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『第一文法論文』〔清水誠「北欧アイスランド文学の歴史(1):「リームル」からロマン派まで 」(『北海道大学文学研究科紀要』第128号、2009年7月)に見られる表記。〕〔菅原邦城訳、エリアス・ヴェセーン『北欧の言語』(東海大学出版会、1973年)p. 38, 43, 索引に見られる表記。〕(〔''The First Grammatical Treatise'' 古ノルド語で書かれた電子翻刻のテキスト。〕、)とは、古ノルド語や古アイスランド語の音韻論について書かれた12世紀の文献である。『第一文法論』〔森田貞雄『アイスランド語文法』(大学書林、1981年、ISBN 978-4-475-01752-7)p. 220, 227 に見られる表記。〕『第一文法書』〔森信嘉(当該部分担当)他訳、アラン・カーカー他編『北欧のことば』(東海大学出版会、2001年、ISBN 4-8329-5451-2)p. 214, 215, 216, 223 に見られる表記。〕とも。 この名称は、この文献がアイスランドの写本ヴォルム写本に収録されていた4つの文法に関する文献のうち、最初のものであったことに由来する。 著者の名前は明らかにされておらず、今日では多くの場合「第一文法論者」〔(、、「第一文法家」〔とも)と呼び慣わされている〔Robins, p. 82〕。 『第一文法論文』については、20世紀中盤に言語学者のうち多大な関心を寄せたものもいる。なぜならば、『第一文法論文』はミニマル・ペアの手法を体系的に用いており、アイスランド語におけるそれぞれの音声や音素の一覧表を作り上げるという〔Haugen, 1950 (1st. edition), p. 8〕、構造言語学の方法を思い起こさせるようなやり方をとっていたからだ〔Benediktsson, 1972, p. 35〕。また、鼻母音の音素が数多く存在することを明らかにしたことも注目に値する。もしこの『第一文法論文』が無ければ、当時のアイスランド語に鼻母音が存在していたことが、現在では判らなくなっていたであろう。 == 意義 == この著作は、アイスランド語で書かれた(そして北欧諸語で書かれた全ての著作の中で)最古の作品の一つである。これは、ラテン語やギリシア語の文法論文の伝統に基づいて、古ノルド語を取り扱った言語学的論考であり、一般に12世紀中頃のものとされている。Hreinn Benediktsson〔Hreinn Benediktsson, p. 22-33〕 は、成立年代は1125年から1175年の間であろうが、これ以上絞り込むことは困難であるとしている。 『第一文法論文』は、北欧のサガが書き始められる直前の時期の言語を示している主要な文章として、古ノルド語の研究にとって重要な存在である。さらに、木や石に短い文章を刻みつけるのに適した、古い、碑文用のルーン文字よりも、紙や皮革紙に書写するのに適しているラテン文字から、を作成するために、アイスランド語の発音に関する包括的な調査を実施している(おそらくそれ以前にも、ラテン文字で書かれた文書は、法律書やキリスト教宣教師の文書という形で存在はしていたが。当時、キリスト教圏の教育を受けた聖職者がルーン文字を使おうとはしなかったであろう)。ここで提案されたアルファベットには、þ(ルーン文字に直接由来する)や ð が含まれていた。また母音の長さ(長母音)を表示するダイアクリティカルマークや、オゴネク付きo (ǫ) も含まれていた。このオゴネク付きoで表されていた音は、当時は独立した音素として存在していたが、現在ではoウムラウト (ö) に一本化されている。第一文法論者が提案したシステム全体は、それ以降の写本を見るところ〔Árni Böðvarsson〕、採用されなかったようだ。ただし、そのうちのいくつかの要素は、さらに時代を下ってから、以降のアイスランド語の書記方法に影響を与えている。も参照のこと。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「第一文法論文」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 First Grammatical Treatise 」があります。 スポンサード リンク
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