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熱塩循環(ねつえんじゅんかん、)は、おもに中深層(数百メートル以深)で起こる地球規模の海洋循環を指す言葉である(水深千数百メートル以下での海洋循環を指すという説もある。〔〕)。語源の thermo は熱、haline は塩分の意味で海水の密度はこの熱と塩分により決定される。メキシコ湾流のような表層海流が、赤道大西洋から極域に向かうにつれて冷却し、ついには高緯度で沈み込む(北大西洋深層水の形成)。この高密度の海水は深海底に沈み、1200年後に北東太平洋に達して再び表層に戻る。その間それぞれの海盆の間で広範囲に渡って混合が起こり均一化することで海洋の世界的なシステムを作っている。この過程で、水塊は(熱)エネルギーと物質(固体、溶解物質、ガス)を運んで地球上を移動する。このように、循環現象は地球の気候に大きな影響を与えている。 熱塩循環と表層で起こる風成循環とを合わせて、海洋大循環と呼ぶ。熱塩循環は大循環、深層大循環、グローバルコンベアーベルトとも呼ばれる。海水が南北に移動し表面近くと深層の間を行き来することにより特徴付けられるため、子午面循環(英語で meridional overturning circulation)と呼ばれることもある。 == システム == 表層海流が風によって起こるということは、例えば池の表面に風によってさざなみが立つのを見ることで直感的に理解できる。したがって昔の海洋学者は、深海では風の影響が無いので完全に静止した世界であろうと考えていた。しかし現在の計測機器の発達により深海にも、潮汐による流れに加えて、表層よりかなり弱いながらも海流があるということがわかってきた。深層の流れを駆動するおもな原因は密度の違いと考えられていたが、近年の研究では風がおもな駆動力の起源という説が有力である〔 Wunsch, C, 2002: What is the thermohaline circulation? Science, 298, 1179-1180〕 。 海水の密度は全地球で一様ではなく、その違いは明瞭で不連続である。表層で形成される水塊の間には明瞭な境界が存在し、その性質を維持している。軽い水塊が重い水塊の上に乗るというように(木片や氷が水に浮くように)、形成された時の状態で決まる密度によって、重い方が潜り込み、軽い方が乗り上げるというような状態を示す。海水の密度は、温度と塩分と圧力によって決まる。冷たい海水、塩分の多い海水は、それぞれ温かい海水、塩分の少ない海水より高密度になる。水塊は最も安定した状態を保つため流動する。 ただ注意が必要なのは、海洋に温度と塩分を与えるのが表面だけである点である(地熱の効果は小さい〔Wunsch, C. and R. Ferrari, 2004: Vertical Mixing, Energy, and the General Circulation of the Oceans. Annual Review of Fluid Mechanics, 36, 281-314〕)。水槽に水を入れ表面の一部を温め他の表面の一部を冷やす実験では、定常な鉛直流は生じない。上層の温かい水と下層の冷たい水を混合するメカニズムが必要になる。この混合は潮汐や風の効果によって生じると考えられている。 風は以上の混合の効果に加え、陸との相互作用やエクマン流で表面と中深層の海水交換を駆動する。エネルギーで見ると風が主な駆動力と考えられているが、密度効果や潮汐による混合を含めたそれぞれの寄与はよく分かっていない。そのため密度効果のみと誤解されうる''熱塩''循環という呼び方を避けた他の呼び方(上記参照)が多く使われるようになってきた。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「熱塩循環」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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