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『押絵と旅する男』(おしえとたびするおとこ)は、江戸川乱歩の著した短編小説である。『新青年』1929年(昭和4年)6月号に掲載された。乱歩は自作の自己評価に厳しいことで有名だが、この作品に関しては「私の作品の中ではこれが一番無難かもしれぬ」と珍しく肯定的な言葉を残している。 == あらすじ == 魚津へ蜃気楼を観に行った帰りの汽車の中、二等車内には「私」ともう一人、古臭い紳士の格好をした60歳とも40歳ともつかぬ男しかいなかった。「私」はその男が、車窓に絵の額縁のようなものを立てかけているのを奇異な目で見ていた。夕暮れが迫ると、男はそれを風呂敷に包んで片付けた。目が合った。すると男のほうから「私」に近付いてきて、風呂敷の中身を見せてくれる。それは洋装の老人と振袖を着た美少女の押絵細工だった。背景の絵に比べその押絵のふたりが生きているようなので驚いてる「私」に「あなたなら分かってもらえそうだ」と男はさらに双眼鏡でそれを覗かせる。いよいよ生きているみたいに思えた押絵細工のふたりの「身の上話」を男は語り始める。 それは35,6年も前、男の兄が25歳のとき、浅草に「浅草12階」(凌雲閣)ができた頃の話。ふさぎがちになった男の兄が毎日、双眼鏡を持って出かけるので、あとをつけてみたら、男の兄は「浅草12階」に登って、双眼鏡を覗いていた。声をかけると男の兄は片思いの女性を覗いていたことを白状する。しかしその女性のいるところへふたりで行ってみると、その女性は押絵だった。すると男の兄はその双眼鏡をさかさまに覗いて自分を見ろという。男がそうすると兄は双眼鏡の中で小さくなり消えてしまった。どうしたのかと思うと男の兄は小さくなってその女性の横で同じ押絵になっていたのだった。 以来、男は、ずっと押絵の中も退屈だろうからと、「兄夫婦」をこうしていろんなところへの旅に連れて行っているのだという。ただ押絵の女性は歳をとらないが、兄だけが押絵の中で歳をとっているのだという。男が兄たちもこのような話をして恥ずかしがっているのでもう休ませますと、風呂敷の中に包み込もうとしたとき、気のせいか押絵のふたりが「私」に挨拶の笑みを送ったように見える。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「押絵と旅する男」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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