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日本の冠(にほんのかんむり)は、公家や武家の成人が宮中へ参内などの際に頭に着用する被り物。黒い羅を漆で固めて作ったものが一般的だが、即位の礼や朝賀の儀の際に着用した礼冠と呼ばれる金属製の冠もあった。 近世まで日本では髻を結って冠を被る冠着(かむりぎ)の儀礼を以って、成人式とした。「冠婚葬祭」の「冠」はこのことである。 この時、若者に冠をかぶせるのが「冠親」と呼ばれる後見人であり、近世において天皇の冠親は五摂家のうちどこかの当主が担当していた。 == 歴史 == 日本の冠の起源がいつかは明らかではないが、古墳時代には、すでに金、銀、金銅などから成る冠や冠帽(帽子状の冠)が着用されていた。これらは、藤ノ木古墳など各地の古墳から出土している。 公式に身分と冠が結び付けられたのは、603年制定の冠位十二階と呼ばれる制度であるが、この時点の冠は聖徳太子の妃の指導で製作されたといわれる「天寿国繍帳」などを見るに、絹製の帽子のようなもので色も官位に対応させて赤・青・黒・紫など六色の濃淡があった。 日本の冠の直接の祖先は、養老律令の衣服令(いぶくりょう)に見える朝服の被り物「頭巾(ときん)」であるとされる。これは唐の常服に使用した幞頭と同じものである。 頭巾は黒い絹で出来た袋状のものの前後に合計四本の紐をつけた被り物で、巾子(こじ)と呼ぶ黒漆塗りの桐でできた筒で髻を覆った後で頭を覆うものである。ただし日本で出土品する巾子は、麻と思われる間のあいた平織の生地に漆をかけてメッシュ状にしたものである。 頭上で結ぶ前の紐を上緒(あげお)、後頭部で結ぶ後ろの紐を纓(えい)と呼んでいた。なお、唐では両者を「脚」と呼んでおり、纓は正式な冠の顎紐を意味した。 この時点では巾子と本体は別のものであり、纓は本体を固定する紐に過ぎない。 後に上緒は形骸化し纓は徐々に長くなり、巾子と本体は一体化するが、冠着という元服式のときのみ「放巾子(はなちこじ)」と言われる本体と巾子を別に作り、装着後に紐で結んで固定するものが使われた。 平安時代中期の摂関期ごろには冠は比較的現代の形に近いものへと代わっていたが、当時の冠は漆を薄く塗った柔らかなもので雨などにあうと簡単に型崩れしていたことが枕草子などの記述から分かる。 上緒は巾子の根元に掛けるだけの飾りになり笹紙(ささがみ)という和紙を裏から貼って痕跡を示すだけ、纓は羅を燕尾の形に垂らす飾り物に代わっていたため、簪というピンを巾子の根元から差し込んで髻を貫いて固定した。 平安時代末期の院政期には、漆を厚く塗って形が崩れない冠となり、纓が本体から分離して纓壺に纓を差し込んで固定するようになった。 京都全体を戦乱に巻き込んだ応仁の乱の影響で、日本の宮廷文化は混乱するが、このとき五位以上の貴族の冠に用いる有文羅(うもんら/模様を織り出した羅)の技法が散逸。以降、無地の羅に刺繍を加えて代用に当てた。 冠は元来柔らかいものであったから、纓で髻に固定したと思われるが、硬くなるとともに平安中期ころから簪で髻に固定するようになる。鎌倉時代には巾子が高くなり、大型化したことが『徒然草』に見えるが、室町時代になると一転、小型になっていったことが「足利義持像」(神護寺蔵)や「伝足利義政像」(東京国立博物館蔵)から知られる。それとともに懸緒という紐で固定することがはじまった。 纓の根は平安時代末期以降上がる傾向にあったが、ここに至って纓の先端が垂れずに頭上に上がったままの現在も天皇が被る御立纓(ごりゅうえい)の冠が登場した。江戸前期の霊元天皇の冠は江戸中期のものより心持ち大きく、形も柔らかい。江戸中期の桜町天皇の冠は極端に小型化し、額の立ち上がりも鋭角になる。この形式が幕末まで続いた。 明治以降、断髪の影響により冠は頭に被ることのできる大型のものとなる。また頭を覆うために暑気を抜くため、天皇の冠にはニ引きの透かしを、皇族および臣下は籠目の透かしを入れるようになった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「日本の冠」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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