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車体傾斜式車両(しゃたいけいしゃしきしゃりょう、tilting rail car)とは、曲線通過時に車体を傾斜させることで、通過速度の向上と乗り心地の改善を図った鉄道車両である。車体傾斜車両とも呼ばれる。 車体傾斜の方法としては、自然振り子式、強制車体傾斜式、空気ばねによる車体傾斜など、複数のシステムが存在している〔『鉄道のテクノロジー』Vol.4、p.27〕。 == 概要 == 曲線通過時に車両にかかる遠心力を打ち消すため、曲線部分の線路には内側に向けた傾斜(カント)が設けられている〔『世界の高速鉄道』、p.287〕。それでも速度が高すぎると乗客が遠心力を感じるために乗り心地を悪化させたり、さらには車両の転覆につながる。そこで、曲線通過時に車両の水平方向にかかる加速度が規定量〔日本国有鉄道の場合、許容される遠心力を0.08G(地表方向の重力の約1/12)以下と規定していた。この数値は、テーブルの上のコップが横に動くか動かないかという程度の遠心力の強さである。なお在来線の本則曲線通過速度はこれの半分に当たる0.04Gを基準に算出されている。〕を超過しないよう、曲率半径とカント量に応じて制限速度が設けられている。 列車の最高速度が低かった時代はあまり問題とされなかった曲線区間の制限速度であるが、電車や気動車となり最高速度が向上するとスピードアップのための障害となった。より高速で曲線を走行しようとする場合、増加する遠心力への対策が必要になる。転覆の危険については、カントの傾斜角を増やすことにより遠心力を車両の垂直方向に振り向け、水平方向にかかる加速度を減らす事で低減できる。同時に車両の内装や屋根上を軽くするなどして車重を減らし、重心を下げることでも転倒の危険は低減される。しかし、列車が曲線で停止した時に車体が傾きすぎないようカント量には限度が設けられている。特に曲率半径が小さい場合、カント不足となりやすい。 従って、車両(十分に重心が低い車両)によっては「転覆の危険なく通過できる」が「乗り心地の問題」によって曲線通過速度が制限されると言う事態が想定されうる。この時適当な方法で乗客にかかる横方向の加速度を減じることが出来れば、その分曲線通過速度を向上できる。その答えの一つが車体傾斜機構である。(他に全員着席していること等を前提に乗り心地の悪化を妥協する、という選択もありうる。681系や683系で曲線通過速度を高めているのはこの例である。) なお、車体傾斜機構は乗り心地を維持したままスピードを上げるための仕組みであり、軌道や車両にかかる荷重を減らすためのものではない。当然にJR福知山線脱線事故の様な事故を防ぐ事も出来ない〔ただし、振り子式車両は概して重心が低いためそもそも脱線しにくい。同じ車両で比べた場合に、車体傾斜機構によって脱線を防ぐ事は出来ないという事である。〕。そもそも車体にかかる遠心力は、その速度・質量・曲線半径により一意に定まる。遠心力を減ずる事は不可能(車体の水平方向、垂直方向成分の振り分けをカントにより変えられるだけである)である。そのため車体傾斜車両を用いて高速化を行う場合は、曲線区間で増す遠心力による側圧増大対策などのために、軌道強化が必要となる〔側圧増大を抑制するために車体傾斜システムとともに操舵台車を搭載する車両もあるが、軌道が強化されなければ安定した高速走行そのものが困難である。〕。軌道強化が実施されていない区間では速度を高められないためカント不足とはならず、車体を傾斜させる必要がなくなり傾斜機構を停止させて運用されることもある〔逆に幹線区間で半径の小さな曲線がなく、通過速度に対して充分なカント量がある場合も、車体傾斜を動作させる必要はない。〕。すなわち車体傾斜システムだけでは曲線区間の高速化はできず、車両の低重心化と軌道の強化も行うことで初めて高速化が成される。 平坦な場所を走行する幹線では元々曲率半径は大きめに取られているが、山岳路線やローカル線では敷設条件から半径の小さい曲線が小刻みに連続する。根本的な解決には、長大なトンネルを掘って迂回していた区間を直線化するなど大規模な土木工事により軌道の線形を改良することになるが、これは莫大な工事費を要する。そのため、既設軌道の改良による設備投資を抑制しつつ列車の高速化を廉価に実現するため、曲線区間のカントの不足分を車体自体を傾斜させることで補う「振り子式」をはじめとする車体傾斜車両の実用化が検討された。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「車体傾斜式車両」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Tilting train 」があります。 スポンサード リンク
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