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真珠層(しんじゅそう、)、別名真珠母(しんじゅぼ、)は、ある種の軟体動物(特に貝類)が外套膜から分泌する炭酸カルシウム主成分の光沢物質。貝殻の内側に付いており、無機質と有機質の複合物質である。干渉縞により構造色(虹色)となっている場合が多い。 真珠層は全ての軟体動物にあるわけではなく、二枚貝綱、腹足綱、頭足綱などのうち特定の古い系統に限られる。その他の大多数の軟体動物の内殻層は磁器質になっており、真珠層は持たない。ただし、真珠層を持たない種類の貝にも、殻の内側に虹色の層を持つものがある。 アコヤガイやカワシンジュガイの貝殻の内層は、真珠層である。そのほか、海洋腹足類のミミガイ科(アワビ〔など)、ニシキウズガイ科、リュウテンサザエ科も真珠層を持つ。 ==構造== 真珠層の主成分は炭酸カルシウム(CaCO3) であり、その結晶構造はアラレ石に近い。ただしアラレ石が斜方晶系結晶である〔炭酸塩アトラス 炭酸塩鉱物 〕のに対し、真珠層は95%が擬六方晶系を中心とした多角形または円形断面を持つ幅5~20ミクロン、厚さ0.3~1.5ミクロンの微結晶の集合体であり、微結晶の間はキチン質などの弾性生体高分子が接着剤の役割を果たしており、複合材料と見ることができる〔Bruet et al. Nanoscale morphology and indentation of individual nacre tablets from the gastropod mollusc ''Trochus niloticus'' 〕。また、タンパク質も2%ほど含まれており〔晦日房和 アコヤ貝殻真珠層のタンパク質の解析 〕、コンキオリンやナクレインなどであることが知られている〔アコヤガイ真珠層の固体13C NMR測定 〕。様々な大きさの結晶と生態高分子との複合構造により、本来であれば脆い炭酸カルシウムの結晶であるにもかかわらず、真珠層はヤング率約70ギガパスカルという強靭な材料となっており、ひび割れもしにくい〔。この強靭さは大きさが統一した微結晶では得られない〔NEDO海外レポート 強い人工骨を作る海の秘密(PDF) 〕。構成元素としては、カルシウムの他にストロンチウム、ケイ素、マグネシウムが極微量含まれる〔亀岡啓 真珠の色のひみつ 〕。 真珠層は構造色、すなわち虹色のように徐々に変わる色をしている。これは、アラレ石の微結晶の厚さが光の波長に近いため、光の干渉が起こっているためである。 真珠層の元は、軟体動物の外套膜を構成する上皮細胞から分泌される。これが貝殻の内側に堆積して真珠層となる。真珠層の役割は、貝殻の内面を滑らかにすることで、軟体動物の柔らかい表皮と貝殻との間に隙間ができないようにし、寄生虫や異物が挟まることがないようにすることである。これは包嚢形成と呼ばれている。 工芸用などの目的で真珠層を利用する上で代表的な資源を挙げると、まずはウグイスガイ科の真珠貝類であり、アジアを中心とする温帯および熱帯の海に生息する。さらにイシガイ上科のイシガイ科、カワシンジュガイ科といった淡水産二枚貝類の一部は別名淡水真珠貝とも呼ばれており、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、アジアなどの川に住む。アワビはカリフォルニア、日本、アフリカ南部などの太平洋、インド洋に生息する。また、特に20世紀に貝ボタンの素材として広く利用されたヤコウガイも挙げなければならないだろう。 一方、アサリやホタテガイも異物が体内に入ると炭酸カルシウムで包んで球状にする性質を持つが、真珠層は持たず、できる球は真珠様物質にすぎない〔佐藤武弘 アサリの「真珠」(PDF) 〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「真珠層」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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