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牧野 信一(まきの しんいち、1896年(明治29年)11月12日 - 1936年(昭和11年)3月24日)は、日本の小説家。神奈川県足柄下郡小田原町(現:小田原市)出身。自然主義的な私小説の傍流としてみなされることが多く、17年間の作家生活の中で珠玉の短編十数編を残して早逝したマイナー・ポエトといわれている〔千石英世「牧野信一・人と文学」『昭和文学全集7』(小学館、1989年)〕〔柳沢孝子「解説」(『日本文学研究資料新集25 宇野浩二と牧野信一 夢と語り』)(有精堂出版、1988年)〕。「ギリシャ牧野」とも呼ばれた中期の幻想的な作品で新境地を拓いたが、最後は小田原の生家で悲劇的な縊死自殺を遂げた。享年39歳〔〔柳沢孝子「ゼーロン 解説」(『短編の愉楽2―近代小説のなかの異空間』)(有精堂出版、1991年)〕。 決して大作家とはいえない一詩人的な作家ではあるが、その「内発的な自我破り、想像力の開放、分裂に処するパロディの方法の発見」などは文学史的には重要な意味があると磯貝英夫は考察し〔磯貝英夫「私小説の克服――昭和文学の一系統をめぐって」(文學 1960年1 - 2月号に連載)。『現代文學史論』(明治書院、1980年)に所収。〕、その後継者的な作家として、井伏鱒二、坂口安吾、石川淳、太宰治らの名を挙げている〔。また、「ときにデフォルメされた笑いに身をよじり、ときに救いも見えない焦燥に身をこがす」ような、一種の「動的な精神の燃焼の場」としての牧野の小説は、上記の作家の他、稲垣足穂、小島信夫、野坂昭如、後藤明生などの先駆者的なものがあると千石英世も指摘し〔、石川淳の他、島尾敏雄、吉行淳之介、安岡章太郎、種村季弘、池内紀ら、熱心な牧野信一ファンの作家が輩出されている〔堀切直人「荒武者マキノ」(文庫版『ゼーロン・淡雪』)(岩波文庫、1990年)〕。 なお、牧野信一は、坂口安吾の『風博士』をいち早く絶賛し、坂口が新進作家として世に出るきっかけを作った他、宇野浩二、井伏鱒二、青山二郎、小林秀雄、河上徹太郎らと交流を持ち、雑誌『文科』を創刊主宰して、これらの作家の作品発表の場を作った。牧野の代表作には、『地球儀』、『父を売る子』、『西瓜喰ふ人』、『村のストア派』、『ゼーロン』、『バランダ物語』『酒盗人』、『鬼涙村(きなだむら)』、『裸虫抄』などがある。 == 作風 == 牧野信一の文学は、通常おおまかには、初期私小説、中期幻想小説、後期私小説への復帰、と分類されている〔〔。初期と後期における私小説的作品のいくつかは、「家族と血族の因縁」を扱い、牧野の文学の「深い暗部」を垣間見せている〔〔。 基本的に牧野は「自然主義的な作風」の作家とみなされることが多いとする堀切直人は、大正期の『父を売る子』をはじめとした牧野初期の私小説では、「自分の家庭の内幕を大胆にさらけ出した、すこぶる露悪的自虐的な」作品が特徴だとし、晩年には再び、『鬼涙村』、『裸虫抄』などの佳作で「暗鬱な土俗の世界に肉薄」していると考察し〔、柳沢孝子も、牧野の初期作品は、「自虐的饒舌および劇画」や「鋭敏な末梢神経描写」にあふれた私小説の体裁を持ち、晩年の作品も「朗らかな夢」が涸れていると解説している〔。 それらの初期や晩年の作風と違う、文壇の通称として「ギリシャ牧野」と呼ばれていた中期の浪漫的幻想小説は、そうした暗部の反転であり、「濃厚なナンセンスによる笑いの文学」、「夢魔的世界」を実現させており〔〔、中期の傑作といわれる『ゼーロン』をはじめとする、その時期に位置する作品は、自然主義的私小説の奔流とは趣の異なる「幻想的」な作品群と目され、「古代ギリシャや中世ヨーロッパの古典」に題材を借りた作風となっている〔〔〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「牧野信一」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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