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無裁定価格理論(むさいていかかくりろん、または)とは、裁定取引が存在しないことを仮定して商品の価格付けを行う理論のことである。特に金融市場における派生証券の価格付けに関して言及され、金融経済学、数理ファイナンス、金融工学においては重要な位置を占める理論である。本項では金融商品に対する無裁定価格理論を取り扱う。 == 概説 == 無裁定価格理論について論じるために裁定取引が学術的にどのように定義されるかを確認しておく。現時点が 時点であるとして、 時点までの期間を考える。投資家は時点 における投資の成果に興味があるものとする。この時、金融市場においてある取引戦略(ポートフォリオ)が裁定取引であるとは、そのポートフォリオが自己資金充足的()であり、任意の時点 におけるそのポートフォリオの価値額をと表した時、 * * * を満たす時を言う。 はカッコ内の事象が起こる確率を指す。 ポートフォリオが自己資金充足的であるとは、 時点から 時点までの全ての時点において、そのポートフォリオの組成費用に初期( 時点)の資産とポートフォリオそれ自身から得られる利益しか用いることが無いということである。例えば、現時点でのポートフォリオの価値額では賄えないような規模の金融商品の購入の為に自己の労働による賃金収入を用いると、そのポートフォリオは自己資金充足的ではなくなる。しかし借金などは債券の空売りなどと同一視されるために、自己資金充足的であるという仮定は崩されないとする場合が多い。 より平易な言い回しをすれば、裁定取引とは、初期時点において組成にかかわる費用が0で、計画期間の最後において損をすることはほとんど確実になく、さらに正の確率で正の利益を得られる追加的な資金注入や流出がないポートフォリオのことを言う。先ほども述べたとおり、何らかの金融商品購入の為に借金をするポートフォリオを考えたとしても、それは債券の空売りと同一視されることから、そのポートフォリオが裁定取引ではないとは言えない。またこのような裁定取引そのものについて裁定機会()と言う事もある。 無裁定価格理論とは、裁定取引が存在しないという仮定の下では、ある現在価格が未知の金融商品の 時点でのキャッシュフローを現在価格が既知の金融商品からなる自己資金充足的なポートフォリオで複製すれば、その複製したポートフォリオの現在価値を複製対象の金融商品の現在価格と見なせるという理論である。 複製するという言葉の意味は現在価格が既知の金融商品からなるポートフォリオで現在価格が未知の金融商品の 時点でのキャッシュフローを完全に再現するという事である〔数学的な取扱いを考えると完全でなくてもほとんど確実に再現できればよい。〕。つまり、このようなポートフォリオを組めば 時点において複製対象の金融商品と全く同じキャッシュフローを得ることが出来る。このキャッシュフローを複製しているポートフォリオのことを複製ポートフォリオ()と言う。 無裁定価格理論が成立しなければ裁定取引を簡単に作ることが出来る。現時点を 時点とし、ある金融商品のキャッシュフローをその他の金融商品からなるポートフォリオで複製できるとする。また市場には 時点を満期とした債券が存在しているものとする。さらに複製対象の金融商品の現在価格が複製ポートフォリオの価値額を上回っているとする。この時、現時点でその金融商品を1単位売り、そこから得られる収益で複製ポートフォリオを組成し、残額をすべて債券購入に回すポートフォリオを組む。このポートフォリオは無費用で組成できることが分かる。そして 時点においては複製対象の金融商品と複製ポートフォリオでキャッシュフローが打ち消しあい、債券の償還による利益のみが得られる。よってこのポートフォリオは無費用かつ追加的な資金の流出入なしに組成可能で、将来時点において必ず損はせず利益を得ることができる。つまり裁定取引となる。複製対象の金融商品の現在価格が複製ポートフォリオの組成費用を下回っているのならば、複製ポートフォリオを1単位売り、複製対象の金融商品を1単位買い、残額を債券に投資すれば同じ議論からこのポートフォリオは裁定取引になる。よって市場に裁定取引が存在しないのであれば、複製対象の金融商品の現在価格と複製ポートフォリオの組成費用は必ず一致しなければならないことが言える。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「無裁定価格理論」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Fundamental theorem of asset pricing 」があります。 スポンサード リンク
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