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憂國 ( リダイレクト:憂国 ) : ウィキペディア日本語版 | 憂国[ゆうこく]
『憂国』(ゆうこく)は、三島由紀夫の短編小説。原題は旧漢字の『憂國』である。仲間から決起に誘われなかった新婚の中尉が、叛乱軍とされた仲間を逆に討伐せねばならなくなった立場に懊悩し、妻と共に心中する物語。三島の代表作の一つで、二・二六事件の外伝的作品である。1961年(昭和36年)1月の小説発表の4年後には、三島自身が監督・主演などを務めた映画も制作され、ツール国際短編映画祭劇映画部門第2位を受賞した。 大義に殉ずる者の至福と美を主題に、皇軍への忠義の元、死とエロティシズム、夥しい流血と痛苦をともなう割腹自殺が克明に描かれている〔三島由紀夫「二・二六事件と私」(『英霊の聲』)(河出書房新社、1966年)〕〔松本徹『三島由紀夫を読み解く(NHKシリーズ NHKカルチャーラジオ・文学の世界)』(NHK出版、2010年)〕。60年安保という時代背景と共に「精神と肉体、認識と行動の問題」をあらためて思考するようになっていた三島が、その反時代傾向を前面に露わにした転換的な作品である〔〔。 == 発表経過 == 1961年(昭和36年)1月、雑誌『小説中央公論』3号・冬季号に掲載され、同年1月30日に新潮社より刊行の短編集『スタア』に収録された〔なお、前年の1960年(昭和35年)10月、ギリシャ研究・同性愛の会「アドニス会」の機関紙『ADONIS』の別冊小説集「APOLLO(アポロ)」5集に、三島は榊山保名義で『愛の処刑』という切腹をモチーフにした劇画風の短編小説を投稿している。〕。のち1966年(昭和41年)6月に河出書房新社より刊行の『英霊の聲』にも、戯曲『十日の菊』と共に二・二六事件三部作として纏められた。なお、この刊行にあたって、「近衛輜重兵大隊」を「近衛歩兵第一聯隊」に改めた。〔この改訂は、当時の実状をよく知る加盟将校の一人からの助言からであったが、三島自身は武山中尉の境遇を「冷飯を喰はされてゐる地位」に置きたかったために、改訂には多少未練があったとしている。一般的に、旧日本軍においては、輜重兵(現在の後方支援部隊)は冷遇されており、同部隊への配属は左遷に等しい人事とみなされた。〕。文庫版は河出文庫と、 新潮文庫『花ざかりの森・憂国』で刊行されている。翻訳版はGeoffrey W. Sargent訳(英題:Patriotism)をはじめ、世界各国で行われている。 1965年(昭和40年)4月には、自身が製作・監督・主演・脚色・美術を務めた映画『憂國』が製作された。映画は翌年1966年(昭和41年)1月、ツール国際短編映画祭劇映画部門第2位となり、同年4月からなされた日本での一般公開も話題を呼びヒットした〔藤井浩明「映画『憂国』の歩んだ道」(『決定版 三島由紀夫全集別巻・映画「憂國」』ブックレット内)(新潮社、2006年)〕。また同時に映画の製作過程・写真などを収録した『憂國 映画版』も1966年4月10日に新潮社より刊行された。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「憂国」の詳細全文を読む
英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Patriotism (short story) 」があります。
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