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普遍史(ふへんし、)とは、叙述の対象を全世界にまで拡大して人類創世から同時代にいたる人類史〔大塚修「キニク氏族とアフラースィヤーブ:ペルシア語普遍史叙述の展開とセルジューク朝の起源」(「オリエント」50-1,2007)p.82〕を叙述する類型〔真下裕之「インド・イスラーム社会の歴史書における「インド史」について」(神戸大学文学部紀要,38,2011.03)PDF-p.11〕のこと。 キリスト教世界においては、聖書が叙述する内容に基づくキリスト教的史観から構成された世界史である。それは天地創造に始まり最後の審判で終わる、未来をも含む有限の時間軸を範囲とし、空間的にはすべての世界を含んでいる。そこには目的があり、神による人類の教育と、その結果もたらされる救済に至る過程が骨格を成している。 中世ヨーロッパまでは正しい歴史記述と広く認識されていたが、大航海時代や啓蒙思想そして科学の発達などを通じて矛盾する要因が数多くもたらされ崩壊を迎えた。しかし普遍史は、美術や文学などの芸術分野や、また哲学など思想分野にも大きな影響を残した。 == 概要 == 聖書は、世界の創造と人類の誕生から始まり、その後起こったさまざまな出来事を記載している。そして、救済が実現する未来の描写も暗喩などの表現を用いながら含まれ、これはひとつの歴史大系を成している。旧約聖書を聖典とするユダヤ教の中では、これらの認識は基本的にイスラエル(ユダヤ人・ヘブライ人)とその周辺民族についての歴史を叙述しているものに留まっていた。しかしキリスト教は民族宗教から世界宗教へ脱皮する過程で、聖書記述の内容を、すべての人類(民族)とあらゆる場所(地域)に当てはめる「普遍」的性質を帯びるようになった。これが発展し、普遍史として体系づけられた。 宗教学者のミルチャ・エリアーデによると、古代の文明では四季など自然のサイクルと同様に歴史は死と再生を限りなく繰り返し起こる循環的(円環的)・永遠回帰的なものと考える概念が主流だった。これを最初に覆えした思想がユダヤ教であり、これを批判的に継承したキリスト教だった。この思想は、同じ出来事は二度と起こらない直線的・不可逆的かつ発展する進歩史観という体系で纏められた。そして、その歴史には終止符が置かれ、信仰による救済が訪れるという救済史観をも特徴としている。 しかし、旧約聖書にはこのような思想が明瞭に著述されているわけではない。そこにある記述は、神と契約を結んだイスラエルの民が何度も背教行為や契約違反を繰り返したため神罰が下り、民族は苦渋と迫害の中にあった。だが悔い改め契約に基づく正しい道を歩めば、罪は赦されて再び民族の繁栄を取り戻すというものである。ところが現実には、彼らの苦境は続きさらに悪化していった。そのような中、神との約束である救済を待望する考えは強まり、より過激な形で「黙示録的」終末論が形成された。そして、天地創造から最後の審判までの過程に再解釈が施され、直線的・進歩的かつ終末論的な時間意識と歴史観が確立した。これは、キリスト教に受け継がれて普遍史へと発展しただけでなく、イスラム教にも影響を与えた。〔 トマス・マン、カール・レーヴィット、ルドルフ・カール・ブルトマンは共通して、西欧文明で現代的歴史観が形成される過程で、普遍史がその端緒になったと論評している。また、時間に対する概念の変革をもたらし、過去の支配者名に基づく年月表示から、長大な期間に適応できる基準となる「紀元」を歴史記述に導入した功績も認めている。レーヴィットの論説では、普遍史の「終末論的歴史観」は宗教から離れ世俗化してからも、目的論的歴史観や唯物史観という考えに影響を与えたという。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「普遍史」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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