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植物細胞(しょくぶつさいぼう)は植物を構成する細胞である。他の真核生物の細胞とは、以下のような様々な点で区別される。 *トノプラストと呼ばれる膜で囲まれ、水で満たされた大きな液胞が存在する。この構造は、膨圧の維持、細胞質基質と樹液の間の分子の移動の制御、有益な物質の貯蔵や老廃タンパク質及び細胞小器官の消化等に関与する。 *セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニンから構成される細胞壁は、細胞膜の外側のプロトプラストから分泌される。これは、キチンから構成される菌類の細胞壁やペプチドグリカンから構成される細菌の細胞壁とは対照的である。 *原形質連絡と呼ばれる特殊な細胞間連絡経路がある〔Oparka, KJ (1993) Signalling via plasmodesmata-the neglected pathway. Seminars in Cell Biology 4, 131–138〕。隣の細胞と、孔を介し、原形質膜及び小胞体を隔てて連続している〔Hepler, PK (1982) Endoplasmic reticulum in the formation of the cell plate and plasmodesmata. Protoplasma 111, 121–133〕。 *クロロフィルを含み、植物の光合成を可能とする葉緑体等の色素体が存在する。その他の色素体には、デンプンの貯蔵に特化したアミロプラスト、脂肪の貯蔵に特化したエライオプラスト、色素の合成と貯蔵に特化した有色体等がある。ミトコンドリアが37個の遺伝子をコードするゲノムを持っているのと同様に〔Anderson S, Bankier AT, et al. (1981) Sequence and organization of the human mitochondrial genome. Nature 290, 4–65〕、色素体も100-120個の固有の遺伝子からなるゲノムを持つ〔L Cui, N Veeraraghavan, et al. (2006) ChloroplastDB: the chloroplast genome database. Nucleic Acids Research, 34, D692-696〕。これらの色素体は、陸上植物や藻類の祖先である初期の真核生物の細胞に、原核生物が細胞内共生したものと推定されている〔L. Margulis (1970) Origin of eukaryotic cells. Yale University Press, New Haven〕。 *細胞質分裂の後期段階での細胞板の鋳型としての隔膜形成体の形成による細胞分裂は、陸上植物と車軸藻植物門〔Lewis, LA, McCourt, RM (2004) Green algae and the origin of land plants. American Journal of Botany 91, 1535–1556〕やスミレモ目〔López-Bautista, JM, Waters, DA and Chapman, RL (2003) Phragmoplastin, green algae and the evolution of cytokinesis. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 53, 1715–1718〕等の一部の藻類に特徴的である。 *コケ植物、シダ植物門、ソテツ類、イチョウ属の精子は、動物のものと同様の〔Manton, I. and Clarke, B. (1952) An electron microscope study of the spermatozoid of ''Sphagnum''. Journal of Experimental Botany 3, 265–275〕〔D.J. Paolillo, Jr. (1967) On the structure of the axoneme in flagella of ''Polytrichaceae|Polytrichum juniperinum''. Transactions of the American Microscopical Society, 86, 428–433〕鞭毛を持っている〔Silflow,CD and Lefebvre, PA (2001) Assembly and motility of eukaryotic cilia and flagella. Lessons from ''Chlamydomonas reinhardtii''. Plant Physiology 127, 1500–1507〕が、裸子植物や被子植物を含む高等植物では、鞭毛や中心小体を欠く〔PH Raven , Evert RF, Eichhorm SE (1999) Biology of Plants, 6th edition. WH Freeman, New York〕。 ==細胞の種類== * 柔組織細胞は、光合成とその産物の貯蔵、輸送細胞においては師部輸送等の役割を持つ細胞である。維管束の木部と師部を除き、葉は主にこの柔組織からなる。表皮等の柔組織は、光の透過やガス交換の調整等に特化しているが、他は、植物の組織においては特別な細胞ではなく、生涯に渡って全能性を保持する。柔組織細胞は、小分子を輸送できるように、薄く透過性のある一次壁を持ち、細胞壁は、蜜の分泌や、草食動物による捕食を防ぐ二次代謝産物の生産等の幅広い生化学機能を担っている。葉緑体を多く含み、光合成に大きな寄与をしている柔組織細胞は、同化組織細胞と呼ばれる。ジャガイモの塊茎や豆果の子葉の大部分を占める細胞のような、貯蔵機能を持つものもある。 * 厚角組織細胞は、成熟細胞で一次壁のみを持つ。柔組織細胞同様に分裂組織から誘導されるが、すぐに別方向に分化を始める。色素体は発達せず、小胞体やゴルジ体等の分泌器官が一次壁を急速に増殖させる。一次壁は通常、3つ以上の細胞が接触する角の部分で最も厚く、2つの細胞が接触する面の部分で最も薄いが、壁の厚みについては、別のケースもありうる〔。 双子葉植物では、厚角組織の細胞壁にはペクチンとヘミセルロースが多く、例えばフキ属では、セルロースはわずか20%程度しか含まれない〔PA Roelofsen (1959) 'The plant cell wall.' ''Handbuch fur Pflanzenanatomie''. Band III. Gebrüder Borntraeger, Berlin〕。厚角組織細胞は、通常は非常に細長い形で、端は横方向の細胞壁で区切られる。このタイプの細胞の役割は、植物の成長軸を支持することと、組織に柔軟性と抗張力性を与えることである。一次壁は組織を硬くするためのリグニンを欠くため、若い茎や葉柄しか支えることができないが、これらの組織の成長時には周囲の細胞とともに伸びることができる。セロリの繊維の一部も厚角組織である。 * 厚壁組織細胞は、機械的な支持を担う硬くて丈夫な細胞である。厚壁異形細胞(石細胞)と繊維の2つの種類に大別できる。これらの細胞は二次壁を発達させ、一次壁の内側に沈着させる。二次壁にはリグニンが多く含まれるため硬い。二次壁は水を透過しないため、これらの細胞はやがて、代謝の維持のために必要な物質の十分な交換を行うことが出来なくなる。通常、これらの細胞は組織が成熟すると死に、細胞質は失われて空になる。 厚壁組織細胞の役割は、消化管を傷付けることによる幼虫等の捕食動物の忌避、物理的保護(モモやその他の多くの果物では、厚壁組織細胞でできた硬い組織が壁孔を形成している。)等である。繊維の役割は、草本植物の葉や茎に、耐荷重性や抗張力性を付与することである〔EG Cutter (1977) Plant Anatomy Part 1. Cells and Tissues. Edward Arnold, London〕。厚壁繊維は、水や栄養素の輸送(木部)や光合成産物の輸送(師部)を行わないが、陸上植物の進化の初期段階で、これらの組織から分化したと考えられている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「植物細胞」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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