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日電歩道(にちでんほどう)は、富山県黒部市の仙人谷ダムから中新川郡立山町の黒部ダムまでの黒部川上流沿いに約 16.6 km にわたって延びる歩道。 黒部峡谷の核心部「下廊下」(下ノ廊下)を通る上級者向け登山道〔鈴木・内田・平本、122ページ。〕であり、コース沿いにはS字峡・十字峡・白竜峡などの景勝地がある。仙人谷ダムでは黒部川の下流方向へ欅平まで続く水平歩道に接続している。 == 解説 == 一般的な登山道とは異なり、登り下りは少なく全体的に平坦であるが、黒部峡谷沿いの断崖絶壁に沿って長い道のりを歩く危険箇所の多いコースである。コース上に山小屋などの避難場所や、エスケープルートは存在しない。最寄りの山小屋は、仙人谷ダムから水平歩道を 2 km ほど進んだところにある「阿曽原温泉小屋」、または黒部ダムから南へ 30 分ほど歩いた位置にある「ロッジくろよん」である。 「日電歩道」の名は、日本電力(日電)が水力発電所の建設に備えた調査を行うために開削したことから付けられた。1925年に着工し、1929年に平(現在の黒部ダム西岸・平ノ小屋付近)まで開通した。黒部川左岸断崖絶壁にわずかな隙間をうがつような形で建設され、当初は最も狭いところで道幅が 50 cm しかなく、岩壁から太い針金を垂らして木をぶら下げ桟道代わりにしていた箇所もあった。歩道上流部に黒部ダムが建設されるにあたってこれらの狭隘な箇所が拡幅され、現在の道になった。 日電がすでに存在しない現在では「旧日電歩道」とも呼ばれる。また水平歩道の部分に当たる区間も含めた約 30 km の道のりを指して「日電歩道」と総称する場合もある。ただし水平歩道の開削は、日電が黒部川の水利権を得る以前に東洋アルミナムの手で行われており、日電が開設したという意味では「日電歩道」と呼べるのは仙人谷より上流側である。また、対岸の右岸側には、古河合名会社(現在の古河機械金属)や東信電力も調査用の道を開いていた〔が、現在では使われていない。 1951年に関西電力(関電)が黒部川水系の日電の施設を受け継いだことにより、本歩道および水平歩道も関電の管理下に入っている。関電が黒部ダムの建設を決定した際、中部山岳国立公園内である現地にダムを造成する条件として、登山者のために水平歩道とともに本歩道を毎年整備することが厚生省より義務づけられたため、以降関電は毎年数千万円、延べ 500 名の人員を投じて維持・補修を行っている〔。整備が終了すると検査を経て富山県警察山岳警備隊や関電から開通が発表される〔が、残雪がある程度消える初夏になってから整備が始まる関係上、開通するのは例年9月下旬頃であり、また11月に入ると凍結や積雪が始まる〔ことから、1年の中で通行可能なのは秋の 1 - 2 か月間ほどに限られる。残雪が多い場合には数週間しか通行できなかったり、整備が間に合わずに開通しないままの年もある。また整備の範囲は通行が可能になる必要最小限にとどめられており、山側に手すり代わりのワイヤーが張られてはいるものの、道幅は最狭部で 50 - 60 cm であり、足元から谷底まで 100 m 以上落ち込んでいる箇所も続く。丸太を数本渡しただけの桟道や、危険箇所を迂回するため木の梯子で数十 m上下する区間もあり、転落事故が後を絶たない。従って熟練した登山者でなければ容易に通行できない。年間の通行者は約 3,000 人ほどである〔。さらに、開通の発表は県警や関電が通行の安全を保証するものではなく、開通後も落石などで歩道が損傷を受ける場合がある〔。2011年には開通間もない10月上旬に十字峡付近で地震による大規模な崖崩れが発生し、その後の年内の通行が不可能になったこともある。 水平歩道も日電歩道同様、断崖絶壁にうがたれた狭い登山道であり、通行に危険を伴うが、その難易度は日電歩道よりも低い。しかし、一歩足を踏み外すと数百 m の絶壁の下に転落する難コースであることに変わりはなく、実際にこちらも転落事故が多発している。 富山県や地元自治体では、観光地としての魅力を高めるため安全性をより高めた整備を求めているが、現地は農林水産省所管の国有林であり、国立公園としての管轄は環境省、そして管理を行うのが関電と、それぞれの費用・役割分担が明確になっていないという問題があり、具体化するには至っていない状況である〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「日電歩道」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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