相などの描写をほとんど行っていない。ただただ絶世の美女であるということしか述べられていない北の方は、どこまでも空虚でつかみどころのない存在である。これが逆に周囲の男たちの言動の浅ましさを際立たせ、彼らの情や色や欲のみが次々と浮き彫りにされてゆくことを可能にしているのである。 そうした構図の中では、滋幹の母に対する飽くことなき思慕の念さえもがまるで愛欲の情念のように映ってしまう。その意味で滋幹の扱いは北の方をめぐる他の男たち — 彼女を奪った時平(しへい〔史実の藤原時平は「ときひら」と読むが、谷崎は本作に登場する時平を「しへい」と読ませている。物語の中で「時平」を「しへい」と呼ぶは歌舞伎の『菅原伝授手習鑑』や『天満宮菜種御供』(時平の七笑)でも同じで、ある種の伝統的決まりごとになっている。〕)、奪われた国経(くにつね)、そして彼女のかつての情人だった平中(へいちゅう)— と同等であり、彼もまた等しく脇役にまわっているのである。 谷崎は『今昔物語』の他にも『平中物語』『後撰集』『十訓抄』などから逸話を取り入れ物語に肉付けをしている。最後に滋幹が北の方と再会するくだりは、写本の一部が残るのみの遒古閣文庫所蔵「滋幹日記」によって描かれていることになっているが、これはその日記の存在自体が谷崎の創作によるものである。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「少将滋幹の母」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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