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『山の音』(やまのおと)は、川端康成の長編小説。戦後日本文学の最高峰と評され〔山本健吉「解説」()。山本健吉編『川端康成〈近代文学鑑賞講座13〉』(角川書店、1959年1月)〕、第7回(1954年度)野間文芸賞を受賞〔「解題」()〕。川端の作家的評価を決定づけた作品として位置づけられている〔中村光夫「川端康成」(文學界 1957年7月-9月号に連載)。『現代作家論』(新潮社、1958年10月)に所収。、、〕〔進藤純孝「第三部第四章 完成」()〕〔板垣信・福田清人「作品と解説 山の音」()〕。老いを自覚し、ふと耳にした「山の音」を死期の告知と怖れながら、息子の嫁に淡い恋情を抱く主人公の様々な夢想や心境、死者の夢を基調に、復員兵の息子の頽廃、出戻りの娘など、家族間の心理的葛藤を鎌倉の美しい自然や風物と共に描いた作品〔。繊細冷静に捕えられた複雑な諸相の中、敗戦の傷跡が色濃く残る時代を背景に〈日本古来の悲しみ〉〈あはれな日本の美しさ〉が表現されている〔〔〔佐伯彰一「家長の悲しみ―『山の音』―」(『日本を考える』)(新潮社、1966年)。、、〕〔〔越智治雄「『山の音』その一面」(國文學 1970年2月・第15巻3号に掲載)。、、〕。 『山の音』は海外でも評価が高く、2002年(平成14年)にはノルウェー・ブック・クラブ発表の「史上最高の文学100」に、近代日本の作品として唯一選出された。 == 発表経過 == 『山の音』は、『雪国』や『千羽鶴』同様に、最初から起承転結を持つ長編としての構想がまとめられていたわけではなく、1949年(昭和24年)から1954年(昭和29年)にかけ、以下のように複数の雑誌に断続的に各章が連作として書き継がれた〔。各章の題名は、自然の風物に託した川端の心象が込められているものが多い〔長谷川泉「山の音」()〕。 *1949年(昭和24年) *「山の音」 - 『改造文藝』9月号(第1巻第3号) *「日まはり」(のち「蝉の羽」) - 『群像』10月号・創作特輯号(第4巻第10号) *「雲の炎」 - 『新潮』10月号・秋季小説特輯号(第46巻第10号) *「栗の実」 - 『世界春秋』12月号(第1巻第2号) *1950年(昭和25年) *「女の家」(のち「栗の実」続き) - 『世界春秋』1月号(第2巻第1号) *「島の夢」 - 『改造』4月号(第31巻第4号) *「冬の桜」 - 『新潮』5月号(第47巻第5号) 以上、「冬の桜」までの7回分をまとめたものは、1952年(昭和27年)2月10日刊行の『千羽鶴』に収録され、1951年(昭和26年度)読売ベスト・スリーに選ばれ、1951年(昭和26年度)の芸術院賞を受賞した〔川端康成「あとがき」(『川端康成全集第15巻 千羽鶴・山の音』)(新潮社、1953年1月)。に所収。〕〔。 「冬の桜」の続きの第8回以降は、以下のように書き継がれた。 *1951年(昭和26年) *「朝の水」 - 『文學界』10月号(第5巻第10号) *1952年(昭和27年) *「夜の声」 - 『群像』3月号(第7巻第3号) *「春の鐘」 - 『別冊文藝春秋』6月号(第28号) *「鳥の家」 - 『新潮』10月号(第49巻第10号) *「傷の後」 - 『別冊文藝春秋』12月号(第31号) *1953年(昭和28年) *「都の苑」 - 『新潮』1月号(第50巻第1号)※ 刊行本では前回の「傷の後」より先の章になる。 *「雨の中」 - 『改造』4月号(第34巻第4号) *「蚊の夢」(のち「蚊の群」) - 『別冊文藝春秋』4月号(第33号) *「蛇の卵」 - 『別冊文藝春秋』10月号(第36号) *1954年(昭和29年) *「鳩の音」(のち「秋の魚」) - 『オール讀物』4月号(第9巻第4号) 以上、第1章「山の音」から「秋の魚」までの全16章(全17回分)を収録した限定版『山の音』は、1954年(昭和29年)4月20日に筑摩書房より刊行され、12月17日に第7回野間文芸賞を受賞した〔〔。同年6月25日には同社より普及版『山の音』が刊行された〔〔「著書目録」()〕。その後、1969年(昭和44年)8月25日に新潮社より刊行の『川端康成全集第8巻 千羽鶴・山の音』(全19巻本)に収録される際に若干の訂正が加えられ、それが最終決定版となった〔。 文庫版は、岩波文庫、旺文社文庫、角川文庫など刊行されたが、新潮文庫が最も重版している。翻訳版はエドワード・サイデンステッカー訳(英題:“The Sound of the Mountain”)をはじめ、世界各国で行われている〔「翻訳書目録」()〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「山の音」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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