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『肩をすくめるアトラス』(かたをすくめるアトラス、原題: ''Atlas Shrugged'')は、1957年のアイン・ランドの4作目の小説である。ランドの最長にして最後の小説であり、ランドのフィクション作品の中での最高傑作と見なされている。サイエンス・フィクション、ミステリ、および恋愛小説の要素を含んでおり、自身の思想「客観主義」について、ランドのフィクション作品の中では最も詳しく述べている。 この小説では、成功した産業家を攻撃する様々な規制の制定を受け、多くの傑出した産業家たちが財産や国を捨てた結果、社会に不可欠な諸産業が崩壊していくディストピア的なアメリカ合衆国が描かれている。タイトルの「アトラス」とは、ギリシア神話に登場する天空を肩に乗せて支える巨人アトラースであり、傑出した能力で世界を支える諸個人を含意している。このタイトルの意味は、登場人物フランシスコ・ダンコニアとハンク・リアーデンの会話で明らかになる。ダンコニアはリアーデンに、「もし努力すればするほど世界が肩に重くのしかかってくるアトラスに出会ったら、どうしろと言うか?」と尋ねる。リアーデンが答えれずにいると、ダンコニアは「自分なら肩をすくめろと言う」と伝える〔アイン・ランド 『肩をすくめるアトラス』 脇坂あゆみ訳、文庫版第二部、アトランティス、2014年、202頁〕。 『肩をすくめるアトラス』のテーマは、ランドによれば、「人間の存在に果たす頭脳の役割」である。本作品では、ランドが「客観主義」を確立する元になった多くの思想的テーマが考究されている。こうした考究の中で、理性、個人主義、および資本主義が擁護され、政府による強制の問題点が浮き彫りにされる。 1957年の出版当時、本作品には多くの否定的なレビューが書かれたが、本作品の人気と売れ行きはその後何十年にもわたり衰えていない。 ==歴史== ===執筆の背景と経過=== ランドがこの小説を執筆した目的は、彼女によれば、「この世界が主導者たち(prime movers)をどれほど必要としており、かつこの世界が彼らをどれほど酷く扱っているかを示す」ことであり、「もし彼らがいなくなったら世界はどうなってしまうのか」を描くことであった〔。作品の核になるアイデアは、ランドが1943年に友人と電話で交わした、ある会話の後に着想された。この友人が、ランドは自分の哲学に関するフィクションを書く義務を読者に負っている、と主張した時、ランドは「私がストライキをしたらどうなる?世界中の創造的な人々がストライキをしたらどうなる?」と答えた〔。ここからランドは、もし知識層の人々が発明、技芸、ビジネス上のリーダーシップ、科学的研究、新しいアイデアなどを提供することを拒否するストライキを起こしたら、どのような結果になるかを掘り下げることにより、合理的利己の道徳性(morality of rational self-interest)を描く本作品の執筆に着手した。執筆中は『ストライキ(''The Strike'')』という仮タイトルが付けられていた。しかしランドは、このタイトルは、本作品に組み込まれた謎解きの答えをあらかじめ明かしてしまうと考えていた。このため、それまである章のタイトルだった「Atlas Shrugged」を作品全体のタイトルにすることを夫から提案された時、喜んでこの提案を受け入れた。 ランドは『肩をすくめるアトラス』執筆のため、アメリカの鉄道業界を取材した。また、以前依頼された(ただし実現しなかった)原子爆弾の開発を題材にした映画脚本の執筆のために行った、ロバート・オッペンハイマーへのインタビューなども、本作品の登場人物ロバート・スタッドラー博士や秘密兵器「プロジェクトX」開発の描写に活かされている。ランドは本作品の舞台をより深く調査するため、カイザー・スチールの製鉄所など、多くの産業施設を訪問し見学した。ニューヨーク・セントラル鉄道の機関車にも乗り、「20世紀特急」号の機関車の運転まで体験した(機関車を運転した際に「私以外の誰もレバーに触れていなかった」と誇らしく報告している)〔〔; 〕。 ランド自身が文学的に影響を受けたと認める作家には、ヴィクトル・ユーゴー、フョードル・ドストエフスキー、エドモン・ロスタン、オー・ヘンリーなどがいる〔Rand, Ayn, "Favorite Writers", reprinted in Schwartz, Peter, edit., ''The Ayn Rand Column'', Second Renaissance Books, 1991, pp. 113-115.〕。また本作品は、ガレット・ギャレットの小説『ドライバー』(''The Driver''、1922年)の類似性がジャスティン・レイモンドによって指摘されている。『ドライバー』にはヘンリー・ゴールトという名前の理想化された産業家が登場する。ヘンリー・ゴールトは大陸横断鉄道のオーナーで、政府や社会主義と戦い、世界を向上させようとしている。この指摘に対し、クリス・マシュー・シャバラは「ランドが『ドライバー』を剽窃したというレイモンドの主張は成立しない」と述べている。ステファン・キンセラは、ランドがギャレットの影響を受けたという推測に疑問を表明している。作家のブルース・ラムジーは、「『ドライバー』と『肩をすくめるアトラス』は、共に不況期における鉄道経営を扱っており、アメリカが不況から抜け出す方法として資本主義的な方法を提示しているが、両作品のプロット、登場人物、トーン、テーマは非常に異なっている」と指摘している。 『肩をすくめるアトラス』は、ランドが最後に完成させたフィクション作品である。この作品は、ランドが小説家としてのキャリアを終え、大衆思想家として歩み始める転換点になった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「肩をすくめるアトラス」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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