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移調の限られた旋法(いちょうのかぎられたせんぽう、フランス語:modes à transpositions limitées、英語:modes of limited transposition)とは、フランスの作曲家、オリヴィエ・メシアンが提唱した、「相称的ないくつかの音群をもって構成されている〔」、すなわち特定の音程パターンの反復(並進対称性)を特徴とする特殊な旋法。彼のごく初期の作品からその使用が数多く見出され、メシアン以前の作曲家にも同種の旋法の使用例があるが、メシアンが1944年に著した、自身の種々の作曲手法を体系化した音楽理論書『わが音楽語法』(日本語訳は1954年に出版。平尾貴四男訳、教育出版)を通して広く知られることとなった。 == 歴史 == オリヴィエ・メシアンはこの旋法を自らの作曲技法の基礎とした。第2番と第3番が特に特徴的にこの概念を反映している。第4番以降は増4度音程での反復によって構成されているため、移調できる回数が6回と多く、メシアンは「興味が少ない」としている〔メシアン・1954年、96頁。〕。メシアンが提唱した7つ以外にも異なる種類のものがいくつか作成可能であるが、それらはいずれもメシアンが提唱した旋法を第一音以外の音から始めたものからいくつかの構成音を取り除いたものに過ぎない。メシアンは「わが音楽語法」のなかで、これらの旋法は、第一音以外の音から音階を始める事もできるが、それによって旋法の構成音やそこから生まれる和音が変わるわけではないので、根本的に性格が変わるわけではないとしている〔メシアン・1954年、97、100頁。〕。 西洋音楽史上初のこの旋法の出現は、ミハイル・グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲のコーダとされ、そこでは低音の強奏により第1番が効果的に使われている。セザール・フランクの「ピアノ五重奏曲」第一楽章のクライマックスのピアノパートにて使われたのもこの旋法の一種であり、メシアンはこのことを知っていたのか、「世の終わりのための四重奏曲」の曲中にて全く同じシチュエーション(低音域から順番に音階が上昇する)で第2番が使われている。なおフランクは弦楽四重奏ニ長調の最終楽章でも2番の音階を用いている。クロード・ドビュッシーが好んだ全音音階は第1番と同じである。第2番は、フランツ・リストやモーリス・ラヴェルの中などにも同じ旋法が使用されているが、20世紀前半には「やや奇妙な音程関係の旋法がある」として意外にも知られていたようで、アントン・ヴェーベルン、アレクサンドル・スクリャービン、ボフスラフ・マルティヌーの作品に、同じ旋法を使った作品が見られる。 これらの旋法は、オクターヴ以外の最も単純な協和音程である完全5度の堆積(ピュタゴラス音階、ピタゴラス音律を参照)を基礎としている教会旋法や、長音階、短音階とは基本的な構成原理が異なっており、またその性質から中心音の調的支配力が存在しにくい(または存在しない)ため、19世紀後半から20世紀にかけて、伝統的な調性の崩壊していく過程で何人かの作曲家たちによって注目されることになったが、こうした傾向を集大成し体系化したのがメシアンであった。 メシアンは、これを聴く者は、移調が限られている不可能性の魅力に囚われ、その調的遍在性がカトリック思想における「神の遍在性」と結びついて、非可逆リズムとともに「神学的な虹をもたらす」としている〔メシアン・1954年、106頁。〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「移調の限られた旋法」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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