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珪肺 : ウィキペディア日本語版
珪肺[けいはい]

珪肺または硅肺(けいはい、''Silicosis''、''Potter's rot'')は、結晶シリカケイ酸)粉塵を吸入することで生じる職業性肺疾患の一種で、結節をともなう肺上葉の炎症と瘢痕を特徴とする。塵肺の一種に分類される。珪肺症、硅肺症、珪粉症、硅粉症などともいう。古くは「よろけ」と呼ばれた。
特に急性のものは、呼吸困難、咳、熱、チアノーゼを特徴とする。しばしば肺水腫肺炎結核と誤診されることがある。
''silicosis''(ラテン語''silex''「火打石」より)という語は1870年にアキッレ・ヴィスコンティによって初めて用いられたが、粉塵を吸い込むと呼吸器に問題を起こすことは古代ギリシアローマ時代から知られていた〔Rosen G: The History of Miners' Diseases: A Medical and Social Interpretation. New York, Schuman, 1943, pp.459-476.〕。16世紀半ばにはゲオルク・アグリコラが粉塵吸入による鉱夫の肺病について記録しており、1713年にはベルナルディーノ・ラマッツィーニが、石切職人に喘息様の症状がみられ、肺には砂のようなものがたまっていたと書き記している。産業機械の発達により、手作業の時代と比べ発生する粉塵の量は増大し、1897年の手持ち削岩機の使用開始と1904年頃のサンドブラスト導入〔Craighead JE et al. National Institute for Occupational Safety and Health. Diseases Associated with Exposure to Silica and Nonfibrous Silicate Minerals. Arch Pathol Lab Med 1988;112:673-720.〕は、ともに珪肺有病率増加の大きな要因となった。
== 分類 ==
珪肺は、疾患の重症度(X線画像による診断を含む)、発症までの期間、進行の速さによって以下のように分類される〔NIOSH Hazard Review. Health Effects of Occupational Exposure to Respirable Crystalline Silica. DHHS 2002-129. pp. 23.〕。
* 慢性単純性珪肺(chronic simple silicosis)
通常、比較的低濃度のシリカ粉塵への長期(10年以上)曝露の結果、最初の曝露から一般的には10 - 30年後に発症する〔Weisman DN and Banks DE. Silicosis. In: Interstitial Lung Disease. 4th ed. London: BC Decker Inc. 2003, pp391.〕。最もよくみられるタイプの珪肺である。慢性単純性珪肺に罹患した患者は、特に初期のうちははっきりとした徴候や症状を示さないこともあるが、X線により異常が見つかることがある。慢性の咳や運動時の呼吸困難が一般的な所見である。慢性単純性珪肺ではX線画像により、通常丸みを帯びた多数の小陰影(直径10mm未満)が特に上肺部に顕著に認められる。
* 加速性珪肺(accelerated silicosis)
高濃度のシリカ粉塵に最初に曝露してから5 - 10年後に生じる珪肺。症状やX線所見は慢性単純性珪肺に似ているが、発症は慢性単純性珪肺より早く、進行も早い傾向にある。加速性珪肺の患者は進行性塊状線維症(PMF)などの合併症のリスクが大きい。
* 複雑性珪肺(complicated silicosis)
進行性塊状線維症(PMF)が重症化、瘢痕化すると複雑性珪肺となる。集合珪肺(conglomerate silicosis)ともいう。複雑性珪肺では微細結節が徐々に癒合し1cm以上の大きさになる。単純性珪肺と比べPMFは重症化し、より深刻な呼吸障害を伴う。結核、非結核性抗酸菌症、真菌症、ある種の自己免疫疾患肺癌など他の肺疾患によって複雑性珪肺になることもある。複雑性珪肺は慢性珪肺よりも加速性珪肺に多くみられる。
* 急性珪肺(acute silicosis)
高濃度の吸入性シリカ粉塵に曝露後、数週間から5年で発症する。シリカ蛋白症(silicoproteinosis)とも呼ばれる。急性珪肺の症状として、身体への影響が深刻な重症の息切れ、咳、衰弱、体重減少がより短期間であらわれ、ときに死に至る。X線画像は通常、スリガラス様陰影の気管支含気像を伴うびまん性肺胞充満を認め、肺炎肺水腫、肺胞出血、肺胞細胞肺癌に似る。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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