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磁石の山(じしゃくのやま)あるいは磁石山とは、磁力によって鉄を引き寄せるといわれていた山。近くを通る船を引き付けたり、羅針盤の向きを変えたりすると考えられていた。磁石の島(磁石島)と呼ばれることもある。 == インド近海の磁石の山伝説 == 磁石が鉄を引きつけることは古代から知られていたが、磁石の山の伝説もまた、古代から伝えられている。古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスは、著書『博物誌』第2巻において、次のように記している〔山本1(2003) p.116〕。 また、クラウディオス・プトレマイオスの著書『地理学』においても、Ⅶ(インド)・2において、 と述べられている〔山田(1996) p.158〕。ここに登場する「マニオライ」とはモルディブ諸島を指すという説もあるが、具体的な位置ははっきりしていない〔織田(1998) pp.275-276〕〔野間(1941) p.1019〕。さらに、『太清金液神丹経』などによれば、呉の万震が著した『南州異物志』(現存しない)には、句稚国の北東にある漲海は水が浅く磁石が多いため、船が磁石に行く手を阻まれるといった記述があるという〔山田(1996) pp.157-158〕。 このような話が伝わった理由の1つとして、インド洋では鉄を使わない船が実際に使われていたことがあげられる〔織田(1998) p.278〕。たとえば1世紀に書かれた『エリュトゥラー海案内記』には、マダラタという鉄を使わない船が紹介されている。こうした船を見て奇異に思った航海者たちによって、磁石の山の話が作られ広まったと考えられている〔村川訳注(1993) p.208〕。 時代は下って、10世紀後半にブズルク・ブン・シャフリヤールが編纂した『インドの驚異譚』では、小中国の主都ハーンフーと大中国の首都フムダーンの間を流れる川には幾つもの磁石の山々があり、鉄を積んだ船を吸い寄せるという記述がある〔シャフリヤール(2011) pp.282-283〕。また、1356年に書かれたジョン・マンデヴィルの『東方旅行記』には、インドの皇帝プレスター・ジョンの領海には巨大な磁石の岩があり、さらにそこから離れたケルメスという島にも海中に磁石の岩があるので、船を造るのに釘や鉄のたがを使わないと記載されている〔山本2(2003) p.376〕〔織田(1998) p.276〕。さらに、15世紀にドイツ大衆の間で広く読まれていた『聖ブランダン航海譚』にも、「粘りつく魔の海」には磁石があって、近づく鉄をことごとく引き付けると述べられている〔藤代(1999) p.14〕〔山本2(2003) pp.376-377〕。この時代の書物はフィクションとノンフィクションの境があいまいなため、どこまでが事実として書かれているかはっきりしないが、当時の人々はこれらの話を事実として信じていた〔山本2(2003) p.377〕。 1492年にマルティン・ベハイムによって作られた現存する世界最古の地球儀では、ジャワ島の北東にプトレマイオスが語ったマニオライ諸島が描かれ、「磁石があるために、鉄をもつ船は近くを航行することはできない」と書かれている〔織田(1998) p.280〕。しかし1498年、ヴァスコ・ダ・ガマによってインド航路が開拓され、インド洋海域の知識が得られるようになると、インド近海における磁石の山は地図から姿を消した〔〔山本2(2003) p.379〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「磁石の山」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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